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2003年06月30日(月) 00時00分

メディア封じ? 読売新聞記事に「今後するな」と抗議 東京新聞

 法務省が、読売新聞に突きつけた一枚の抗議文書が野党や学者の厳しい批判にさらされている。北朝鮮元工作員の難民認定をめぐる記事の真偽に関するもので、個人情報保護法に始まる小泉政権の一連の対メディア規制の先取りにも見える。名古屋刑務所事件の審議では国会軽視をとがめられた法務官僚の、憲法違反を問われかねない権威体質がまたしても露呈した。(社会部・市川隆太)

■抗議

 発端は「北元工作員 難民認定へ 近く最終判断」という読売新聞の五月二十九日朝刊・一面トップ。

 森山真弓法相が北朝鮮の元対日工作員からの難民認定申請を認定し、初の「北朝鮮難民」となる可能性が高い−との予測記事だった。

 これに、法務省が即座に反応した。同日、増田暢也入国管理局長名で、読売新聞東京本社の編集局長あてに「抗議申入書」を出した。

 「事実に反し、かつ読者に誤った印象を与える憶測記事が掲載されており極めて遺憾である。訂正と謝罪を求めるとともに、今後このような誤った記事を掲載することのないよう、厳重に抗議を申し入れる」

 官僚らしからぬ激しい文面だった。

■飛び火

 これが衆院法務委員会のメンバーの目にとまった。「これはいかん、これは謝罪しろと、抗議の仕方に非常にトゲがある。しかも命令調だ」(保坂展人氏=社民)、「今後このような誤った記事を…と、今後のことまで言っており、憲法二一条(表現の自由)の事前抑制禁止の法理に反する。抗議文を撤回し読売に謝罪せよ」(山花郁夫氏=民主)と批判が集中した。

 法務省は「憲法違反とは考えていない。撤回する意思はない」(増田入管局長)、「ちゃんと報道してほしい、というのは当然のこと」(森山法相)と突っぱねたが、元公務員試験予備校講師で、法務省にも教え子がいる山花氏から「まるで、できの悪い生徒みたい」と皮肉られる始末だった。

 思わぬ反応に弱った法務省は、十日の法務委理事会で、増田局長が法務委に「報道機関に対する事前抑制的との疑義を生じさせたことは遺憾」と謝罪する−との妥協案を示して収拾を図ろうとしたが、野党からは一蹴(いっしゅう)され、与党も助け舟を出さなかった。野党は「撤回しないなら、将来、入管関係の法案審議のときに、読売問題を蒸し返し、法相のクビを取る」と厳しい姿勢を崩していない。

■威嚇

 個人情報保護法の成立により、企業・団体職員がメディアに内部告発すると、個人情報の目的外利用だとして同法違反に問われることになった。

 法務省が国会に提出した人権擁護法案も、メディアが政治家や官僚の不祥事をしつこく取材することを妨げる内容。それだけに、今回の抗議文問題をメディア規制の先取りと見る識者は多い。

 田島泰彦上智大教授(憲法学、メディア法)や、弁護士でもある福島瑞穂参院議員(社民)らは「予測報道を許さない法務省の態度は“大本営発表”しか書くな、ということ。そんな役所の外局に人権委員会を設けてメディア規制しようとする人権擁護法案は断じて認められない」と口をそろえる。さらに田島教授は「今回はメディアに対する威嚇、見せしめ。官僚が、露骨に表現の自由を侵すようになったとは驚きだ。本来なら法相のクビが飛ぶ問題なのに、黙っている報道各社もどうかしている」。

 メディア総合研究所の岩崎貞明事務局長も「読売は抗議されたことさえ記事にしていないが、読者への説明責任を果たすべきだ」と話す。

 当事者の読売は「記事内容には自信を持っており、法務省が求めている訂正や謝罪をするつもりはない。(抗議文は)報道機関が歓迎できる書状ではない。この抗議で当社の報道活動が影響を受けることはない」(東京本社広報部)と抗議を黙殺する構えだ。一方、新聞労連は「『書かれたくないこと』を書かれたとき、いちいち訂正や謝罪を求めるのは、権力の乱用で、表現規制につながる」(明珍美紀委員長)と批判している。

 ■読売報道の概要

 読売新聞は5月29日付朝刊で(1)脱北者で組織する「日本脱北者同志会」会長の青山健煕氏(通称名)が日本政府に申請していた難民認定について、法務省東京入国管理局が5月28日までに「難民認定が妥当」との調査報告書をまとめた(2)これを受け、森山真弓法相が近く判断を出すが、初の北朝鮮難民と認定される可能性が強い−などと報じた。

 <メモ>

 憲法21条 (1)集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。(2)検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

 事前抑制の原則的禁止の法理 検閲は憲法で絶対的に禁止されているが、検閲でなくても、表現行為が行われることに先だって、公権力が抑制を加えたり、事後であっても事前抑制と同じような影響を与えてはいけない、という原理。


http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20030630/mng_____kakushin000.shtml

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