月 夜 の デ ー ト 1
新宇宙の女王工として聖地に招かれたのは、栗色の髪のアンジェリーク。そしてもう一人は天才少女と名高い金色の髪のレイチェルでした。ある土の曜日、新宇宙の様子を見に行った帰り、アンジェリークは森の湖まで散歩することにしました。すると、そこにはレイチェルがおりました。
◇◇◇ 「あら、レイチェルも湖に来ていたの……て、あなた煙草なんて吸ってるの?」
「ああ、アンジェ。聖地に来てから禁煙してたんだけどさ、ストレスたまっちゃって、こっそり吸ってるんだ。あ、他の方々には内緒にしてよね。さすがに女王候補がヘビースモーカーじゃ、いろいろマズイじゃない?」
「うん、それはいいけど……。ねえ、私にも1本くれない?」
「アナタ、温和そうな顔して煙草なんて吸うの?」
「私がいくら温和で元気でも、あの方々と四六時中一緒にいたら、ストレスがたまっちゃうもの」
「確かにネ。特にジュリアス様なんてさ、存在だけで他人にストレス与えるんじゃないかって思うわ。一応守護聖のトップなんだから、もうちょっと周囲に気配りをしたってもいいと思うんだけどな」
「思う、思う。ロザリア様に聞いたんだけどね、ロザリア様たちの女王試験の時にジュリアス様が『人間は謙虚であっても卑屈であってはならない。誇りを持ち続けていても高慢であってはならない』って、言ってたんですって」
「なーんか、そのセリフをそのまま突き返したくなるわよね。それはアナタだって」
「あははは、言えてる言えてる。そうだ、先週の土の曜日の夜に、ジュリアス様と庭園に出かけたんだけどね、その時にジュリアス様がクラヴィスさまを嫌ってる理由を聞いたんだ。あのね、ジュリアス様は5歳の時に聖地に来たんだって。その時、先代の闇の守護聖に世話になったんだけど、とっても優しくて、家族みたいに可愛がってくれたって。1年経って闇の守護聖がクラヴィス様と交替したんだけど、それを知らないジュリアス様が普段と同じように執務室に行ったら、クラヴィス様がいたんだって」
「それから?」
「それだけ」
「えーっ、それって単なる逆恨みじゃない。うっえー、大人げないなー。それにしても20年も前のことを未だに根に持ってるなんて、執念深いねー。あ、守護聖って普通の人より寿命が長いから、何百年も逆恨みしてるんだ。バッカみたい。クラヴィス様はどうなのかな」
「あ、クラヴィス様と夜に出かけた時は、お母さんの話してもっらたよ。執務室に置いてある水晶球はお別れの時に、お母さんにもらったとか言ってた」
「クラヴィス様はジュリアス様を相手にしてないんだ。なるほどね。だから余計にジュリアス様はクラヴィス様につっかかるんだね。それでクラヴィス様はバカは相手にしてらんないって感じか、いい年になっても大人げないジュリアス様を反面教師にして、正反対の性格になっちゃたんだ。ナルホドね」
「じゃ、ジュリアス様の精神年齢は5歳の時から成長してないの?」
「あったりまえでしょ? 子どもの時からこんな特殊な環境にいたら性格がゆがむに決まってるじゃない。ワタシもオスカー様と夜の庭園に行ったことあるんだけどさ、『この俺が一緒なんだから、お嬢ちゃんは世界で一番安全なんだぜ』とか言ってたのー」
「アンタが一番危ないって、マジで」
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