女池充監督作品


多淫OL 朝まで抜かないで

ビデオタイトル「淫らな庶務課 OL塔子の歓び」
2000年、製作:国映、配給:新東宝映画
監督:女池充、脚本:西田直子、脚本協力:荒井晴彦、音楽:東圭樹
出演:佐々木ユメカ、川瀬陽太、松原正隆、河村栞、松島めぐり、田中愛理

塔子(佐々木ユメカ)は、会社から帰宅する途中、昔の男シゲル(川瀬陽太)と再会し、成り行きで関係を持ってしまう。一方、塔子と同棲して三年目になる恋人(松原正隆)にも、隠れてずっと会っている女(松島めぐり)がいる。ある日塔子は恋人にプロポーズされるが、その直後、その女の存在を知ってしまう。一方、塔子と一度関係を持ってから、シゲルもまた、付き合っている彼女(河村栞)とうまくいかなくなる。塔子とシゲルは再び付き合い始める。

オープニング、佐々木ユメカが川瀬陽太に再会するまでの運びがとても良い。なんとも言えない緊張感と不安感から始まる物語である。実際、映画全体が不安なムードの中を漂っている。というよりかは、我々が日常的に経験している、先行きの予測のつかなさが映画の中に再現されていて、(良い意味で)居心地の悪い気分にさせられるのだ。物語自体はものすごく単純である。それなり幸せだったはずのヒロインが、昔の恋人と出会って彼とよりを戻す。ただそれだけ。この映画の面白いところは、その、「ただそれだけ」な話を、ドラマチックな誇張・強調を何一つせずに淡々と最後まで描いたところだろうと思う。この淡々とした雰囲気が、ごく平凡な物語に、かえって「先行きの予測のつかなさ」であり、生々しさでありを与えたように私には感じられた。映画の終わりでヒロインは昔の彼氏と仲良く生活を始めるのだが、これだって、見ている側にハッピーエンドだという印象をまったく与えない。もしかしたらまたこの二人は別れてしまうかもしれない。映画が終わった後にも物語はどこかに続いてゆく、そういう余韻が面白かった。
脚本は西田直子。私この人好きかも。(ヨーロッパ映画とかが好きな女子にも好かれそうな気がします)それにしてもこの西田さん、女性らしいディテールを描きこむのが好きですな。たとえば同棲中の部屋から(半永久的に)出て行こうとしながら、汚いキッチンを見て思わず数日分のカレーを作っといてやるとかさ(笑)。たしか「スワッピングナイト」で、夢を追おうとするダンナ(伊藤猛)に強硬に反対する妻(葉月螢)の有様もやたら生々しかったしなぁ(笑)。この当時まだ新人だったそうですが、協力の荒井晴彦って一体なんなのかしら・・・・。

佐々木ユメカさん主演映画。私はこの佐々木ユメカという女優が大好きなのだが、それはこの人のクールな雰囲気が、傷つきやすい脆さと表裏一体のように思えるからだ。時々痛々しく見えるクールさ。どこかで無理をしながら頑張っている女性のカッコよさ。たぶん私の友達とか姉とか、そんなごく身近な人が見せるカッコよさに通じるものがあって、勝手に親近感と憧れを抱いてしまっているのだった(笑)。そんなユメカさん主演なのでアレです、それだけでもこの映画は良かったのです(本音)。
昔はたぶんイヤな坊ちゃんだったけど、今では肉体労働従事で謙虚にもなった男(と書くと見事なくらいにフィクション)が川瀬陽太。松原正隆は「不倫する人妻 眩暈」でもユメカさんと共演していた。河村栞はほとんど脱ぎなし。アップもないのでちょっと残念。(2003.7.24)


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ハレンチ・ファミリー 寝ワザで一発!

ビデオタイトル「更衣室の戯れ〜ゆれる美尻〜」
2002年、製作・配給:国映=新東宝
監督:女池充、助監督:坂本礼、脚本:西田直子
出演:佐野和宏、今野順貴、絹田良美、水原香菜恵、江端英久、佐々木基子、石川裕一、本多菊次朗

ビリングのトップはスイミングスクールのコーチを演じている水原香菜恵。しかしヒロインは彼女ではなく、その友だちで警備員をやっている「ぶーやん」(絹田良美)である。ある日、事務所の夜間警備にあたっていた彼女は、盗みに入った親子(佐野和宏、今野順貴)をひっつかまえるが、必死に父親をかばう子供の様子を見た彼女はその親子を逃がしてやる。いっぽう、盗みに入っていた男は小学生の塾講師をしていたが、教え方がヘタなのかなんなのか、生徒がどんどん減って今は自分の息子しかおらず、借りていたビルから立ち退きを命令されてしまう。立ち退きを避けるために金を作ろうとして盗みを働いたのだった。親子はその後、ぶーやんが怪我で入院したことを知り、申し訳なさで見舞いに訪れる。

