anata.gifanata1.GIF

その22

 私の勤める大学では、学部長の言葉によれば「空前の研究費バブルの時代」にあるようです。科学研究費が過去最高の額に達しているとか。少ない研究費の中でやりくりしている大学がある一方で、こんなに集まってくるのを見ると、おそろしくなりますが、研究費バブルだって、そのうち世のバブルと同じくはじけるに決まっています。
 ある大学の学生が遊びに来たときのこと、のどから手が出るほど欲しい器械が梱包されたままで放ってあるのを見て、とっても驚き、帰って教授に報告したとか。彼にとっては、信じられない光景だったことでしょう。
 これから年度末に向け、予算消化のために、無駄な買い物が増え、私にとってゆううつな季節となります。


「ナヌムの家のハルモニたち ――元日本軍慰安婦の日々の生活――」
慧 眞・著   徐 勝/金 京子・訳
人文書院(1998) 191P(2000円+税)
 この本のジャケットの絵の一枚には、こんな解説が付けられています。

まだ幼い朝鮮の生娘がこんなふうに立っているんだ。
花がつぼみも開かないうちに摘んでしまったから、
(手折られた花)と名付けたんだよ。
だって、この生娘がこんなに幼いころに捕まって・・・
こんな風に花も咲かせずに
一生恨みを抱いて生きてきたろう・・・
だから(手折られた花)と名付けたんだよ。
 「ナヌムの家」という記録映画が各地で上映されたのは、2年ほど前でしょうか。 「ナヌムの家」は、かつて慰安婦とされ、そして戦後も屈辱と貧困の中で生きてきた女性たちの安心して暮らせる場として、韓国仏教人権委員会によって設立されたものです。
 「ナヌム」とは韓国語で「分かち合い」という意味で、元日本軍従軍慰安婦のハルモニ(おばあさん)たちと、院長の青年僧ヘジンが共同生活しています。
ヘジンは、反体制運動を行なっていた大学3年のとき、軍隊に入隊するや否や学生運動・労働運動弾圧の最前線に立たされます。そして、その苦悩の中で、除隊後の仏教への帰依を決意します。
 この本に出てくる話は、ナヌムの家の担当となったヘジンが11名のハルモニたちとの日常を「飾ることなく、加減することなく、ありのままメモしておいた」ものなのです。
 共同生活の中でのもめごといっぱい、でも、それを見つめるヘジンの澄んだ目と優しさが心に残りました。


「ピカソとあそぼう!」文 シルヴィ・シラルデ & クレール・メロル=ポンティ
挿し絵 ネストール・サラ 訳 貴田 奈津子
ブロンズ新社(1998)1600円+税
 何とも楽しいこの本は、フランスにあるチルドレンズ・ミュージアム「エルブ・ミュージアム」で開催されたピカソ展を絵本にしたものです。このミュージアムは、展示された絵を鑑賞するだけでなく、触ったり、描いたり、ゲームをしたり、そして描いた作家の気持ちを想像することもできる場所なのです。
 ピカソの名前がとても長いことにまずびっくりし、彼の生きた時代がすごろくになっていて興味を引きます。
 また、まちがいさがしや取り出した絵の一部を見てどの部分なのかを考えたりと、私は学生と共にピカソの絵で楽しく遊びました。子供と一緒だったらもっと楽しいだろうな、と思いつつ。

anata2.GIF「ヒヨドリジョウゴ」
 赤い実を付けるナス科の有毒植物です。白い紙の上に置いたら、とてもステキでした。

それでは、また

高木 俊江

back to TOP
Back