最強婿養子伝説 第参話

──byニシオギ──


「大嫌いって………」

「あーぁ、全くもう……っと、譲くんっ?!」
いつから居たのか、物陰から聞こえた声に景時は驚く。
これでは自分達の事を言えないだろうと思ったが、先程朔を怒らせた教訓を踏まえ黙っている事にした。

「どうして俺まで大嫌い何ですか……」
「いや、それは嫌い嫌いも好きのうちって言うか」
「じゃあ景時さんと同列って事ですか」
その口調に、景時は僅かに笑みを浮かべる。
「………同列じゃ嫌って事かい?」
「あ、いえ、すみません。別に景時さんがどうって訳じゃ……」
「俺とか……皆と同じじゃ嫌なんだろ?」
「…………」
「ま、それはともかく、派手に飛び出してったのを館の皆が見てたからね〜
 君の奥方を連れ戻してきてくれないと、統制がとれないよ」

結局の所、似た者夫婦という事か。
景時はむしろ微笑ましい気分で譲を促す。

しかし、一方の譲は”君の奥方”という言葉に何故か酷く動揺していた。

「さ、皆、後を付けたりしちゃ駄目だよ〜。すーぐ分かるからね。これでも陰陽師なんだからね」

改めて気配を探ると、柱の影に襖の影に。
どうしてこうもこの邸の人々は野次馬根性が激しいのか。
まぁ皆にしてみれば、暖かく、それはもう暖かく見守っている訳だが、
当の本人達は其れ処では無い。

「じゃ、婿殿、よろしく」

朔ならこんな時何処に行くだろう。少し考えた譲は神泉苑へ向かった。
出来る事なら其処にだけは居ないで欲しい。しかしきっと居るだろうと思いながら。


第弐話 第四話
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