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2003年06月19日(木) 00時00分
裏技人生 マニュアル生活 脱する方法？ 自室がオフィス。パソコンに向かう時間は１日ごくわずか。「出歩かないとアイデアは出てこない」と河元さん＝千葉県我孫子市の自宅で右上は、１枚５０００円のＣＤ−ＲＯＭ。１日１００枚売れたことも （東京新聞）梅雨どき、臭くならない洗濯物の干し方は？−なんて、ちょっと得する生活情報を「裏技」と呼ぶ。テレビなどでも頻繁に取り上げられている。そんな裏技情報の発信を仕事にしてしまった若者がいる。裏技のサイトを運営し、その情報をＣＤ−ＲＯＭにして販売、月収が１００万円を超すことも。ネット時代の新ビジネスの登場だ。裏技人気の背景を探った。河元智行さん（２８）＝千葉県我孫子市＝のオフィスは、実家の自室六畳間。マットレスにテレビ…。どこにでもある独身男性の部屋だ。商売道具は、携帯電話とパソコンとボイスレコーダーだけ。 「楽しい裏技・裏情報！」。これが河元さんの運営するサイト。ホームページやメールマガジンで無料情報を配信する。収入源は、一枚五千円で販売するＣＤ−ＲＯＭの有料情報。約五百件の多種多様な裏技が入っている。この一年、少なくても一カ月に百枚、多いときは二百枚以上売れているという。 中身は買ってのお楽しみだが、一例を教えてもらった。 「携帯電話で相手の現在位置を知る方法は？」 河元さんが目の前でやってくれた。まず、友人の携帯電話に空のメールを送る。数秒後。友人の名前の下に「東京都港区芝浦」という表示が出てきた。これじゃ、もう恋人にアリバイ電話はできなくなった…。 これは、ある携帯電話会社の機種に限定して可能な裏技。インターネット機能付き携帯電話で「掲示板」と「位置情報」という、通常は別々に使われている機能を組み合わせる。ただしこの二つの機能が使用可能な状態に設定されていることなどの条件は必要だ。 こうした情報はすべて一人で集めたわけではない。ネットで情報交換したり、プレゼントを付けて一般募集したり。「ネットがなければ成り立たない、すきま産業」と河元さんは話す。 河元さん、もとは全国紙の記者。地域情報面で約二年間、取材と編集を担当した。「お得な情報」を読者に提供しようとクーポン券付きの紙面を提案し、好評だった。企画自体は新聞協会の規定に触れてなくなったが、情報収集に興味を持つ原点となった。 その後、携帯電話の売り場担当に転職。新規契約数日本一を達成するなど活躍し、職場には何の不満もなかったが「慣れて楽になると成長できない」とまたもや辞めた。 退社前から携帯電話の裏技などをメールマガジンで始めていた。「情報は売れる」と確信してインターネットでの商売を始めたものの、最初は失敗続き。無料情報の数を増やし、見たくなるような魅力的な索引に仕上げ、大手の検索エンジンに登録するなど工夫を重ね、徐々に人気を呼んだ。 河元さんの集中力はすごい。「成績は悪かった」と言うが、「進学率１％」の地元商業高校から一日十七時間の猛勉強で大学へ。講義をさぼってナンパに明け暮れる一方で、一カ月ごとに目標を決めて熱中。例えば、「小説家になる」と決めた月は、毎日机に向かって短編から長編まで四本をものにしたことも。 そもそも裏技とは「ファミコンの攻略本から始まったのでは…」と河元さん。試しに大手取り次ぎの書籍リストを引くと、五百冊以上が「裏技」で検索できた。 裏技の名称を世間に広めたのは、一九九七年開始の日本テレビの人気番組「伊東家の食卓」。当初低迷したため、「身近で便利、簡単な情報を“裏技”として扱い始めたところ、急速に視聴率が伸びた」（日本テレビ宣伝担当）。今では年間視聴率２０％以上を稼ぐ。人気の秘密は「その場で試せるし、奥様やお子さんは、友達との会話に使える。一種の娯楽では」（同） テレビはともかく、なぜ人々は五千円も投資するのか。その問いに河元さんは「三万円余の高級ホテルでも、夕方、空き室を狙っていけば一万円で入れることがある。五千円を投資しても回収できるから買う」 さらに、機械が複雑化し、取扱説明書も難解な現状もある。人間の理解力が追いつかない状況が起きている。そんな中で、裏技は「使いこなす方法」（河元さん）として重宝だ。 でも一方で、自分で考え出す努力をしないことに慣れた現代人が、裏技を“裏マニュアル”として頼っている。裏技人気は、そんな風潮の表れかもしれない。 文・出田阿生／写真・川柳晶寛 http://www.tokyo-np.co.jp/00/thatu/20030619/mng_____thatu___000.shtml |