ビデオタイトル「手錠」
2002年、製作&配給:国映=新東宝映画
監督:サトウトシキ、助監督:堀禎一、脚本:今岡信治
音楽:山田勳生、挿入歌「プール」(作詞:今岡信治)
出演:佐々木日記、松永大司、斎藤知香、佐倉麻美、向井新悟、田端宏和、羅門ナカ、本多菊次朗、松原正隆
10年前の夏、ヒロイン千里(佐々木日記)は高校生。処女を捨てようとしてテレクラで出会った男(羅門ナカ)とホテルにいくと、いきなり手錠をかけられ殴られたので逃げ帰る。 途中で同級生の高史(松永大司)に助けられ、彼が一人で暮らしているアパートにいって手錠を外してもらう。なんとなく好意をもった千里はその後彼と初体験するものの、彼には彼女がいて、なんとなく失恋してしまう。5年前の夏、ヒロインは事務系OLとして働きながら男と同棲しているものの、それでもなんとなく援助交際を続けている。久しぶりにバーテンをやっている高史に出会ってなんとなく関係を持つものの、彼は高校時代の彼女と結婚していて子供までいて、なんとなく、それはそれで終わってしまう。今年の夏、すでにOLを辞めたヒロインは牛丼屋でバイトしている。援助交際はまだやっていて、顧客なんだか彼氏なんだかのような、ちょっといじらしい大学生とダラダラつきあったりもしている。そんな時にまた高史に出会う。彼はすでに離婚していた。二人とも本当にダメダメだ。そこで、なんとなく、二人は昔、手錠を外したあのアパートの部屋に行ってみる。懐かしい部屋で、今は何もない部屋で、二人は一緒に寄り添ってねむる。
サトウトシキの映画って、暗闇(及び暗い所にいる場面)の映像が深みがあって美しいなぁと思う。私、本来はこういう主人公みたいなダラダラした若者を見ると「きいっ!」という気分になるんだけど、ならなかったのはたぶん(佐々木日記の魅力と)この美しい暗闇に心うたれてしまったからじゃないか。「迷い猫」でヒロインがバス停に佇んでいるシーンもそうだったけど、今回も、夜、主人公が自転車の二人乗りをしている場面、そして部屋で二人が眠っている場面がとても端正で綺麗。いつも彼の描く暗闇を見ると、なんだか心が騒ぐような気分になる。この「ロスト・ヴァージン」では、それがセンチメンタルな気分であったりする。私はこういう生き方をしてはこなかったのに、なぜセンチメンタルなのかしらん(笑)。ダラダラと過ごしているだけにみえる主人公二人の関係(および周囲)が、時が経つと共に否応ナシに(ごくわずかだけど)変わってゆくところに、何かやはり自分自身にも当てはまるところがあったからかもしれない。
今岡信治の監督作品を1本しか見てないので比べる資格はないとは思うんだけど、彼が撮った作品だったら、また全く違う印象の映画になってたかもね。
で、それ以外は、佐々木日記ってすごいわ。の一言に尽きるんじゃないでしょうか。腹に力のはいってないダラダラとした口調(←誉めてるつもり)、かったるそうに「うっせーよ」と言うその有り様、だらしないのにものすごくキュートなのだ。って一体何を言ってるのかよくわかりませんが私。見てない人には、とにかく見て!としか言えません(笑)。それくらい、この映画の佐々木日記はイイです。これデビュー作なんですよね、すごいなぁ。
本多菊次朗氏は、5年前の夏に援助交際している相手として一瞬登場。なんかそれだけなんだけどいい人っぽいです。(笑)(2004.4.2.)