この映画、大好き。スウィートでキュートな物語である。冒頭、プールでの「ぶーやん」の登場の仕方からして楽しくおかしい。しかも、全編、暖かい楽しさに満ちている。優しくておおらかだけど、太っているのがコンプレックスで処女のままのぶーやん。彼女が柔道の道場の先輩(江端英久)にあこがれているということを知って、彼女の親友(水原香菜恵)とたまたま行きがかり上仲良くなったハゲてしょぼくれた中年男(佐野和宏)があれこれやと処女喪失の世話を焼く。往年の初体験物と言ってもいいのだが、この映画のオモシロイところは、ヒロインが中年男の文字通り手を借りて寝技に持ち込み、憧れの人とやっちゃう展開。とにかく初体験は好きな人となのである。しかし、この映画がよりいとおしくなるのは、初体験のその後、ヒロインにとっては残酷な結末が、さわやかな優しさと一抹の哀しさをもってキッチリと描かれている終盤部分である。
物語を作ったのが女性(西田直子。「スワッピングナイト」は好きじゃなかったのだけど)だからか、ぶーやんという女の子の可愛らしさ、彼女と親友との女同士の力関係とか、彼女の初体験のその後のエピソードなど、いずれもとても好感が持てるし説得力も感じさせられる。テーマ曲であるサンバ音楽も、ラスト部分で小憎い使われよう。

ぶーやん役の絹田良美は本当に愛嬌があってカワイイ。行きずりながらぶーやんをほっとけなくなる(そして最終的に彼女から「勇気をもらう」)中年男が佐野和宏。彼の妻で今は若い男と暮らしているのが佐々木基子。
本多菊次朗氏は水原香菜恵(おっぱい大きくて羨ましいなぁ・笑)の不倫相手でもある同僚として冒頭から登場、絡みだけでなく*泳ぐ姿*も見せてくれます。ひたすらダメダメな妻帯者っぷりが絶品。こうしてみると二枚目じゃん(失礼)な江端英久(@弟at兄嫁シリーズ・笑)と共演するシーンなどが見られて得した気分…。(2003.7.19.)


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発情家庭教師 先生の愛汁

2003年、製作・配給:国映=新東宝映画 製作:Vシアター135
監督:女池充、脚本:中野貴雄
出演:黒田笑、速水今日子、水原香菜恵、伊藤猛(謎の東洋人)、螢雪次朗、松江哲朗、川瀬陽太(風俗のボンクラな客)、小林節彦(喫茶店のマスター)、本多菊次朗(変な警官)、松原正隆、野上正義(路上の古本屋)、久保新二(米国大統領ジョー○・ブッシュJr.)、葉月螢(伊藤猛を追う某国のエージェント)、絹田良美(葉月螢の部下)

主人公(黒田笑)はイメクラで働く、気は良くて可愛いけどボーッとした風俗嬢である。たまたま入った喫茶店で、客同士の口論に巻き込まれてアジア某国の男(伊藤猛)に誤って頭を撃たれ、昏倒するものの、何故だか生きておりそのまま店を出てゆく。額に空いた風穴に気が付いてアイペンシルを突っ込んでぐりぐりしてみると、頭の中に残っている弾丸が脳味噌のどこかにぶつかって視界がスパーク。それ以降、物凄い勢いで哲学書や数学書を読みあさり始めるが、自分でもそれが何故なのかわからない。彼女はその後、とある哲学書を執筆した教授(螢雪次朗)の家に押しかけてその息子(松江哲朗)の家庭教師をしながら過ごしていたが、ある時、世界が滅亡の危機に瀕しているという某超大国の大統領からのメッセージが彼女の耳に響く。その声に従って自分のバッグを探してみると、謎の銀色の円筒形の物体が。その中には、世界の行方を左右する「大統領の指」が入っていた・・・。一方、某国の男もその「大統領の指」を探していた。じきに、彼は主人公の前に姿を現す。

