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その 19

 先日、作家の原田宗典さんという方が、ある雑誌に書いているのを、なにげなく読み始めました。若い女性に人気がある方らしいのですが、私は初めて聞く名前です。
 彼は、半年間の充電期間をはさんで、筆記具をワープロから筆ペンに変えたことについて書いていたのです。充電に入る直前、友人に「ワープロで小説を書いていると、頭の中にある文章と出てきた文章の間に、アルファベットがはさまっていないか」といわれ愕然としたとのこと。彼は、アルファベットで入力していたからです。「筆記具によって、文体も文章の流れも変わる」と彼は言います。ワープロを打つのと、文字を書くのとでは、手を使ってはいるものの、大きな差がありますよね。
 作家とは比べようもありませんが、ワープロになじまない私は、息子たちが小学校時代に使った短い鉛筆にキャップをはめ、消しゴムを傍らに書いています。



「歴史を学ぶこと」 鹿野 政直
岩波書店(1998) 132P(1300円+税)
 昨年の7月下旬、丁度夏休みが始まってすぐに「第一回岩波高校生セミナー」が開かれました。開催を「図書」で知った私は、非常に関心を持ちましたが、参加することはできません。そこで、高校2年生の二男に声をかけたところ、彼は二つの講座を選び、そして、申し込みました。
 最初の日はあいにくの雨でした。東京に住んでいるとはいえ、電車を2回乗り継いで行くしんどさと、さらに講師は大学の先生ですので、話の内容が理解できるのかも不安だったのでしょう、浮かぬ顔をしていましたが、それでも出かけていきました。
 夕方帰宅した私に、彼はまずレジュメを見せてくれました。すごい量で、準備に時間をかけたことがわかります。高校の授業よりも、はるかに面白かったこと、講師の方がとてもいい人だったことに感動していました。
 息子の話を聞きながら、どんな形の本になるのかな、と楽しみでしたが、やっとこの4月から出始めたのです。私はその中から、自分がききたかったこの講座を選びました。
読み始めてすぐに、自分に語りかけられているような気持ちになりました。そして、立ち止まってじっくり考える楽しさを知り、そんな中から自分にとって歴史とは何かをつかめるような気がしました。
 この本は、「歴史を学ぶこと」から出発し、「歴史に学ぶ」ということで終わっています。



「巨匠に教わる絵画の見かた」 視覚デザイン研究所・編集・発行(1996)
190P(1850円+税)
 そういえば、このごろ美術館に行っていないなあ、と思いながら手にとりました。
 ルネサンス以後の名画が順番に見られるだけではなく、画家自身の作品に対する言葉や、同時代の画家の言葉が載せられているユニークな本です。そして、画家たちの言葉は、私たちの絵の見方を自由にし、楽しませてくれるように思います。また、私には今までなじみのなかった美術史も学ぶことができました。


kiri.gif  今回の絵は「桐の花」です。
あるマンションの片すみに、何度も根もと近くから切られていた桐の木がありました。
 それが狭い場所ながら自由に伸びることを何時の間にか許され、そして、今年はたくさんの花を咲かせました。
 遠くから眺めるだけだったこの花を、マンションの階段から手を伸ばして折ってきました。初めて飾った短い命のこの花からは、部屋中に強い香りが広がりました。

それでは、また。

高木俊江



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