『未来少年コナン』に寄せて
2.『未来少年コナン』とは?
 
LAST UPDATE 2001.5.5
アニメーション『未来少年コナン』の当時の様子をまとめてみました。
 
◆NHKの本格的アニメーション第1弾◆
『未来少年コナン』は、今から約20年前に、NHKのテレビ開局25周年を記念して制作され、NHK総合で放映された、アニメーションです。
(ちなみに、初回放映日は奇しくもあの”キャンディーズ”のサヨナラ公演の日でした。詳しい放映日などは
こちらを参照してみて下さい。)

NHKが本格的なアニメーションを製作・放映するのはこの『未来少年コナン』が初めてで、その後、『ニルスの不思議な旅』『太陽の子エステバン』などの魅力あふれるファンタジーアニメーションが放映されて行きます。もともとNHKは公共放送としてスタートした(社団法人だった)と言う沿革もあって、それまでは、本格的な娯楽指向の子供向けアニメーションを企画制作するということがありませんでしたし、一般の視聴者も、NHKがそういったものを放映することはないと思っていました。といっても、全くアニメーションを制作・放映したことがなかったわけではありません。1960年には『みんなのうた』の原形となる影絵アニメが放映されてはいました(1960年1月15日に放映された30分番組で、これがNHK初のアニメーションだそうです)。しかし、それは長いストーリーに沿って、連続して放映されるような本格的なものではありませんでしたから、やはり、アニメ『未来少年コナン』がNHK総合で放映されることは当時の人々にとっては大変珍しいことであったことは確かです。それを証拠に、当時の雑誌などでのコナンの紹介には、”あのNHKが”という接頭語が必ずと言っていいほど付いていました。
(と言っても、当時まだ幼かったSouthernにとって、NHKがアニメーションを放映するということが珍しいことだなんてわかりませんでしたし、NHKという放送局のこともよくわかりませんでしたが(^^;;)
 
◆目立たなかった『未来少年コナン』◆
この当時、TVで放映されていたアニメと言えば『ドカベン』『はいからさんが通る』こども名作劇場『ペリーヌ物語』『銀河鉄道999』『ヤッターマン』などの名作が目白押しでした。また、アニメではありませんが、子供から大人まで楽しめるドラマとして『西遊記』『コメットさん』が放映されていたことを記憶されている方も多いのではないでしょうか?
このように、数々の大作に囲まれた中で放映された『未来少年コナン』は、今ひとつ目立たない存在でした。前述のように、このアニメーションの放映局がNHKというのも原因だったのかも知れませんが、放映当初は視聴率もそれほど伸びず1桁台、後半になってようやく伸びたようでしたがそれでも10%〜13%前後だったようです。ただ、アニメーションは視聴者層が限られますし、一般の番組と比較して多少視聴率が落ちることは当然とも思えます。逆に20%以上もの視聴率を誇った『アルプスの少女ハイジ』などは例外的な存在と言えるのではないでしょうか。
 
◆NHK唯一の再放送アニメーション◆
本放送時はそれほど目立たなかった『未来少年コナン』でしたが、放送終了が近付くにつれ、視聴者の間から再放送を求める声が高まって行きました。当時のアニメ関連雑誌などの読者の『コナン』に対する反響は大きく、一様に再放送を求める投稿が相次いで掲載されていましたし、放送局であるNHKにも再放送を求める声が殺到したそうです。
しかし、NHKでは既に番組枠が埋まっていたため、すぐには再放送できませんでした。そこで視聴者の声に応えるために、まずは映画化を決定しTVのダイジェスト版的なものを急遽制作(1979年9月公開)、そしてその年の暮れからついに再放送を実現したのです。といっても、まとまった番組枠を用意することができず、冬と春の2回に分けて放映していました(詳しい日程はこちらの再放送日をご参照下さい)。NHKが自主制作アニメーションを再放送したのはこれが唯一のようです。
『未来少年コナン』がそれだけ視聴者の心を捉える魅力あるものであったことを裏付けているエピソードと言えますね。ただ、視聴率の方は、再放送時も相変わらず低かったようですが・・・。
 
◆宮崎駿演出作品◆
さて、本作のスタッフをご覧頂ければ分かりますように、『未来少年コナン』の演出は全話を通して宮崎駿氏が手掛けられています。宮崎氏と言えば、今更説明の必要もないと思いますが、『風の谷のナウシカ』『天空の城ラピュタ』『もののけ姫』などのアニメーション映画で監督・脚本・演出をこなされた方で、それらがことごとくヒット作となりましたのでご存知の方も多いことでしょう。
宮崎氏の作品を通して感じるものはいろいろあります。飛翔感、躍動感、爽快感・・・もちろんこの『未来少年コナン』にもそれらはふんだんに込められています。それらが素直に、絶妙に、ファンタジックに、そして自然に描かれているのです。そう、『未来少年コナン』はこの後に続く宮崎氏の作品群の原点と位置付けることができる作品でもあるのです。
 
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