ペイントは固まり、ラテックスは分離し、埋もれたFRPは二度と硬化する事はない。着ぐるみレイヤーは死んだのだ、、、。
心に萌を持つ爺いは、全て逝ってしまった。

、、、、、、どっこい生きてたw。

 引越前にハルコンネンの改造をやって以来だから、かれこれ十数年ぶりに造形をやりました。相変わらず工作用紙を木工ボンドで貼り合わせて雑な工作やってます。ちょっとしたホームセンター(田舎でもコメリくらいなあるよね)があれば、どうにでもなるレベルです。
 お題は、今旬(?)な刀剣乱舞から、厚藤四郎の袖。ただし、コスプレ用ではなくて、8歳の息子の甲冑を手作りしてるので、その一部を刀らぶのデザインを混ぜて作ったというものです。ですので子供サイズです。
、、、、
、、、、、、、あー、ちなみに「袖」というのは、日本の甲冑の肩から二の腕部分の防具になります。「肩当て」とか呼ばないように。

 厚の袖は、素っ頓狂なデザインの多い刀らぶでは、割りと実物の甲冑に近いデザインです。一番上(冠板と呼ぶ)から、五段下がりの黒糸素掛威で、冠の板と六段目(菱縫の板)が金色で残りは全て黒塗りです。
 ですが設定画そのままじゃなくて、上記の通り、実際の甲冑の袖のデザインでアレンジしてます(かなり手抜きにだけど)。冠板はL字に折り返した折冠ですが、実物は殆ど直角に折り返しています。刀剣男士の袖は、ここを湾曲させて45度以下の斜めにしているものが見られます。厚のもその形式ですが、直角で作りました。面倒だからです(力説)。実在の甲冑では、威糸の一番外側に、耳糸と呼ばれる威し糸を通します。ココだけ柄付きの糸にしたり、色を変えてアクセントにすることもあります。設定画にありませんが、今回は耳糸も付けました。色は変えず黒一色です。

で、実を言うと、取り立てて書くようなこたぁ何もありません。
工作用紙を切り出します。何枚か貼り合わせます。穴を空けます。表面処理して塗装します。紐で繋いでできあがり。
ね、簡単でしょ?(ゆっくり声)

ではとりあえず用意する物から。

工作用紙
スニーカー用の靴紐(平紐、今回は幅8mmのものを使用)。威糸にします。白、赤、黄、黒などの基本色の紐なら、ドンキやABCマートでも売ってます。自分は小狐丸用に中間色の紐が欲しかったのでAmazonでまとめて発注しました。
木工ボンド
プラサフ(下地塗装のスプレー。車用のです。ホームセンターが無くてもイエローハットとかオートバックスで買えます)
塗料(黒&金) 刷毛塗りでもスプレーでもどっちでもかまいません。水性のとラッカー系のがあるので注意(後述)。
カッター&ハサミ(工作用紙3枚重ねの一気切りとかもやるので、ハサミはクラフト用のゴツイのがオススメです。小さいハサミだと手が痛くなります)
穴開けパンチ(レザークラフト用。大量に穴を空けるので、あると便利)
カッティングマット
定規(カッター対応のもの)
紙やすり
洗濯ばさみ等

では次にサクッとした手順

切り出し
 所定の大きさに材料を切り出す。切り出す材料は単純に長方形で良い。縦横の寸法を出して、重なり部分を1cm〜2cmで考えると、だいたい寸法が出ます。片側につき、各三枚ずつ計18枚を切り出す。今回は、菱縫いの板は1cm幅狭にしてます。また、冠板の分の3枚のうち1枚だけはのりしろ分1cm幅広に切り出すこと。こののりしろに冠板の折り返した部分(矢留板とか障子の板という)を接着します。矢留板は、袖のカーブに合わせた三日月型に切り出し、1枚は接着ののりしろぶんを1cmだけ狭くします。

