就職活動を通じて考えたこと

吉野郁子 (社会学類4年)

 3年生のおわるころになると、そろそろ「就職活動」というやつで、周りが騒がしくなってきた。私は学生生活を続けるより社会を見たかったので、就職したいと考えた。周囲を見てみると、何も考えずに「大学卒業したら、会社員。それも大手が好ましい」という風潮があるように恩う。周囲の学生に特に人気なのはマスコミ関係だ。私ばそんな人達それぞれに「どうしてそう思ったの?」と聞いて回りたい。きっとそれぞれに主張があるのだろうし、私の考え付かなかった視点があるはずだ。

 でも、私が大手企業社員になるなんて到底想像できなかった。今まで精一杯培ってきたポリシーに反しない仕事をしたいと思った。ポリシーとは何なのか。考え出すと暖昧だが、自然や貧しい人を搾取しないことや、その仕事を通じて杜会を良くしていきたい、といったことだと思う。当初私ほNGOなどの非営利囲体で働きたいと思っていた。しがしそういう即戦力を要求される場では、新卒など役に立たない。どの団体でも「社会経験のある方」を求めている。社会経験って大切なんだということに気付き、ならばまずは社会経験を積もうではないがと考えた。

 一般的な新卒求人情報誌を見るとたくさんの会社が載っている。でもどれもピンとこない。
 たくさん求人情報を見ていくうちに、「生活協同組合」の求人が幾つがあった。(生協というのは各単構ごとで経営をしているので、求人もそれぞれの生協で行っている)生協といえば安心・安全な食品を供給し、環墳を重視しているというイメージがあり、実直に人の役に立ちそうだ。「これならいいかも」と思った。いくつかの生協にアタックした緒果、ある生協に侯補をしぼった。その生協は日本で一番大きく、一呑「儲かっている」生協である。しかしその分、ポリシーが一番薄れていると感じた。店頭では合成洗剤やコーラなども売っていて、店舗のテナントにはマクドナルドも入っている。組織を運営していくには利益をあげなくてはならない。そのための妥協が合成洗剤や添加物入りの食品の販売である。「こんなところに入っていいのか?」という疑問がふつふつと沸いてきた。会社に理想を求めるのではなく、もっと自分でなんとかしようと行動を始めることが大事なんではないかと考え始めた。

 生協のほかに、書店を受けた。私ば子どもの頃から本好きで、本が人に与える効能を信じているところがある。もし自分で何かを始めていこうとするなら、自分の一番好きな、本に関わる仕事がいい。そんな中でとんとん拍子に活動が進んだのが、ある古本屋のベンチャー企業である。「独立できる人材を育てるのが目的」という会社の方針が気に入った。社員も生き生きしていて、いい感じだった。「ここに入って修業を積み、脱サラして自分の本屋を持とう。この会社に決めた。」と思った。その意気込みが通じたのか、無事内定をもらった。がくして私は、春から憧れの「本屋さん」になる。けれども、「本屋さん」が自分の最終的な目標かどうかはわからない。面接で「仕事を決めるとき、何を一番重視しますか?」と訊かれると、いつも「その仕事を運じて、どれだけ杜会を良くしていけれるかです」と答えた。本屋さんに果たしてどれほどのことができるかわからない。ともかくも、この道から始めてみようと思っている。

 こうして私の「就職活動」は終了したわけであるが、ずいぶんマイペースでやってきたと思う。大手・有名企業に興味なし。やたらに数多くの会社を回らない。ポリシーに反する仕事はしたくない。管理職よりとにかく現場で働きたい。都心でお勤めはいや。スーツを着たりヒール靴を麗いたりするのは嫌い。これらはおおよそ「就織活動の主流」から離れているように思う。でも他の誰が働くわけでもないんだし、自分がやりたいことをやらなくてどうする、と思ってやってきた。


 就職活動を道じて一番痛感したことは、「まだまだ私ほ世の中のことを知らない」ということだ。いまは仕事をすることに大いなる希望を抱いているが、そんなのは絵空事かもしれないし、「社会はそんなに甘くない」のかもしれない。しかし「世の中とはいかなるものかが勉強できる」というのが、就織するにあたっての楽しみである。
 実際就織すれぱ、嫌でも悩んだりするのだから、いまは大いに楽しみにしていようと恩っている。



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