農業高校と進学高校から見た筑波大


1;水戸農業高校出身  池田理恵

 入学式を終え少しずつではあるが高校生から大学生へと変わりつつある今、大学生活を外からの視点で見てみようと思う。
 私は茨城県立水戸農業高校(水農)出身である。一般に農業高校というのはイメージが悪いらしく、学校名を言うだけで驚く人も少なくない。しかし私も農業高校に入学するまでは、農業のイメージを『きつい、きたない』など悲観的に見ていたし、農業高校生に対しても偏見の目で見ていた。そんな考えも今となっては笑い話しの様に思える。まず初めに農業に対しての考えがどのように変わったのか触れてみようと思う。
 高校時代私は多くの実習をすることができた。初めての実習はスイカの栽培であった。スイカはスーパーやデパートなどで買ってくるものだと思っていたので、自分で作ることができるのか戸惑っていた。土を耕すのもマルチを作るのも何もかも初めてのことで、不安で一杯であったが、先生の丁寧な指導のもとで楽しく栽培することができた。朝早くに畑にいき受粉作業をし、少しずつ大きくなるスイカの苗を眺めていた。収穫の時期を迎え、スイカに包丁を入れ赤い実が見えたときの喜びの歓声は今まで味わったことの無いものがあった。みんなの顔は充実感や満足感に満ちていたことを昨日のことのように思い出される。これはほんの一部のことであるが、3年間農業実習を通して『なんて農業高校は面白い所なんだろう』と体全体で感じることができたのだ。
 では次に農業高校生から見た筑波大について述べたいと思う。大学での生活は毎日が新しいものとの出会いのチャンスで一杯である。施設の充実性や教授の多さ、選択授業の幅広さなどたくさんの良い点 が見られる。しかし、これらをどう活用するかが私達がどれだけ大学生活にやりがいを感じられるかの決め手になってくる。どんな良い施設があっても自分が積極的に行動しなければ、何もすることの無い学校へと変わってしまうのだ。
 農業高校との違いとしては先生と生徒の距離があまりにも離れていることである。農業高校の先生は、何か分からないことがあれば些細なことでも分かるまで何度も教えてくれる。だが、大学ともなるとすべてにおいて分かっているのもとして授業がすすめられ、分からないことがあるとすべて『図書館で調べて』の一言で終らしてしまう。普通高校の人達からして見れば当り前のことかもしれないが私には、それによって先生に気軽に声をかけれないという雰囲気ができつつある。もう一つあげるとすれば机の上で学ぶことがほとんどで、実際に農業をしないので農業に対してのイメージをあげることにはつながらないように思い、農学部系を出ても農業をしたいという人が増えないのではないかと感じている。私は農業を嫌いにならないように畑を作るサークルに入り畑を耕そうと考えている。
 大学生活にも慣れてきて、『もうつまらない、おもしろくない』という声も少なからず耳にするがその原因に喜びや満足度の違いがあげられると思う。私は農業高校の実習を通して、些細なことでも満足できる心を身につけることができた。スイカの栽培で得た作物が成長することへの喜び、スイカを切ったときの感動、これらの一つ一つは普段の生活では味わえないことばかりで私の生活の基盤になっている。まだ大学生活は始まったばかりでこれからどんなことが起こるか分からないが、農業高校での生活を忘れずに頑張っていこうと思う。



2;東京都立富士高校出身 栗田暁子

 筑波大学での新しい生活が始まって、2週間になる。毎日、見るもの、接するもの全てが私にとって新鮮であり、生活を充実させている。その中でも特に、様々な人と出会い、話しをすることが、日々私の視野を広げるのである。全国の様々な地域で生まれ育った人達が、一人一人全く異なった道をくぐり抜け、この大学に集まって来た。その個人的な話しを聞く事は、とても刺激的であり、興味深いものである。私は、生まれも育ちも東京である。小学生のころに農学に興味を持った。家族と共に山に遊びに行ったりはしたが、実際に農業をしたことも、具体的な話しを聞いたこともあまりなかった。高校は都内の進学校に通っていたため、ほとんど受験のための勉強しかできなかった。
 この大学に来て初めて出会った農業高校出身の友人が、高校時代から、実学的な農業を学んでいた。私が大学で学びたいと考えていたような知識をもすでに持っていた。何より彼女は高校時代にやりたい事を学んだということに誇りを持っていることに私はショックを受けた。私は今まで有る意味、型どうり、というか没個性の人生を歩んできたように思う。自分の意志や考えよりも、周囲の一般性を重視していたのかもしれない。彼女の話しを聞いて、とても勇気づけられた。大学では自分の興味を自由に追求しようという気持ちにさせてくれたのだった。
 ここに書いたこと以外にも、生活力がもうすでについている人や、精神的に大人な人など、本当に様々な人がいて、そういう人と友達になれた事が私は嬉しい。いまのところ、その事が一番の収穫である。このような出会いを大切にしていきたい。出会って、自分も考え、見つめ直すことでより成長した自分になりたいと思う。


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