まずは思い出話。私は学生時代に映画研究部というサークルに入っていた。そのため学生時代および大学卒業後しばらくの時期、もんのすごい勢いで自主制作映画を観まくっていたことがある。今もやってるかどうかわからないけど、その昔福岡では、各大学の映画研究部が製作した映画を持ち寄って上映する「シネマフェスティバル(通称シネフェス)」というささやかなイベントが市立美術館で行われていた。勢いだけで作ったちんけな特撮映画、青臭い心象風景を描いた学生独特の実験映画などなど、いずれも大変幼稚ではあったけどそれなりに面白く見ることができたし、今でも好意的に思い返すこともできる。
・・・そんなわけで、この「発情家庭教師 先生の愛汁」が、二十歳位の学生(with8ミリカメラ)によって作られた作品であり、先述の「シネフェス」で上映された映画であれば、もしかしたら私はこれをカルトな(←無責任で便利な言葉だ)快作と受け止めることができたかもしれない。だけどこの作品、商業的ベースに乗って作られ配給された大人の手による大人のための映画よね・・・??これで客に1800円も払わせていいのかなぁ?
観た直後にはあれやらこれやら感想はあったはずなんだけど、もうどうでもいいっす。

あ、一つだけ思い出した。この映画の中で数式とか西洋哲学者の名前とかがズラズラッと出て来る。私は全然理解できなかったけど、間違いなく演じている役者も理解できていない。たぶん書いた張本人の脚本家も監督も理解していないんじゃないかなぁ。「それっぽく聞こえるように、とりあえず羅列しとけ」みたいな感じがしないでもなかった・・・。

役者は大変豪華だけどもほとんどが友情出演レベル。本多氏にいたっては画面が暗くて顔さえはっきり見えません(あれだけの登場時間とは!)。なお、終盤に登場する葉月螢の「ひとーちゅ!ふたちゅー!」という微妙なかわいらしいカウントの仕方がこの映画の見どころと言えるかもしれない。(2003.10.18. 新宿国際名画座)


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濃厚不倫 とられた女

22004年、製作・配給:国映=新東宝、製作:Vシアター
監督:女池充、助監督:菅沼隆、脚本:西田直子
出演:こなつ、林由美香、石川欣、佐野和宏、福島拓哉、藍山みなみ

ヒロイン(こなつ)は三年越しの恋人(福島拓哉)との結婚を数週間後に控えているが、今のまま結婚していいのかという曖昧な不安を胸に抱いている。区役所に婚姻届けをもらいにいったとき、入れ替わりに、離婚届をとりにきた男がいた。その様子からもさらに不安がつのる。友人(藍山みなみ)にささやかなお祝いのディナーに招待された彼女は、その小さなレストランのオーナーシェフが、例の離婚届をとりにきた男(石川欣)であることに気が付く。その後ひとりでまたレストランを訪ねた彼女は、そこで衝動的に彼に抱かれる。一方で、男は家庭に不和を抱えている。親友(佐野和宏)から奪った妻(林由美香)との仲は冷え冷えとしており、彼女はうわべだけを取り繕おうとしている夫に不満を感じている。そんなこんなで、主人公と男はずるずると関係を続けることになり、そのうちに主人公の婚約者にその関係を知られてしまう。彼女は彼に結婚をやめたいと申し出た。

マリッジブルーに陥った若い娘が衝動的にとった行動が原因でほうぼうにものすごい迷惑がかかるという話。なのだけど、西田直子さんなので、その衝動的で身勝手な女の子の気持ちが大変細やかに描かれている。不倫相手となってしまう男も、演じている石川欣の存在感故かもしれないけど、なかなかに魅力的。彼の妻である林由美香のキャラクターもわかりやすい。
ただし物語自体はあまり面白くない。激しく起伏しているはずのドラマを淡々と描写するのは、西田直子氏ならではなのか、女池監督が意図してやっていることなのかはわからないのだけど、たとえば「多淫OL」はその淡々とした中にドラマティックさを私は感じたし、正直好きになれなかった「スワッピングナイト」だって、異様な緊迫感はあった。でも、この映画では「ふーん、で?」という感想しか抱けなかった。
途中まで見ているうちに、私はこの映画を、「惑いながら立ちすくむ男たちと、惑いながらも遮二無二行動してゆく女たちの話」なのかな、と思った。男たちは女たちの存在に巻き込まれてばっかりだし、女たちは後先考えずに行動して、痛い目にも遭うけども、それなりに逞しくてしたたかだ。ところが、ラストでヒロインが結局不倫相手と一緒になってしまうという展開になってしまうもんだから、一体これはどうしたこと?と思ってしまった。こういう時は、彼女は最終的に誰とも一緒にならない、というのが定石じゃないかしらん。不倫相手は、彼女が新たな一歩を踏み出すために必要だった踏み台に過ぎないはずだ。敢えて定石からはずれたかったのか、それともピンク映画だからとりあえず誰かとくっつけとかなきゃいけなかったのか、それともあのラストシーンで、どこにも行き場を無くした二人の絶望的な道行きを暗示したかったのか。うーむ。ワカラン。せめてオチに納得できていれば、私の評価はもうちょっと高かったかもしれません。(2004.11.23. 上野オークラ)


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