吹秦楽部でトランペットを吹いている高校生の次男は、三月末の定期演奏会にむけ、休みもなく練習に励んでいました。そして演奏会前日のこと、プログラムを見ていた長男が突然大声で笑い出したのです。なんと次男が、「『おムコにするならこの男』と数学のK先生お墨付きの家事上手」と紹介されているではありませんか! えェッ〜、そんな人この家にいたっけ?と大騒ぎになりました。洗濯物を取り込んだり、お風呂をわかしたりすることは、わが家では当たり前のことなのですから。
『東京に農地があってなぜ悪い』
原 剛、江波戸哲夫、波辺善次
学陽書房(1991)188P(1300円)
練馬区のはずれに住むわが家族は、この地がとても気に入っています。住むほどに好きになって「住むに値するまち」だと思えるようになりました。高層住宅の13階から引っ越した当時は、毎日が感動の連続でした。私鉄の駅を出ると、すぐに畑が広がり、キャベツ畑は、もやにかすんでいました。微気象というのでしょうか、少し都心寄りの駅と、お天気がずいぶん違いました。あちこちに無人の野菜売場があり、また広い畑の一部は「うね売り」や「さく売り」されていました。
「生産緑地法」施行の時、近くの農地がどうなるのかとても気になりましたが、耕されていた畑の殆どが残りほっとしたものです。でも空き地だったところ、梅林、栗林などには、住宅が建ちました。一戸建て住宅は、敷地いっばいの「まったく同し表情の家々」が並んでしまいました。
この本が書かれた当時、執筆者たちは、「地球を守ろう」と言っている人たちが、あと一歩で「東京に襲地があってなぜ悪い」と言ってくれるに違いないと考えていました。
そして、その日は、意外に早く来たように思います。
『率直に言わせてもらいます「終わらなかった戦後日本」
在日留学生、中国の大学生ら95人が綴った“50年目”の課題』
国際交流研究所 大森和夫・編
朝日ソノラマ(1995)223P(1400円)
第一部、「『信頼できない日本人』の深い根はここにある」、そして第二部、「国際化実現の道で日本は必ず成功できる」から成るこの本は、「戦後50年、日本に望むこと」というテーマで書かれた、日本語作文コンクールの入選作品を集めたものです。
読み進みながら、「日本人一人一人が向かい合うぺき『日本』」が見えてきます。私は、かれこれ30年近くアジアからの留学生と毎日顔を合わぜる職場にいますが、こんなに率直な声をきいたことはありませんでした。想像できた声だけに、直接きけなかった、責任を感じます。
昨年、韓国からの稲作農家の日本研修旅行に付き添う機会があり、4日間行動を共にしました。言葉が全く通じない中で、通訳はいるものの感覚だけが頼りでしたが、心の中にはいつも戦争責任が重くのしかかり、どこかぎこちない自分を感じていました。
この本は身近に置いて、重い課題と向かい合っていくことを私に迫っています。
今回の絵は「ボケの花」です。その昔、職場の近くにボケの生け垣があるお寺があって、花の季節になるとよく見に行ったものです。そして親しみを込めて「ボケ寺」と呼んでいたのですが、それが住職さんの耳に入ったのでしょうか、ある日突然、切られてしまったのです。ぴっくりすると共に悲しかったあの日を思い出します。
それでは、また。
高木俊江