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2002年08月02日(金) 01時10分

<ワン切り>NTTが約款変更 常識超えた落とし穴 毎日新聞

 携帯電話を無差別に狙う「ワン切り」の影響で大阪府内などで起きた電話の通話障害を防ぐため、NTTは1日、回線を一時停止した後も大量発信を繰り返した場合は契約解除できるようにするなど約款の改正を決めた。業者は光ファイバー回線を使って大量発信を繰り返しており、これまでの通信の常識を覆す事態を引き起こした。約款改正で効果は上がるのか? 高度通信時代の落とし穴ともいえる「ワン切り」を追った。 【坂巻士朗、藤後野里子】

 ◆ツー切りも

 携帯電話の着信音を1回だけ鳴らし、着信履歴を表示して切れる「ワン切り」。2回鳴る「ツー切り」もある。業者は特殊なソフトを使い、自動的に電話番号を連続作成し、携帯電話に発信する仕組みだ。

 国民生活センターによると、昨年秋ごろから急速に広がり始めた。相談件数は、多い月は6000件を超えている。「知り合いかも」と思って掛け直すとアダルト番組など有料サービスにつながり、高額な料金を請求される例もある。業者は東京や大阪など各地にあるといわれる。

 2度にわたり通話障害を引き起こしたとみられる大阪市北区の業者は今春以降、光ファイバー回線「INS1500」を徐々に増やし、NTT西日本と計18本の契約を結んでいた。INS1500は、本来はインターネットなどのデータ通信などで大容量が必要な大企業向けだ。1本で通常回線の24回線分の容量があり、最大で432回線の通信能力を備える。この業者は1分間に3000回近い発信を繰り返したことが確認されている。

 ワン切りは相手が出る前に切るため、業者は通信料を負担せずに済む。ただ、回線使用料はこの業者の場合、毎月最低でも約56万円の経費がかかる計算。「設備投資額は決して小さくない」(通信会社社員)と指摘するが、それ以上に利益があるということだ。

 1日会見したNTT東日本の尾崎秀彦・企画担当部長は「電話は正直言って人間が通話することをベースにしている。住宅用だと、回線当たり1日3回の10分間の利用だ。コンピューターを使って何回もやることは想定外だった」と話した。

 ◆なぜ障害が?

 大阪府と兵庫県尼崎市で7月15日と29日に起きた通信障害の共通点は「月曜日の午前10時過ぎ」だった。NTT西日本によると、週明けの通話は通常、それ以外の平日より1割増える。しかも、午前10時前後はピークの時間帯だ。

 一般加入電話から携帯電話への通話は三つの交換機を経由するが、交換機の処理能力を超えそうな場合には通信の一定割合を規制する。このため通信障害が発生した。

 事前に防げなかったのか。NTT東日本は今年3月、大量発信を続ける数社を特定。職員が10回以上業者を訪問し、発信間隔を長くするよう要望、従わない場合は回線の使用を中止する場合もあると警告していた。同社は「現在まで大掛かりな障害はない。要請が守られている」と話す。

 しかし、NTT西日本は、15日の大規模障害の後、問題の業者を特定するまでに5日間もかかった。29日は約1時間前の午前9時ごろ、同じワン切り業者から発信が繰り返されたものの、事前の回線利用中止には踏み切れず、通信障害につながった。

 ◆法規制は

 総務省の電気通信事業法は「正当な理由がなければ通信サービスを拒んではならない」(34条)と定めている。今のところ、ワン切りそのものを規制する法はない。NTTは「いたずら電話も同じだが、通信の乱用を防ぐことは難しい」と言う。

 7月29日と今月1日にNTT西日本が行った業者の回線使用中止は、現在の約款にある「設備の保守上やむを得ない時には利用を中止することがある」という条項に基づく緊急措置だった。今回も、通信利用に迷惑をかけるという根拠から約款変更に踏み切った。

 7月、一方的に送りつけられる迷惑メールについては、1度メールを拒否する意思表示をした受信者への再送信を禁じるなど業者を規制する法律が施行された。受信しただけで通信料がかかったため苦情が殺到して社会問題化したうえ、緊急事態でも必要な電話に比べてメールの利用者が限られているため法規制に踏み切ることができたという。

 約款変更の効果についてNTTは「ワン切り業者だからといって契約を受け付けないのは難しい。しかし、かなりの程度は対処できる。最大限のとり得る措置をさせてもらった」と自信を見せる。ただ、通信障害を起こすほどではない発信回数の業者の利用停止措置はできず、ワン切りが根絶できるとはいえないのが実情だ。

 岡村久道・近畿大講師(コンピューター法)の話 ワン切りは電話網にただ乗りしたあげく、事業者の設備をダウンさせ正常な通話まで妨害する。人から電話がかかってきたら、ついかけ直してしまうという人の善意にもつけこんでいる。サイバーテロどころではない。業者が10人いたら日本の通信インフラはつぶされかねない。ただちに法規制するべきだ。

 森井昌克・徳島大教授(情報通信工学)の話ワン切りが広がった背景には、もうかるので業者が巨大化したことや、法規制で迷惑メール業者がくら替えしたことなどがある。新しい通信サービスが次々と出てくることはやむを得ず、だれもが恩恵を被る権利がある。法規制でがんじがらめにしてしまうのは問題があり、現時点では、約款で対応すべきだ。(毎日新聞)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20020802-00000187-mai-bus_all

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