神域 〜棚田のある風景〜
八郷町半田
5月中旬の日曜日、スタッフ4人(山本亜希子・井川大也・泉川功一郎・松田智)で八郷町半田にお住まいの筧次郎(かけいじろう)さんのお宅を訪ね、援農をしていらっしゃる「次の世代を守る会」の方々と棚田の田植えを手伝った。(筧次郎さんについては、第26号で井川君が紹介させていただいているので、詳しくはその記事を見ていただきたい。)
筧さんが住んでいらっしゃる半田は、八郷町では南の方で、石岡市内にほど近い地にある。
■到着早々、軽トラックの荷台に乗せていただき、田んぼへ向かう。半田の集落から少しやまあいに入ってゆき、でこぼこの農道をさらに上がってゆくと、かわいい(!)棚田が数十枚広がっている!
平野部が少ない(海があって、すぐ山)山口県の瀬戸内に育った私にとって、この風景はとてもなつかしい。
いや、島国の日本人にとっての原風景ではいえまいか。
■棚田の田植えは初めてだった。狭いところで六畳ぐらいの田んぼは一つ一つが表情が違っていて、苗を植え付けていくのも楽しい。大人数でやっているとあっという間に一枚が終わる。
水路を流れ落ちる水の音。鳥の声。山の木々のさざめき。手を休めてふとまわりを見回すと、時が経つに連れて山の表情も刻々と変化してゆく。
都会生活に振り回されている私たちにとって、このひとときはとても豊かだ。豊かだと思ってしまうこと自体、もの悲しくはあるが……。
■しかし、昨年は日照り続きで山の湧水が枯れてしまったそうだ。雨量が少なかっただけではあるまい。まわりの山々はどうなっているのだろうか。ちゃんと手入れはしてあるのだろうか。
■里山が荒廃し、やまあいの棚田も放置されてゆく。機械化・兼業化・商業化していった農業……。資本主義経済に呑み込まれていった私たち……。
私たちは農山村を捨て都会に向かい、いったい何をしているのだろうか。どこへむかっているのか私たち自身わかっているのであろうか。
手のひらのようなやまあいの小さな田んぼは、しかし、人生そのもののようでもあり、こころを深く揺さぶられる思いであった。
一本植えの苗。たくましく成長するそうだ。
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