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O-157 問題の波紋

〜O-157 問題の意味するもの〜

 昨年の夏に猛威をふるった病原性大腸菌O-157。学校給食に集中的に被害が出たのは、一体何を意昧しているのか。私たちにとって身近な学校の問題を掘り下げ、現代人の食の間題について議論しようということで始まったパネルディスカッション。(紙面の都合で2回に分けて報告さいただいています。前号No.25が前編、今回はその後編です。)


[学校給食と地域自給]前瓜連町町長・先崎(まつさき)千尋さん

 今の学校給食は限りなくエサに近いのではないか。しかし、エサと食べ物とどう違うのか、学生に聞いてもあまりビンとこないのが最近の印象。「地産地消」「身土不二」という言葉に象徴されるように、私自身長い間農協で仕事をしてきて、また行政の仕事をして「その土地でとれたものをその土地で食べる」という農業本来の昔からのありかたが一番良いのではないか、と考えるに至った。このことはただ単に「おいしい」「安全」なものをというだけではなく「地域経済」ということを考えてみても、エネルギーを消費しない。これからの農業の在り方というのは国際化というよりむしろローカルな形に取り戻すべきだし、そうしない限り日本の農業の打開というものは現状雑持すらできないであろう。
そういう観点からずっと瓜連の農業に取り組んできたが、そのひとつの核が「学校給食」だと考える。これまで各地で学校給食に取り組んでいる人と交流する中で、瓜連町でもそうしたいというふうに農協にいたときに考え、それを実行し今日に至っている。その成果としては、「ネモノ」というジャガイモとタマネギ、ニンジンなど比較的保存しやすい、あるいは長期的に管理できるもの、そして地元のものを学校給食に取り入れた。(葉物・生野菜はちょっと難しい)
 それまでは入札等いろんなことで制約があった(それまで半月契約の業者となっていた)か、農協と町役場で協議して、その入札制度をやめて、水戸市場の中値で計算するという協定書を生産者とむすんだ。生産者としては、自分の子どもたち・孫たちに、自分の作った野菜を食べさせたいという素朴な願いを実現することができたのではないか。
 しかし、一方では「学校給食会」の存在があり小麦粉・小麦製品・米・米製品・脱脂粉乳、牛肉、牛製品に関してはそこを通さないと政府の補助金が受けられない。年間1兆5000億円を越すと言われる学校給食の基礎物資のかなりの部分がそういうことでここを経由する。そのため、「瓜連町のお米を瓜連町の子どもたちに食べさせる」という極めて当たり前の素朴なことが、このルートを通らないということでできない。瓜連町でいうと年間400万円という補助金がカットされてしまう、そういう理不尽なシステムになっているのが現状。
 また、私は瓜連町の子どもたちに「エサ」ではなく「食べ物」を食べてほしい。だから、低温殺菌の牛乳を採用したり、町から給食費に月l人当たり100円の補助を出すようにした。この補助は、材料費の値上げに伴う給食費の値上げに関して非常に抵抗があり、議会でも反対が強いということで、「給食の質を下げないために」おこなったものである。(普通は食材が値上がりしても月3600円なら3600円の給食費の範囲の中で給食現場の人が食材・メニューをやり繰りしている)。
 以前、給食の是非論争があったが、「給食が教育かどうか」という間題以前に「今の食生活をまともにするために」、学校給食は1つのキーポイントになるのではないか。それをどういうふうに良くしていくのか、それは私たちの取り組みのやり方による。そのやり方のいかんよって給食は「食べ物」にも「エサ」にもなる。
 ・・・お話の最後に、瓜連町の冬場の特産品
”赤カプ”の漬物を試食できるよラに会場に回していたたいた先崎さんでした。


[O−157について](筑波大学・武田佳子さん)

感染状況
口本でO‐157に感染した下痢患者か初めて報告されたのは1984年。しかし、初めてO‐157の流行が注目されたのは、それより2年さかのぼる1982年、米国のファーストフード・チェーンのハンバーガーが原因によるものだそうです。また、米国では年間700万人の食中毒患者〈7000人以上の死者)が発生しているが、そのうちO‐157患者は割合としては少なくl〜2万人。そのかわり死者が200〜500人ということで、他の食中毒より死亡率が高いことは注目すべきことだろう。
大腸菌について
ほとんどの大腸菌は無害で毒素をもっていない。(腸内の菌のバランスか崩れたときに人間の体に害を与えることはあるが)。病原性大腸菌は、もともと自然界にどれぐらい存在していたのか分からないが、いつごろからか毒素を作り出すようになった。O‐157は志賀赤痢菌という菌の志賀毒素をもっているが、その他にもコレラと同し毒素をつくる大腸菌も存在している。
O−157について
去年、堺市・岡山県・神奈川県で発生したO‐157は遺伝子的にみると別タイプである。このことから、最初に発生したところからO‐157が感染していったわけではなく、日本に既にかなりの範囲で0-157が存在していることを示している。


「O−157の社会学」〈筑波大学・橘泰憲)
 l990年、埼玉県浦和市の幼稚薗でO‐157騒ぎがあった。その時は井戸水が原因で、トイレの浄化槽と井戸が5mしか離れていなかった。しかし、その井戸水を園児が飲んだかどうかは分からない。また、その大腸菌がどこから来たのか不明。O‐157は嫌気性菌で腸の中でしか生きられない(=外に出ると死ぬ)だけに謎である。
 圃場においては、たとえO‐157のような病原菌がいたとしても、土壌のバランスが崩れなければ問題にならない。それは人間においても言えるはず。同じ給食を食べても「症状が出る子ども」と「全く平気な子ども」がいた。O‐157があれだけ騒がれたのは、病原菌を取り入れた人間の免疫力か弱まってきているからではないたろうか。
(報告者=中島亮)

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