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2003年05月11日(日) 01時10分

<有料老人ホーム>「誇大PR」公取委が排除命令毎日新聞

 静岡県と石川県の有料老人ホームが、パンフレットや説明書の中で入居者へのサービスを誇大にPRしていたとして先月、公正取引委員会から景品表示法違反(不当表示)で初の排除命令を受けた。食肉偽装事件を契機に、表示に対する消費者の不信感が高まる中、「終ついの住み家」の不当表示にも公取委が厳しい姿勢を示したと言える。介護保険導入に伴って有料老人ホームは急増しており、公取委は今月下旬、老人ホームの表示に関する新たな指針作りの検討会を発足させる。【武本光政、渋川智明、大西康裕】

 ■「なぜ処分?」

 相模湾を一望する山の中腹にある15階建てと3階建ての有料老人ホーム、伊豆ヘルス・ケアマンション(静岡県東伊豆町)。排除命令が出た翌日の4月17日、運営者と入居者との懇談会が開かれた。集まった約50人の入居者からは「どういうことなのか」「これからどうなるのか」と不安の声が相次いだ。

 誇大広告と認定された健康診断・相談料の無料表示について、加部純夫支配人(51)は「健康管理費という名目で月額利用料に含め、健康診断や相談ごとに料金はいらないという意味だったが、認識が甘かった」と話す。

 パンフレットで全居室南向きと宣伝していたサンリッチ三島(静岡県三島市)の福家英也施設長(47)は「一部が北西向きの介護室は一般居室とは別と認識していた。だまそうという悪意があったわけではないのに、なぜ排除命令という重い処分になるのか」と戸惑いを隠さない。入居している女性(83)は「騒ぐほどの問題ではない。間違いを直せばいいだけ」と話した。また、シニアユートピア金沢(金沢市)を経営する石川ライフクリエート(同)は、介護保険制度に基づくサービス内容なのに“独自サービス”として表示していた。

 3施設は有料老人ホームとして初の排除命令を受けたが、「違法」の認識は薄いようにみえる。

 ■再三の警告

 公取委は97年度以降、老人ホームや高齢者向けマンションなどの実態調査を進め、これまでに計14社を不当表示で警告した。02年度は公取委中部事務所管内の40施設を調査し、今回の3社が処分の対象となった。

 公取委は「過去の警告事案に比べ、今回の3社が特に悪質だったというわけではない」(幹部)と言う。再三の警告にもかかわらず、違反が後を絶たないことから「業界として問題意識が欠落している」(同)と判断、法律に基づく行政処分に踏み切った。

 景品表示法は、消費者に誤認される商品やサービスの表示を不当表示として禁止し、誤認される恐れがある表示を公取委があらかじめ指定することで、それに違反すれば、取り締まることができる。例えば、果物の表示がある清涼飲料水については、果汁や果肉が使用されていない場合は「無果汁」と明記するよう指定されている。

 公取委は、老人ホームにもこうした指定を設ける方針で、今月下旬に消費者団体や学識経験者ら十数人で作る検討会を発足させ、今年度中にも不当表示の具体的な内容を指定する方針だ。

 ■弱い入居者

 排除命令を受けたうちの2社が加盟する社団法人「全国有料老人ホーム協会」(東京都中央区)は4月末の理事会で、今回のペナルティーとして、高齢者向けに販売しているガイドブックから2社の掲載を見送ることを決定。さらに、表示に対する意識を高めるための研修会を開催し、会員の参加を義務付けることを決めた。

 国民生活センターの木間昭子・主任研究員は「今まで住んでいた家を処分した入居者も多く、戻る家がないためサービスに問題があっても解約しにくい立場にある。心身機能が衰えている人であれば、なおのこと問題を表面化させたくない。非常におとなしい消費者だから、施設側には『お客様』と認識していない所もある」と、ホーム側に一層の自覚を求めている。

◇「確実な収入」相次ぐ企業参入

 今回の問題の背景には有料老人ホームの急増がある。介護保険導入の大きな目的は、施設介護から在宅介護への移行だったが、施設への入所希望は相変わらず多く、特別養護老人ホームは入所待ちが問題になっている。そんな中、有料老人ホームは00年の介護保険スタート時に349施設だったのが、昨年7月現在で494施設と、2年間に約150件も増えた(厚生労働省まとめ)。

 有料老人ホームのほとんどは、民間企業が運営する。社員寮を買収したり、借り受けて新築・改造するなどして続々と参入した。厚労省も昨年10月、部屋の広さや廊下幅を緩和するなど参入を後押ししている。

 有料老人ホームであっても、個室化など一定の要件を満たし、都道府県から特定施設入所生活介護の指定を受ければ、要介護認定者への介護サービス費は介護保険から支給される。参入企業側からすれば、確実に給付が見込まれ、経営効率も図られる。

 ただ、特養に比べると割高なのは確かで、利用者側は入所に際し、より手厚いサービスを求める。ホーム側は自らの魅力をアピールする必要に迫られ、不当表示につながったとみられる。

 排除命令が出された16日、厚労省は都道府県を通じて有料老人ホームに(1)高齢者に分かりやすく、実態に即した正確な表示をすること(2)利用者に示す重要事項説明書、パンフレット記載内容を点検、広く公開すること——などを通知した。(毎日新聞)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030511-00000107-mai-soci

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