三日月型のが矢留板、三行に穴があるのが板札、2行穴のが菱縫いの板。これは穴の位置を書き写すための型紙です。
板札は幅16cmで作成。

下線入れ
紐(威糸、威毛などと呼ぶ)の穴の位置を書く。穴は直径3mm。穴の間隔は中心−中心で7mmとしたが、紐の幅によって変わる。素掛威は、2穴×3列で六穴を使います、裏から入った紐が表側でクロスしてまた裏に入り(菱縫という)、更に三段目の穴から表に出て次の札に繋がる形になります。初段である冠板は糸の出る発手なので1列、最後の菱縫板は菱縫のみなので2列のみの穴になります。
今回威しは三条で行うので、板札の左右と真ん中に、7mm間隔で六つの穴を空けます。実物では、多くの例で一番外側に耳糸と呼ぶ紐を一列に通すので、今回の作例でも入れてみました。なので、左右の穴は九穴ずつ空けています。貼り合わせる前に穴を空けると、湾曲させた内側と外側で長さが変わって、穴の位置が合わなくなるので、穴は貼り合わせてから開けることにします。
予め、7mm間隔で穴を空けたガイドを作って、これでマーキングすると楽です(↑の写真のが型紙です)。

貼り合わせ
各段の板札は工作用紙の3枚貼り合わせで作ります。Rがついているので、貼り合わせる場合は何かガイドが無いと湾曲がバラバラになってしまうこともあるので注意。今回はガイドとして24cmの寸胴の鍋を使いましたが、子供用なのでこのサイズの鍋でもいいけど、大人用だとかなり大きな円筒をガイドにしないと適当なRが出ません(実物のRはかなり緩いです)。直径40cmとか50cmの円筒って、あんまりご家庭には無いので困ります。
工作用紙は各段それぞれ三枚重ねにします。冠板はのりしろ付きのを真ん中にします。のりしろは切れ込みを入れて直角に折りかえします。この、のりしろを挟んで矢留板(三日月型の板)を接着しますが、パンチで穴が空けられなくなるため、まだ貼りません。
貼り合わせてはみ出た部分は後でカットします。

固まったら、レザークラフト用の穴開けパンチの3mmを使って穿孔。重ねて空けるのはおそらくは3枚重ねが限度です(なので3枚重ねなのです)。3mmは、威しに使う靴紐の先端部分が通る太さです(物によってはちょっとキツイかも)。このあたりは用意した紐との兼ね合いで決めます。
ちなみに、本小札を再現する場合(小狐丸の袖など)、威しに使う穴が六穴、札を固定するための穴が八穴で、縦に七個の穴が7mm間隔で2列に並ぶのが一組になる訳ですが、、、レザー用パンチで穿孔する場合は、この寸法でギリギリです。8mm間隔にすると、真ん中の列に届かなくなります。金槌使うパンチとかなら問題無いですけどね。もしくは、3mmの木工ドリルとか。
穴が開いたら未完成だった冠板を貼り合わせます。袖を胴に結ぶ紐が冠板に付くので、予め空けておきましょう。矢留板はのりしろをサンドイッチします。1cm幅狭に作ったのは真ん中に挟みます。

とりあえず2枚貼り合わせしてみた。右上、のりしろの出ているのが冠板。

できた板札を重ねて見ましょう。たぶん曲がりはバラバラになってるはずです(笑)。なので曲がりの調整。調整のしようがない冠板をガイドにして、曲がりの浅い板は内側に上質紙を貼って引っ張っる。曲がりが強すぎる板は外側に貼って引っ張ります。加減が結構難しい。冠板と菱縫板はどうしょうもありませんが、途中の板は皆同じ形なので、曲がりが強いものが上、緩いものが下にくるように配置すると、多少のずれは問題になりません。まぁ、往々にして一番下にせざるを得ない菱縫の板が一番曲がりが強くできあがったりする訳ですが、、、。

