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2002年09月02日(月) 17時51分

知る権利とプライバシー保護の間で揺れる裁判所WIRED

 ワシントン発——米国各州は、裁判記録のオンライン化を積極的に進めている。おかげで刑事裁判や民事裁判、離婚裁判の記録が一般市民でも手軽に調べられるようになってきた。だがその一方、どこの州も、技術の発達にみあったプライバシー保護基準の策定に苦労していることが、21日(米国時間)に出された報告書から判明した。

 ワシントンDCに本拠を置く『 http://www.cdt.org/ 民主主義と技術のためのセンター』(CDT)がリリースした報告書によれば、公的記録にアクセスする一般市民の権利を守ることは重要だが、家庭内暴力を受けて逃げている妻の現住所や確証のない児童虐待の申し立てをインターネットに掲載し、公共の目にさらすことは危険であり、いかにバランスを取るべきか、各州とも頭を悩ませているという。

 「そういう問題があることは事実であり、どの州もその解決に向けて努力している」と、CDTの政策アナリスト、アリ・シュウォーツ氏は語る。

 たとえば http://www.flcourts.org/ フロリダ州のように、州として1つのはっきりとした方針が決まるまで、裁判記録のオンライン公開の一時停止を検討しているところもあるほどだ。フロリダ州は、市民が公的記録にアクセスする権利を法律でとくに明確に保障している州の1つ。

 「だが、知る権利と隣り合わせに、市民にはプライバシーを守るという基本的権利もある。その2つをどうすれば両立させられるか、われわれにもはっきりとした答えはつかめていない」と語るのは、フロリダ州最高裁判所で記録公開問題を担当するスティーブ・ヘンリー氏。

 先の報告書によると、米国のすべての州が裁判記録をオンライン化し、ある程度までは一般市民に公開しているという。ただ、そのやり方は州によってさまざまだ。

 モンタナ州のウェブサイトには、モンタナ州最高裁の判例を無料で検索できるデータベースがある。アラスカ州の一部の裁判所では、民事裁判や検認裁判(遺言状や遺産の問題を扱う)、離婚裁判のうち終了したものの一覧を公開している。

 カリフォルニア州では、州裁判所が、年間利用料を支払った者に対して、民事裁判や検認裁判、家族法関連(離婚など)の裁判の記録へのアクセスを認めている。郡裁判所もオンライン記録へのアクセスを提供しているが、こちらは各裁判所によって条件が異なる。

 どんな裁判記録も、公開することで思わぬ結果を引き起こす危険をはらんでいる。社会保障番号のように、明らかに慎重な取扱いを要するデータを削除して公開している裁判所もあるが、裁判記録には当事者の氏名や住所に加え、銀行の口座番号などが記されている場合もあり、それを見て他人になりすます者が出てこないとは限らない。

 隠すべきとは断定しきれないが、やはり扱いに注意を要し、さもないと当事者に気まずい思いをさせかねない情報もある。離婚訴訟で配偶者どうしが互いを非難するやりとりや、養子縁組手続きに記載された実の両親の氏名などがそうだ。

 被害者の権利を擁護する活動家たちは、夫に暴力を受けた妻や虐待された子どものプライバシーに配慮して、配偶者による暴力や家族法関連裁判については、オンラインでの記録公開を差し控えるよう求めている。暴力を受けた妻の現住所が裁判所記録に記載されているケースは多く、ストーカー被害に遭う可能性があるからだ。

 「これは生命を脅かす結果につながる」と語るのは、『 http://www.courtaccess.org/ 全米州裁判所センター』のマーサ・スティケティー氏。

 全米州裁判所センターは、各州の司法政策立案を支援するために設立された非営利団体で、州や連邦政府が裁判記録のオンライン公開問題に対処し、そのガイドラインを作成する手助けを行なっている。センターでは現在、この問題に対する勧告をとりまとめる作業にあたっており、10月に報告書を出す計画だ。

 それまでの間は、各州がそれぞれに問題に取り組むしかないとスティケティー氏は言う。

 「裁判所によって、この件に対する姿勢は千差万別だ。膨大な量の情報をオンラインで公開しようとしているところもあれば、電子的な形で情報公開するのを一切やめているところもある」

 ほとんどの州は、フロリダと同じく、州としての裁判記録公開方針を検討しようとしている。フロリダ州最高裁のヘンリー氏によれば、その理由は単純だという。「州全体に一貫した方針がないため、結局のところ、裁判所ごとに67もの違った方針があることになる」

 プライバシー擁護派も州政府もこの問題が一朝一夕に解決できるとは思っていないが、問題への認識が広まれば、それなりの基準が整ってくるものと期待している。

 「司法制度に身を置く裁判官や弁護士でさえ、裁判記録に含まれる個人情報のレベルや危険性を認識できていない。およそ社会で起こっていることはすべて、何らかの形で裁判に取り上げられるのだ」とヘンリー氏は述べた。

[日本語版:藤原聡美/高橋朋子]日本語版関連記事

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