■第1場
 バスの運転手の西村太郎と美人の女車掌大森よし子は、将来を誓い合った恋仲。その一方で休茶屋の娘お梅は、西村にひそかな恋心を抱いている。舞台は同時代の東京の下町、荒川の土手(船堀あたりがそのモデルとされている)、バス停近くの休茶屋。お梅が恋人のいない孤独な我が身を憂い、物思いに耽っていると、よし子との待ち合わせのために西村がやって来て、お梅の気持ちも知らずに他愛もない言葉をかける。やがてよし子が登場、2人は夕焼けを見ながら愛の言葉を交わす。よし子が残って土手の花を摘んでいると、映画監督の岩田とカメラマンの千塚がやってくる。彼らはよし子に前から目をつけていて、彼女を女優にスカウトしたいと言う。「映画スターになれる」という言葉に舞い上がったよし子はそれに応じ、西村を捨て、映画の世界へ身を投じてしまう。
■第2場
 それから3年の月日が流れる。今や西村は彼をひそかに想っていた休茶屋の娘お梅と一緒になり、一児をもうけて平和で幸せな家庭を築いている。西村が子供の薬を買いに出ている時、雨が降る中、よし子が女優の夢破れて傷ついて戻ってくる。気の毒に思ったお梅は、雨が止むまで家で休むようによし子にすすめる。 そこにお梅の叔父、高木が訪ねてくる。お梅の父親が選挙のことで刑務所に入れられているというのだ。高木はお梅の母親に頼まれて、父親の裁判や弁護士の費用を工面するために、お梅に花柳界(色町)で働いて欲しいと懇願に来たのだった。お梅は泣き崩れるが、この様子を目にしたよし子は、帰って来て様子を伺っていた西村を制して、堕落した私が身代わりになろう、あなたは西村さんと幸せに暮らしなさい、と申し出るのであった。


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