その 16
JRの駅から車で15分、ダムを2つ越えた山の取っ付きにその店はありました。老夫婦が作る揚げまんじゅうは10コが1包みで、黒・白どちらのあんかは食べてからのお楽しみ、売り切れたら店じまいです。
「なぜこんなところにおまんじゅう屋さんが?」と誰もが不思議に思いますが、1日になんと1000コも売れるんですって。私たちも70コ買いましたもの。
近くの戸数40の部落では、歌舞伎の舞台を新築し、こけら落としには、市川団十郎さんが来て、たくさんの見物人だったとか。
山村の奥深さと豊かさをしみじみ感じた旅でした。
『トンパ文字 ――生きているもう一つの象形文字――』王 超鷹
マール社(1996) 171頁(1165円+税)
この本を手にしたとき、普段は無口な私も、感動を伝えたくなって、思わず周りの人に話しかけていました。いい顔で話を聞いてくれた女子学生は、Tシャツの模様に使いたいからと、表紙をカラーコピーしました。
出会えてよかったなと、思える1冊の本です。
中国の雲南省の奥地に、いまでも象形文字を使っている少数民族がいるらしい。そしてその文字は『トンパ文字』と呼ばれている。その事を知った著者は、ぜひ見たいと思うのですが、トンパ文字と出会ったのは11年後。
「5000年前のエジプトの象形文字、3500年前の中国の亀甲文字でさえかなり形式化され、一定の法則性がみられる。しかし、トンパ文字には自由な発想があり、造形の素朴さが残っている。同時に色使いには現在のデザインに劣らない新鮮さがあり、思わず引き込まれるような魅力がある」と著者は述べ、トンパ文字のことを「絵形(かいけい)文字」と呼んでいます。
では、トンパ文字とはどんなものなのか、一つの例として人間の動作をどう表現しているか、ごらん下さい。
ほのぼのとした気持ちになりませんか!
彩色された文字もありますが、特定の色によって、その文字に特殊な意味を持たせているのだそうです。「人」を青く彩色した場合は「厚着」、または「豪華な衣装を着ている」というように。
『トンパ』というのは、ナシ族の原始宗教であるトンパ教の司祭のことで、『智者』を意味します。そして、ナシ族の中でも、トンパというごく限られた階級の人のみがこの文字を使えるのだそうです。
トンパは宗教的儀式を行うだけでなく、占い、医療活動なども行っていますが、お礼としてお金を受け取ることは禁止されています。だから、『金持ちにトンパなし』なのです。
このナシ族の生活や習慣は、「ここは日本?」と思うぐらいよく似ているのだそうです。ワサビ田、里イモ、コンニャク、そして釜あげうどんやかけそばなど。そして、捨てるほどのマツタケ。
探検家が、「世界で一番美しい旅路」と言ったこの地に行ってみたいですね。
今回の絵は、梅雨に咲く「アジサイ」です。
色や形はさまざまですが、私は、昔ながらのブルーの紫陽花が好きです。
それでは、また。
(高木 俊江)
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