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 ツバメやスズメ、そしてカラスなど都市で見かける鳥も、子育て真っ最中。

 そんなある日、屋上に出た私は、いつになく激しく鳴くカラスのつがいを目にしました。でもまさか襲われるとば思わず、歩き出したその時、音もなく後ろから頭に体当たりしてきました。びっくりすると固時に、あのクチパシでつつかれなくて良かった、と思ったものです。

 そして数日後、違う場所でのこと。木を見上げていると、近くにいたカラスがイライラして木の葉を食いちぎり始めました。あんな姿を見たのば初めてで、一体何が起こったんだろうと思いました。巣があるのかどうかは、碓かめられませんでしたが、見上げて欲しくないようなので、静かにその場を離れました。


『北の森の十二カ月――ストラコフの自然誌――』上・下
ニコライ・ストラコフ作 ニキータ・チャルーシン絵
福井研介・松谷さやか訳
福音館書店(1997) 各309P(1900円十税)

 自然が発する声に耳を傾け、一年のほとんどを森の中で過ごしてきた、ロシアの作家ストラコフの、ふしぎでおもしろい森の生き物たちの物語です。ストラコフは、7月を「やけつくようなあつさと、どうしようもないけだるさ、そして、しいんとしたしずけさ。夏のまっさかり」と表現していますが、そんな中でひなを守るゴイサギの話があります。

 夜行性のゴイサギが、巣のはしっこで暑さにあえいでいるのを見た時、なんてまがぬけているんだろうと思います。自陰に入るという知恵もないのかと。

 しかし、太陽の動きに合わせてゆっくり移動しながらひなたちを守っている姿を見て、はずかしさで顔が赤くなったと書いています。

 また、「雪雲はまえにすすんだり、あともどりしたり。雪をふらせたり、やめたりした。というわけで、十一月はまだらなのだ。」というある寒い日、畑でおどっているキツネを見かけます。こんな日ば、巣穴にいれぱよさそうなものなのに、なんでまた?ストラコフは、キツネの目の高さで畑を見てみます。

 そこにはたくさんのノネズミの巣穴が。そこで、キツネと同じように足をぶみならしグンスをしてみました。すると、地面から、ぴっくりしたノネズミたちがとぴだしてきたのです。キツネの狩をだいなしにしてしまった、と気づくストラコフです。

 この本の原題は、「しあわせな狩りの森で」といい、「この狩りほ、銃で命をねらうものではない。自然のいとなみを発見し、ときあかそうという狩りなのだ。みどりの森の国での幸せな狩りである」と。

 そして、この狩りは護にでもできるといいます。

 なぜなら、「きみたちには、森の国を旅するためにひつようなものが、なんでもそなわっている」から。 「足であるき、耳できき、目でみる。そして頭ですぺてを理解する」。

 そして、フィールドノートがなくてもよい。あるきまわって、からだのすみずみまで、見たり聞いたりしたことでいっぱいにしようと呼びかけているのです。すぱらしいさし絵と、詩的な文ほ、私たちに自然とのつきあい方を、やさしく教えてくれています。


anata1.GIF  今回の花は「ネジバナ」です。

 最も身近にあるランで、別名「モジズリ」ともいいます。

 この花は芝生によく咲いていますが、美しさとかわいさを最も表せる場所であることをよく知っているように思えます。


 それでは、また。

 高木 俊江





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