本多菊雄出演作品(1)


KYOKOの体験 ザ・本番(東京遊民娘)

1986年、製作=ミリオンフィルム
監督:四ノ宮浩、脚本:小林政宏
出演:高森沙雅子、栗原かさみ、吉川マリ、佐野和宏 、菊次郎、池島ゆたか

脚本の小林政宏って小林政広(サトウトシキ監督とよく組んでいる人)とは別人なのかな。
KYOKOという名前の3人の若い女性が主人公で、3人それぞれのストーリーが同時に進行する形となっている。
(1)23歳のKYOKO。ホステスをしており、不倫相手との関係に行き詰まりを感じている。客の一人からプロポーズを受けるが結局不倫相手とは別れられない。
(2)20歳のKYOKO。女子大生だが「東京遊民娘」という店でホテトル嬢として売春している。大学の同級生であるカメラ小僧につきまとわれているのを最初は疎ましく思っていたが、自分自身の在り方に疑問を持った時、幼いが一途な彼が愛おしく思えてくる。
(3)18歳のKYOKO。処女だったが行きずりの男と好奇心から関係して以来、好奇心旺盛なだけによからぬ方向へ歩み始める。最後には「東京遊民娘」でアルバイトを始める。
この三人はお互いのことをよく知らないものの、時折画面の中ですれ違う。18歳のKYOKOについていえば、23歳と20歳のKYOKOの存在を知っており、二人のイラストを描いて部屋に飾ったりもしている。有る意味、一人のKYOKOの3つの時代と言ってもいいのかな、って気がした。
タクシーの運転手が女性で何故かいきなりフランス語を喋ったり、BGMにアラブ風の民族音楽だったり、20歳のKYOKOが客相手にセックスしている時に豚の鳴き声が効果音に使われたり、と、一風変わった雰囲気ではある。(そもそもタイトルバックがエジプトのピラミッドだったりする)主人公の三人を異邦人的に描きたかったのであれば成功かもしれないな。こういうムードって70年代くらいの、性に開放的な(笑)女性を主人公にしたヨーロッパのムードエロ(と私は表現する)映画にあったような気もする。しかしながらこの三人それぞれに葛藤はあるものの全く底が浅いので、ストーリーはとても退屈。絡みの部分も別にこれといってどうという印象も無し。最後に三人のKYOKOが絡み合う幻想的なシーンもあるのだがとってつけた感じがして興ざめしただけだった。

フィルモグラフィーを調べると、本多菊雄氏の出演作はこれが最初になっています。今から16年前の作品。チョイ役かなと思って見始めると、始まって5分で登場したので私は奇声を発してしまいました。20歳のKYOKOにつきまとうカメラ小僧の医学生、植木君(たぶん童貞)。一眼レフのカメラとカメラバッグをいつも両肩からかけ、眼鏡をかけて、白いオフタートルのセーター、サスペンダーつきのだぶだぶのズボン姿(時代を感じる)。いきなりKYOKOから「つきまとうな」と喫茶店で水をぶっかけられ、グスグス泣きべそをかくシーンから始まるのだ(笑)。ああー!ラブリー!!その後もカメラを持ってチラチラと画面に現れてくれるわ、この手の役にはありがちだが惚れた女が客相手に体を売るシーンを目撃してショックを受けて泣いてくれるわ、と(笑)なんてラブリーなの植木君!(そもそもストーカー的存在なのだろうと思うけどこの時代にはそんな語彙はなかったでしょう)
このときおそらく本多氏は20代前半であったのではないかと思います。最後には服を着たままですが絡みもありました。その後には裸での絡みがあるのだけど、これは本多氏ではないように見えたなあ。いずれにしても、出演時間は多くないもののファンとしては大変感慨深いものがありました。(笑)


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満たされない人妻 隣室の秘めごと

2001年、レジェンド・ピクチャーズ(V)
監督・脚本:松岡邦彦
出演:岡崎美女、藤井薫、斎木亨子、本多菊次郎、中村英児、伊藤猛

「優しい夫と幸せな結婚生活を送っているが性的に満たされていない若妻。ある日、隣室に住む女の現在の恋人が、自分の昔の恋人であることを知る。彼の方がある時強引に部屋に押しかけてきて、それ以来夫のいない昼間に再び関係がはじまる」。そんなありがちな話でありそれ以上でもそれ以下でもない。奥行きやひねりなど何もない。欲求不満で悶えたり昔の男に抱かれたりするヒロインの姿態が全ての、わかりやすーいエロ映画。一人エッチや剃毛シーンもあって見所満載。ま、いいんでないかい?としか言いようがないんですけど(笑)。

