電波系なマルセル様 1


 新宇宙の女王工として聖地に招かれたのは、栗色の髪のアンジェリーク。そしてもおう一人は天才少女と名高い金色の髪のレイチェルでした。ある土の曜日、新宇宙の様子を見に行った帰り、アンジェリークとレイチェルは女の子同士の秘密のおしゃべりを楽しんでおりました。

「あ、レイチェル。今日は私が煙草を買ってきたの。どうぞ」

「サンキュ。ねぇ、先週言ってたマルセル様が電波系だっていう話の続きを聞かせてよ」

「うん。あのね、いつだったか、森の湖でのデートの時にね、『僕、植物や動物さんとお話ができるんだ。みんなおかしいって言うけど、信じてくれるよね?』って言うの。私、マジでヤッバーって思ったんだけど、『変だ』なんて言ったら、キレて何されるかわからないじゃない。だから、『そんなことありません』とは答えたんだけどね。それからマルセル様が恐くって仕方ないの。無邪気でカワイイという気はするけど、無邪気なだけにヤバイと思うのよ」

「それはマズイわね。そのうち、そこいらの石なんかとおしゃべりしだすかもしれないよー。恐いって言えば、ワタシはリュミエール様が恐いんだ」

「あ、わかるわかる。いっつも優しいだけに、本心が見えないのよね。それにさ、優しさを表看板にしてるだけに、胡散臭いってゆーか」

「アナタもなの? よかったー。なんかさ、表向きは親切で丁寧で優しいんだけど、家に帰ったらわら人形に五寸釘打ち込んでるような気がする。『ふふ、これで10本目の釘ですね』とか言って」

「いやあーっ。ルヴァ様も時々恐いよね、なまじ博識なだけに。親切そうな感じで、いろいろと教えてくれるんだけど、『こんなことも知らないのか、このバカ』とか本心では思ってそうでしょ。オリヴィエ様は女王陛下やロザリア様にライバル意識もってて、『ワタシが一番キレイ』とか言って、鏡をうっとり眺めてたりするかもー」

「オスカー様ってプレイボーイっていう評判だけど、ワタシは違うと思うな。女好きで誰彼かまわず声をかけるけど、全打席空振り三振っていうの? それをカモフラージュするために、あんなセリフを吐くわけだ。オスカー様だけが男ってワケじゃないのにねー」

「ランディ様に聞いたんだけどね、ランディ様、前は赤いマントの正装だったんだって。でね、正義の味方みたいでカッコイイと思ってたらしいんだけど、子どもっぽいから白いマフラーにしたって言うの。ヒーローみたいでカッコイイだろって」

「やっぱりランディ様ってバカだったんだ。守護聖の任を降りたらぜひ、遊園地の特撮ヒーローぬいぐるみショーのスタッフになるべきね。中国雑技団なみの運動神経を持ってるんだから、定年退職するまで現役で主役を張れるよ、きっと」


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