土の曜日は、ダ・メ・よ……


 新宇宙の女王候補として聖地に招かれたのは、栗色の髪のアンジェリーク。そしてもう一人は天才少女の名をほしいままにしている金色の髪のレイチェルでした。ある土の曜日、新宇宙の様子を見に行った帰り、アンジェリークとレイチェルは湖の畔で、女の子同士の秘密のおしゃべりを楽しんでおりました。

「守護聖様や教官の方々って、どういうワケか土の曜日に誘いに来るのよね。王立研究員に行かなくちゃならないのを知ってるクセにさ。あれは絶対、嫌がらせだと思うよ、ワタシは」

「私もそう思うわ。だってお誘いがあっても平気な、安定度が目一杯上がってる時には、まず来ないんだもの。どういうつもりなのかしら」

「そうねー。ワタシたちを試してるんじゃない? 『育成と色恋沙汰のどっちが大事なんだ』って、感じィ? 頼みもしないのにバッカみたいに育成して、惑星を増やしておいてサー。先週なんて予定外に惑星が増えたお陰で安定度が足りなくなってサ、惑星が崩壊したら一人で怒ってるんだよ〜。ホント、いい加減にしてもらいたいわよ。ワタシたちは女王試験に来たんであって、アンタたちの相手をしに来てるんじゃないんだって、言いたくなっちゃう」

「本当に私たちのことを考えくれてるんだったら、もう少し心配りってものがほしいわよね。特にランディ様とゼフェル様とマルセル様。下手すると一晩で2個も3個も星作っちゃうから、あの方々と同時に他の人の親密度が上がっちゃうと、とんでもないことになっちゃうの」

「リュミエール様とクラヴィス様もエグイよー。だからワタシ、デートの約束をワザと何度かすっぽかして親密度を急いで下げたことあるもの」

「今朝はオスカー様が来たんだけど、知らんぷりしちゃったから明日はナイフでも貢いで、ご機嫌をとっとなくちゃ」

「オスカー様って、家宝だとかいう大きな剣をぶら下げてるけど、やっぱり夜のほうは自信がないと思うんだ。心理学ではナイフとか拳銃は男根の象徴だから、そういうアイテムを見せびらかす人は、自分の男性的な面を周囲にアピールしたくてたまんないのよね。でも自分に自信があればその必要はないでしょ? だから男性的な部分に自信のない人ほど、大きな剣や拳銃を持つんだって」

「それって、本当?」

「少なくとも、学説の上ではね。だから男性的な面を誇示しないリュミエール様やルヴァ様たちのほうが、実は精力絶倫なんじゃないかと、ワタシは思うんだ」

「う〜ん。ルヴァ様って男性的な部分を誇示しないんじゃなくて、単にボケてるだけじゃないの? でもね、オスカー様が夜に弱いっていうのは賛成。重い剣を四六時中ぶら下げてると体のバランスが悪くなって、腰痛持ちになっちゃうじゃない。そうなると瞬発力とか持久力とかに影響が出そうよね。なんたって腰は男の命だモン。カイロプラティックにも通ってるのは間違いないよね。そっか……。そっち方面がダメだって自覚があるから、あのスゴイセリフを使ってごまかすんだよ、きっと」

「セイラン様はフェチだよ、絶対。行為そのものよりシチュエーションを大切にするタイプ。ベッドに入る前にまずコスプレを楽しむの。レザーの衣装や花魁装束、ゴージャスな下着、時には真っ赤なハイヒールを履かせて『僕を踏んでくれないかい』って。あ、ロリータ系とかメイド系のワンピとかエプロンも好きそうだなぁ……」

「うっわ〜、それはカンベンしてほしい。セイラン様がそんなことしたら、マニアっていうより変質者っぽいじゃない」

「でも芸術家っていうのは、だいたい変質者っていうか、変態が多いっていうから、案外当たってるかもしれないヨ」

「私的にはハイヒールで踏んであげたっていいけど、ロリータファッションはいやだな。あ、レイチェルは知ってる? オスカー様はロリコンだっていうウワサ。何でも前にどこかの星に調査に行った時にね、現地の女の子に例のセリフをささやきまくったんだって」

「オスカー様の場合はロリコンじゃなくて、見境がないっていうのよ。許容範囲が無限大だから、性別が女だったらなんでもOKって感じ?」

「性別もあんまり気にしてないんじゃない? 前にリュミエール様のお話を聞いた時、絶対リュミエール様に迫ったことがあるって確信したもの。でね、お二人をよく見てみるとね、オスカー様はリュミエール様にラブラブっぽいんだけど、リュミエール様はすんごい冷淡だったの。だから、絶対に何かあったのよ。そう言えばセイラン様と初めて会った時に口説かれたって言ってたもの。なんだかんだ言って、見た目が綺麗だったらなんでもいいんじゃないの?」

「そこまで見境がないのはチョット問題ありよね。オスカー様って、金髪碧眼で美形の王道をいくジュリアス様が大好きって感じだけど、それって見た目重視の性格からくるのかしらね」

「オリヴィエ様だって金髪碧眼なんだけど、別にオスカー様とはアヤシクはないよね。メッシュ入れるといやなのかなぁ。あとお化粧なんかも嫌いかも。あくまで素材重視で、少しずつ自分の色に染めていくのを密かな楽しみにしてたりしてね」

「どっちかというと、それはリュミエール様じゃない? どこかからきれいな子どもをさらってきて、自分好みのお小姓に育てるの。どこかの惑星の古典文学にあるんだよ、そういうお話。あとは誰も入れない塔の中で子どもを閉じこめて育てるの。髪を長く伸ばさせて、『私ですよ。さあ、アナタの髪を下ろしてください』とか言って、髪の毛を綱代わりにして出入りするのよ」

「あはは、似合ーう。レイチェルってば、やっぱり天才よね。ルヴァ様だったらどこかの遺跡からちょろまかしてきたミイラなんかを話し相手にしてたりしてね。『今日は雨が降っていますから、少し気分が優れないかもしれませんねー』とか言うの」

「ヴィクトール様は戦車を愛でてたりして。毎日ピカピカに磨いてて、話しかけたりするのー」

「やめてー、似合い過ぎー。教官の方々はともかく、守護聖様ってスンゴイ衣装を着てるけど、普段着はどんなのかしら。まさか、いつも正装ってワケじゃないわよね」


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