松岡邦彦監督作品


満たされない人妻 隣室の秘めごと

2001年、レジェンド・ピクチャーズ(V)
監督・脚本:松岡邦彦
出演:岡崎美女、藤井薫、斎木亨子、本多菊次郎、中村英児、伊藤猛

「優しい夫と幸せな結婚生活を送っているが性的に満たされていない若妻。ある日、隣室に住む女の現在の恋人が、自分の昔の恋人であることを知る。彼の方がある時強引に部屋に押しかけてきて、それ以来夫のいない昼間に再び関係がはじまる」。そんなありがちな話でありそれ以上でもそれ以下でもない。奥行きやひねりなど何もない。欲求不満で悶えたり昔の男に抱かれたりするヒロインの姿態が全ての、わかりやすーいエロ映画。一人エッチや剃毛シーンもあって見所満載。ま、いいんでないかい?としか言いようがないんですけど(笑)。

主演の岡崎美女(みお)はAV女優だそうだけど、線の細いきれいな人(髪を黒くして和服(喪服希望)を着せたら似合いそう)。しかしながら絡みをやる存在としては文句無しだけど、少々存在感が薄くて物足りない。もう少し演技を見せるような映画であれば印象は変わったかも(そもそも演技が出来るかどうかわかりませんが)。
主人公の『運命の男』的元恋人役が伊藤猛。ヒロインが彼が自分のマンションにやってくる様子を自室の窓から見下ろしているシーンが多いので、背が高くて脚が長い彼がコートの裾を翻して歩いている様子はとても見栄えします。この人、どの映画でもいつも何考えているかわからない表情で、茫洋としているようにも不穏な様子にも見えるのだけど、この映画では主人公の不安や苛立ちを誘うキャラクターとして登場してそれにピッタリ合っている(二枚目ではないけど。笑)。そういえばピンクの男優さんってこういう人が多い気がするなあ。器用に演じわけてるような人もいるけど、それだけでなくてその存在感や雰囲気自体がどうにでも解釈できるような微妙な位置にいる人。それがリアルに生々しくて面白い。この伊藤猛氏や本多菊雄(ここでは菊次郎)氏は、そういう不思議な存在感を持つ男優の一人ではあるまいか。
ヒロインの夫を演じているのが本多菊次郎氏。ゲーム好き(しかもテレビやPCではなくオセロのようなボードゲームだというところがミソ)で少々子供っぽくて、たぶんヒロインが彼を選んだのは母性本能をくすぐられたからではないかと思われるキャラクター。性格は明るく素直で穏和、「いいヤツだけどバカ」と評されてもいる(笑)。ただ問題は夜の生活が淡白なこと・・・2回あった絡みのシーンはちょっと笑えました。しかしどうなんだ私。このキャラクターが可愛く見えて仕方なかったのはやはり本多氏ってなことで目が曇っているせいだろうな。

この作品はビデオ映画。エロ系のVシネマなんでしょうか(そのコーナーにおいてあったので)。ビデオだと映画よりも覗き見っぽいムードは出るかもしれないな。でもこの陰影の乏しさはどうも好きになれない。(2002.12.25.)


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玲子の秘密 多淫症の人妻

2001年、製作:ネクストワン、配給:Xces Film
監督: 松岡邦彦、脚本:松岡邦彦、黒川幸則
出演: 川奈まり子、本多菊次郎、ゆき、河村栞、 岡部貴一、牧村耕次

専業主婦(川奈まり子)が結婚する前にやってたコピーライター(なのか?)の仕事を再び始め、担当の若い男とズルズルと不倫関係に陥る。高校教師をしておりストレスで神経をすり減らしている夫(本多菊雄)に申し訳ないと妻は思っているのだが、彼は彼で、妻が仕事している間に風俗嬢を買ったりしている。妻の不倫がばれそうになったり、夫もかわいい風俗嬢に逃避しきったり、あんなこんなそんなが起こるものの(謎)結局はお互いが一番大切、と元の鞘に収まるのだった。あ、そうですか。

「満たされない人妻 隣室の秘め事」の松岡邦彦監督作品。確かに雰囲気はよく似ている。繊細な小道具が使われているのだ。「満たされない〜」では子供っぽい夫が夢中になっているボードゲームであり、今回は妻が(夫は全く注意を払っていないものの)毎日活け変える花瓶の花。そして物語も結構似ている。アンバランスな幼さを残した夫、時間を持て余している女盛りの妻、強引に割り込んでくる男。ヒロインは最後には母性的愛情を選んで夫の元へ戻ってゆく、ってな感じ。「ダメよダメよ、夫が気づくわ〜」とか言いながらその気になってゆくヒロイン像の安っぽさは微笑みを誘います。
敢えて良いところを探してみると、ヒロインを誘惑する男の恋人なんだかセックスフレンドなんだかを演じたゆきの役柄が、ラディゲの「危険な関係」に出てくるメルトイユ夫人のようで面白い。しかしこれだと、女優が逆だと思うのな。ヒロインはゆきで、このメルトイユ夫人が川奈まり子だった方が味があったんじゃないかしらん。
主演の川奈まり子はAV女優なんだそうで。いつも目を半開きにしたような眠たげな雰囲気がちょっといやらしくて良いです。ただ、この映画は恐らく音入れは後だったんじゃないかと思うんですが、台詞回しがまだまだ下手な感じ(その点でもゆきのほうが巧かった)。あといくら専業主婦だからっていっつも昼寝してるって設定はどうだろうよ(笑)・・・しかも太股丸出しのペラペラなワンピース姿で。ヒロインがグラリと来てしまう男が岡部貴一。何故グラリと来たのかさっぱりわかりません。夫を癒している馴染みの風俗嬢が川村栞。美人ではないけどとても愛嬌があって可愛らしいです。なんというか、女性受けする感じの人でした。
そして高校教師で、寝言で「すみません」「それは親の責任転嫁だ!」と叫ぶのが本多菊次郎。不倫しているのではないかと疑って妻と喧嘩しながら、自分は風俗嬢に「奥さんと喧嘩しちゃってさー」とか困ったように打ち明けている(この打ち明け話を聞いた河村栞がまた、いい反応をする)。この人は本当に(気は優しいけど)ダメな感じのご主人という役どころがピッタリです。女としては「なんて勝手な男だ」と憤るところかもしれんけど、この人が演ると無邪気な愛嬌と哀しさがあってどうもそう思えない。「ダメねぇ」なんて優しく微笑みたくなるのだ。嗚呼、今回もまたやられてしまった。(笑)
明るい画面が多いので本多氏の表情がとても綺麗に撮れています。そういう意味ではとても楽しかった・・・(2003.5.13.)


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