主演の岡崎美女(みお)はAV女優だそうだけど、線の細いきれいな人(髪を黒くして和服(喪服希望)を着せたら似合いそう)。しかしながら絡みをやる存在としては文句無しだけど、少々存在感が薄くて物足りない。もう少し演技を見せるような映画であれば印象は変わったかも(そもそも演技が出来るかどうかわかりませんが)。
主人公の『運命の男』的元恋人役が伊藤猛。ヒロインが彼が自分のマンションにやってくる様子を自室の窓から見下ろしているシーンが多いので、背が高くて脚が長い彼がコートの裾を翻して歩いている様子はとても見栄えします。この人、どの映画でもいつも何考えているかわからない表情で、茫洋としているようにも不穏な様子にも見えるのだけど、この映画では主人公の不安や苛立ちを誘うキャラクターとして登場してそれにピッタリ合っている(二枚目ではないけど。笑)。そういえばピンクの男優さんってこういう人が多い気がするなあ。器用に演じわけてるような人もいるけど、それだけでなくてその存在感や雰囲気自体がどうにでも解釈できるような微妙な位置にいる人。それがリアルに生々しくて面白い。この伊藤猛氏や本多菊雄(ここでは菊次郎)氏は、そういう不思議な存在感を持つ男優の一人ではあるまいか。
ヒロインの夫を演じているのが本多菊次郎氏。ゲーム好き(しかもテレビやPCではなくオセロのようなボードゲームだというところがミソ)で少々子供っぽくて、たぶんヒロインが彼を選んだのは母性本能をくすぐられたからではないかと思われるキャラクター。性格は明るく素直で穏和、「いいヤツだけどバカ」と評されてもいる(笑)。ただ問題は夜の生活が淡白なこと・・・2回あった絡みのシーンはちょっと笑えました。しかしどうなんだ私。このキャラクターが可愛く見えて仕方なかったのはやはり本多氏ってなことで目が曇っているせいだろうな。

この作品はビデオ映画。エロ系のVシネマなんでしょうか(そのコーナーにおいてあったので)。ビデオだと映画よりも覗き見っぽいムードは出るかもしれないな。でもこの陰影の乏しさはどうも好きになれない。


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女美容教師 ぬめる指先

2001年、製作:シネマアーク、配給:Xces Film
監督:下元哲、脚本 :石川欣
出演:河井紀子、本多菊雄、佐々木基子、河村栞、しのざきさとみ、間宮ユイ

あまり儲かっていない美容室に、極上のマッサージテクを持った美容教師(河井紀子)がやってくる。彼女は店を見事に建て直し、ついでに仕事仕事でキリキリしすぎた店長(佐々木基子)と、自分の無力さにすねて女遊びばかりやっているだらしない亭主(本多菊雄)の仲も修復する。めでたしめでたし。

キミョーな映画なのだった。「若くて綺麗な美容教師(ってそもそも何なのか)に溺れてゆく髪結いの亭主の物語」であるようでいて、なんか微妙にズレてゆき変てこなハッピーエンドになってしまう。まぁピンクなのだから、破滅してボロボロになってお終い・・・なんて展開にしたら、楽しもうと思って来たお客さんは甚だ不愉快だっただろうけどさ(笑)。
しかし何と言ってもこの映画は(「多淫症の人妻」でもそうだったが)本多菊雄氏を堪能する映画でしょう。実際、この映画の主人公はこの「髪結いの亭主」だと思う(ヒロインであるはずの美容教師の心情は全く描かれていない)。金と女にとことんだらしのない軟弱な男で、自分に都合の悪い従業員は次々にクビにしたりする、イイところなんて全然ないヤツなのだが(笑)、何故かいやらしさを感じさせない。ヒロインへの眼差しなどは、下心アリアリというより、綺麗な女性にうっとりと見とれている少年のそれのようなのだった。

