感性を摩耗させざるを得ない現代社会。その一方、心に触れるいくつかの言葉が、私達の心の目を開いてくれることがあります。そんな力を秘めた本に、あなたが出会えることを祈って。



Anata.gifその17

 通勤に利用している私鉄の電車の一部が高架になったことで、晴れて空気の澄んだ日には、富士山を見ることができます。それは、うれしい事なのですが、高架線で分断きれ、荒んでいく街を見るたぴに、複雑な気持ちになります。線路添いのアメリカハナミズキの並木、あちこちにあった藤、一面のマーガレットなどは、季節のにおいを感しさせてくれました。また、ポクシングジム前の通路では、練習姿をよく見かけたものです。車窓からはもう見ることのできないあれこれを思いうかぺながら、きょうも電車に乗っています。


「あなた自身の社会一一スウェーデンの中学校教科書」
アーネ・リンドクウィスト,ヤン・ウェズテル
川上邦夫訳 新評論(1997)212P(2200円+税)

 これは、私が(そして、もしかしたらあなたも)これまでに出会ったことのない教科書です。5章からなるこの教科は、まず「法律と権利」から始まり、そして「あなたと他の人々」「あなた自身の経済」「コミューン」「私連の社会保障」と椀きます。読み進むうち、心に残る項目が次々と出てきます。私達には自分で思っているより能力がある、何者かでありたい、コミューンにおける民主主義、離婚、たくさんの障害者がいる、仕事を失う人もいる、特別な援助が必要なこともある、老人になる、など・・・そして、子供たちの今と将来にとって必要な事柄が説明されています。
 例えば、犯罪についてどう警かれているかをみてみます。まず犯罪とは何かから述ぺ、スウェーデンの状況、かくれた犯罪もあること、加害者と被害者両方の話をきき、誰がなぜ犯罪者となるのか、さまざまな角度からの意見について、何が重要なのかを考えきせています。
 そして、恵まれない環境に育った人、犯罪を犯してしまった人、それぞれそれを克服して建設的な生き方ができることを牧えています。
スウェーデン文部省が発行した学習指導要領では、学校の任務とは、「生徒に、将来を築くという困難な事業への楽観な展望を与えること」とされているとか。
 その目的に添って作られた教科書をぜひ手にとっていただきたいと思います。
 そして、「課題」として質間ざれている間いに生徒と一緒に考えてみませんか。


「一ふさのぶどう」有島武郎
借成社文庫(1977)163P〈600円+税)

 読んだことはないのに、内容はよく知っている。そんな本ってあるものですが、有島武郎の童話集も、そんな中の一冊です。
 今では考えにくいでしょうが、私の小学校時代には、給食の時間になると、先生に本を読んでもらったものですが、この本(原題は「一房の葡萄」)も記憶の中の一冊です。
 たまたま、本の情報祇で見つけ、なつかしさから、買ってみました。大人の私でも、ドキドキしたり、胸が痛んだり、そして、涙ぐんでしまったり。読み柊えたとき、とても素直な気持ちになっている自分に気付きました。幼い日に、ぜひ出会ってほしい本です。、

hana.gif 今国の桧は「ピワの花」です。食ぺるピワは知っていても、初冬にひっそりと咲く花は見すごしている、のではないでしょうか。住宅地や公園などに、ビワの木は結構あるものです。近づくと、淡い上品な香りがします。

それでは、また。
高木 俊江




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