七夜目の真実―Side of others 1st―
任務を終えた翌日だけは、ワイルド7のメンバー全員が疲れを癒すための惰眠を貪るため、顔を合わせないことが少なくない。けれど特に仕事のない日が続くと誰もが暇を持て余し、彼らが入り浸っているスナック・ボンや、彼らが共同で借りているガレージに三々五々といった具合に集まるのが常となっている。
この日、ボンを訪れたヘボピーとオヤブンが昼食後のコーヒーを飲んでいると、世界と八百がやってきた。
「なんだ、今日はお前ら二人だけか」
世界の言葉にオヤブンが競馬新聞に赤鉛筆で何かを書き込みながら
「両国は会社じゃねーの。いくら形だけの偉いさんつっても、たまにゃ顔くらい出さねぇとな」
と答える。
「チャーシューも店に出てんだろ」
「飛葉はどうした?」
「そういや、見てねぇな。今頃ガレージでバイクでも磨いてんだろうよ」
「いいや。俺と世界はガレージからこっちに来たんだが、飛葉のバイクは泥を被ったままだったぜ。昨日、今日はバイクを磨くとか何とか言ってたんだが……」
「そりゃ、珍しいな」
ヘボピーが言った。
「パーツがすり減るくらいバイクを磨く野郎がねぇ……」
「どこかに遊びに出てんだろ。ヤツのバイクはあれっきりってワケじゃないしな」
「ああ。明日あたり、どっちかに顔出すだろ」
ひとしきり不在者を噂した後、彼らはいつものようにコーヒーを飲み、女店主のイコの妹である志乃ベエをからかったりしながら、穏やかな午後を楽しんでいた。