問題はこの映画ではいいセリフがあまりないことなのだ。物語を動かしている人物を演じているはずの本多氏にあてがわれたセリフは、コメディなのかそうじゃないのかよくわからない映画のムードの中で上滑りしている。些細なセリフは良いのだけど(そして本多氏自身、そういうのがすごく得意そうな気がするのだが)、ちょっと突っ込んだ内容になると、とても作り物っぽく聞こえてしまった。一度だけ、だらしなく適当なようでいて、仕事の出来る妻と何も出来ない自分への苛立ちがチラリと見えるセリフがあり、そこんところをもう少し深く描いてくれれば・・・と思わずにはいられなかった。ま、そんなこと言ったって時間も足りないんだししょうがないだろうけど。でもファンとしては、せっかく良い俳優さんなのだから、もう少し良いセリフに恵まれて欲しいと思ってしまう。まだ見てない他の映画に期待。


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玲子の秘密 多淫症の人妻

2001年、製作:ネクストワン、配給:Xces Film
監督: 松岡邦彦、脚本:松岡邦彦、黒川幸則
出演: 川奈まり子、本多菊次郎、ゆき、河村栞、 岡部貴一、牧村耕次

専業主婦(川奈まり子)が結婚する前にやってたコピーライター(なのか?)の仕事を再び始め、担当の若い男とズルズルと不倫関係に陥る。高校教師をしておりストレスで神経をすり減らしている夫(本多菊雄)に申し訳ないと妻は思っているのだが、彼は彼で、妻が仕事している間に風俗嬢を買ったりしている。妻の不倫がばれそうになったり、夫もかわいい風俗嬢に逃避しきったり、あんなこんなそんなが起こるものの(謎)結局はお互いが一番大切、と元の鞘に収まるのだった。あ、そうですか。

「満たされない人妻 隣室の秘め事」の松岡邦彦監督作品。確かに雰囲気はよく似ている。繊細な小道具が使われているのだ。「満たされない〜」では子供っぽい夫が夢中になっているボードゲームであり、今回は妻が(夫は全く注意を払っていないものの)毎日活け変える花瓶の花。そして物語も結構似ている。アンバランスな幼さを残した夫、時間を持て余している女盛りの妻、強引に割り込んでくる男。ヒロインは最後には母性的愛情を選んで夫の元へ戻ってゆく、ってな感じ。「ダメよダメよ、夫が気づくわ〜」とか言いながらその気になってゆくヒロイン像の安っぽさは微笑みを誘います。
敢えて良いところを探してみると、ヒロインを誘惑する男の恋人なんだかセックスフレンドなんだかを演じたゆきの役柄が、ラディゲの「危険な関係」に出てくるメルトイユ夫人のようで面白い。しかしこれだと、女優が逆だと思うのな。ヒロインはゆきで、このメルトイユ夫人が川奈まり子だった方が味があったんじゃないかしらん。
主演の川奈まり子はAV女優なんだそうで。いつも目を半開きにしたような眠たげな雰囲気がちょっといやらしくて良いです。ただ、この映画は恐らく音入れは後だったんじゃないかと思うんですが、台詞回しがまだまだ下手な感じ(その点でもゆきのほうが巧かった)。あといくら専業主婦だからっていっつも昼寝してるって設定はどうだろうよ(笑)・・・しかも太股丸出しのペラペラなワンピース姿で。ヒロインがグラリと来てしまう男が岡部貴一。何故グラリと来たのかさっぱりわかりません。夫を癒している馴染みの風俗嬢が川村栞。美人ではないけどとても愛嬌があって可愛らしいです。なんというか、女性受けする感じの人でした。
そして高校教師で、寝言で「すみません」「それは親の責任転嫁だ!」と叫ぶのが本多菊次郎。不倫しているのではないかと疑って妻と喧嘩しながら、自分は風俗嬢に「奥さんと喧嘩しちゃってさー」とか困ったように打ち明けている(この打ち明け話を聞いた河村栞がまた、いい反応をする)。この人は本当に(気は優しいけど)ダメな感じのご主人という役どころがピッタリです。女としては「なんて勝手な男だ」と憤るところかもしれんけど、この人が演ると無邪気な愛嬌と哀しさがあってどうもそう思えない。「ダメねぇ」なんて優しく微笑みたくなるのだ。嗚呼、今回もまたやられてしまった。(笑)
明るい画面が多いので本多氏の表情がとても綺麗に撮れています。そういう意味ではとても楽しかった・・・


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