で、実はこの製作のときは、2枚貼り合わせの段階でなんとか曲がりを調整できないかと、水で濡らしてみたら、、、

こうなったorz

仕方無いので、3枚目を貼り合わせつつ鍋をガイドにして調整。

ごらんの有様だよ。
、、、、これでも調整しきれない部分(曲がりすぎや曲がりが足りない)は出てくるんで、ホント面倒くさい。

塗装
 まずは下地処理です。ボール紙の縁(切り口の部分)に木工ボンドを縫って染みこませます。これをしておかないと、端から剥離してボロボロになります。
乾燥したら、全面にサーフェイサーを吹き付けします。ライトグレーで全面塗装すると、例えばボンドのはみ出た部分など、結構デコボコがあるのが判るので、200番くらいのペーパーで平にならします。紙の下地が出ると、塗装したときに毛羽立つので、できればもう一回サーフェイサーを吹きましょう。縁や角も磨いて、エッジを落としておきます。塗装も基本的に2回します。下地塗りの後でもう一回ペーパーかけましょう。今度は400番くらいので、表面をなでる程度です。

サーフェイサー吹いて、ペーパーがけしたところ。

仕上げ塗りは、できれば湿気の少ない日にやりましょう。湿気があると塗膜の表面が曇ることがあります。
金色は表側だけなので、黒が塗り終わってから、裏面をマスキングしてぬります(本物は漆塗りの上に金箔捺なので、表面だけ金色になる)。

ラッカー系を使うときは、ラッカー系のみ。水性を使うときは水性のみにしましょう。ラッカーの上に水性を重ね塗りすることはできますが、逆はできません。先に塗った水性が浸食されてボコボコになります。 あと、まかり間違っても、室内でスプレーとか吹いたりしないように。屋外で、段ボール箱でスプレーブースを作ってやりましょう。屋外と言っても、駐車場とかでやっちゃいけません。隣に白い車が停まってたりしたら、、地獄を見ますよ?。
ラッカー系は乾燥が結構早いですが、ペーパーがけや重ね塗りは最低一時間〜二時間乾燥させましょう。
工作用紙製でもきちんと塗れば、紙っぽく見えなくなります。

塗装が乾燥したら威し作業に入ります。
紐はスニーカー用靴紐で、長さ150cmのものを使用しました。これを半分に切り、切った面にはテープを巻いて先端を細くします。通りにくいときには、先端を斜めにカットしてからテープを巻きます。耳糸は最後に通すので今は付けなくていいです。
今回は三条で威します。威し作業は一斉にやります。肩に付けたときに、自然に腕を覆うように、真ん中の威し糸は左右より長目に取って、きちんと湾曲するようにします。直径3mmの穴に幅8mmの紐を通すので、当然穴を通すときは紐がまるまりますが、かならず山型になるようにします。谷が出ちゃったときはちょっと戻して、山を付け直して通しなおしてください。菱縫いの部分は、決まった側が上になるようにします。左右バラバラにはしないように。最後に耳糸を縦に通して威しも終了。裏側に結び目とかを作るときは、小さく作らないと板が浮いてしまったり結構見栄えに影響するので、場合によっては接着するなり縫ってしまったりした方が良いでしょう。


一通り威したところ。

最後に袖付の笠鞐(かさこはぜ)を付けます。笠鞐ってのは、トグルボタン(ダッフルコートのボタン)の小さいのを想像してください。胴の肩上(わだかみ:肩紐の部分)や、袖、籠手などは、だいたいこの笠鞐で接続されます。冠板の穴に紐を通し、バッグ用とかに使う小型のトグルボタンをつけました。形がちょっと違うけど、あまり気にしないことw。ちなみに、本物は細長い小判型の板ですが、トグルボタンとして売ってるのはほとんとが断面が丸いので、穴の開いてる面を削り落として平面にすると現物に近くなります。この袖は胴の肩上に紐の輪が二つ出ていて袖付けの茱萸(そでつけのぐみ)と言います。そこに笠鞐を填めてぶら下げる形になります。

ね、簡単でしょ?。面倒くさいだけで。
なお、本物の甲冑で鉄の板札の袖の場合は、縁の部分をひねり返して盛り上がっています(たぶん強度を上げるため)。今回は手抜きでそれは再現しませんでした。次回作で試しにやってみようかと思います。