佐藤寿保監督作品(1)


ロリータ・バイブ責め

DVDタイトル「秘蜜の花園」
1987年、製作:獅子プロダクション、配給:日活
監督:佐藤寿保、脚本:夢野史郎
出演:木村さやか、伊藤猛、梁川りお、伊藤清美、須和野裕子、富山綾子、池島ゆたか

主人公の女子高校生、こずえ(木村さやか)が夜の街にビラを貼っている。行方不明になった同級生を探すビラである。その彼女を、私立探偵と名乗る若い男(伊藤猛)が呼びとめた。主人公は後日、彼に同級生を探して欲しいと頼むが、実はこの男は女子高校生を誘拐しては殺し、その瞬間を写真に収める変質者だった。彼女は男に監禁される。

佐藤寿保の映画なので、愉快な作品ではない。伊藤猛を見るぶんにはいいんだけど。(笑)しかもアレだ、レイプの次に私の嫌いな監禁暴行ものと来た。うげー。と、まあ、そんなこと言っても始まらないわけだし、それなりに面白い映画ではある。血塗られた女子高生の日常映画として。(どんなんや)
生と死の実感に乏しくて余計な自我と性欲ばっかりは発達してフラフラしている女子高校生(「母娘監禁 牝」と一緒だな)が、変質者と同じ意識を共有することになる。という話なのか。それとも、もともと女子高生とは変質的なものである、と言っとるのかもしれない映画である。(←やる気のない私)私にはあーんまりピンとこなかった。面白いとは思うけど。
ただ佐藤寿保の映画って、人と人とがコミュニケートしようとすると必ず流血であり暴力であり死でありが伴うのだな、というパターンは読めてきたような気がした。それでなければコミュニケーションできない登場人物たちが出てくる、というか。

池島ゆたかが冒頭にチラリと友情出演。伊藤猛はこれがデビュー作!!25歳の頃かあ!今以上に痩せている(笑)。特典映像で見られる佐藤寿保はたいへん柔和な雰囲気の方(伊藤猛のことをタケちゃんと呼ぶ)。ただしかなりリクツっぽく話す。この人があんな映画を。ふーん。佐藤監督・夢野史郎・伊藤清美のトークで「佐藤寿保の映画は終わらない映画だ」という話が出て、伊藤清美が「でもいつかは終わりたい」と言ったのがとても印象的だった。(2003.7.14.)


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狂った舞踏会

1989年、製作:獅子プロダクション 配給:ENKプロモーション
監督:佐藤寿保、脚本:夢野史郎、助監督:瀬々敬久
出演:伊藤猛、隈井士門、鈴木裕、伊藤清美

主人公(伊藤猛)はボディビル雑誌の編集者。ボディビルのイベントのチラシを街頭で受け取り、ふと立ち寄ったその会場で、美しい肉体を持つ男(隈井士門)に物狂おしく心惹かれる。二人はすぐに関係を持つようになるものの、そのうち男はセックスの際サディスティックに主人公をいたぶるようになり、からだで応えつつも精神的に追い詰められた主人公はある日、日本刀で男の右腕を切り落とす。1年後、出所してきた主人公はホルマリン漬けにして美しく姿をとどめた右腕を抱き、男の姿を捜し求めて夜の街を徘徊する。やがて奇妙なSMグループと男が関係していることを知った主人公は、廃墟となった映画館で行われる妖しげな集まりで男と再会する。自分のからだの美しさを永遠に傷つけたことを責める男の声を聞き、主人公は「美しかった君の体だけを記憶にとどめるため」、男の差し出した日本刀で自分の目をつぶす。

佐藤寿保監督、初体験。そして伊藤猛主演作が続きます。
パゾリーニの映画がモチーフに使われ(てるらしいがパゾリーニの映画を熱心に観ていない私には今ひとつピンとこなかった)、かつ最後は谷崎潤一郎の「春琴抄」で〆る。うーんなんというか・・・・耽美だ。(笑)正確には、「耽美なんだろうな、きっと?」という感じだ(笑)。マジメ〜に撮られているだけに、最初から終盤近くまで「んなことあるかい!」「そりゃいかんやろ!」「ていうか痛いって!」と身もふたも無いツッコミを入れながら観てしまったのだが、最後の最後、目をつぶした主人公を男が優しく抱き、埠頭で踊るシーンには、なんだか崇高なロマンを感じてしまったのだった・・・。でも痛いのは勘弁して〜。ちなみに二人が踊るシーンが最初と最後に二度あり、終盤、二人がめぐり合う怪しい集会も舞踏会という形をとっている。これがタイトルの所以。
裸も絡みもしっかりあるし、好きな男を失って自虐的になった青年主人公が夜痛ましくふらつくシーンもあるし、肉体的にも精神的にも痛いのが好きな人にはたまらないかもしれません。言うまでも無く鍛えられた体も登場します。

ワタクシは主人公を演じる伊藤猛があまりに清楚(笑)なのでビックリ。可愛いよう!しかし映画は彼のモノローグが中心なのですが、この人、ちょっと語り口が特徴的なので、残念ながらあまりモノローグには向かないかも、とも思いました。他の映画も観てみないとわかりませんが・・・。あと彼の相手役の隅井士門という人、セリフ回しが妙に舞台っぽかったのは気のせいかしら。(2003.1.13.)


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狩人たちの触覚

1995年、製作・配給:ENKプロモーション
監督:佐藤寿保、脚本:南木顕生
出演:吉本直人、伊藤猛、田中要次、伊藤清美、平岡きみたけ、川崎浩幸、佐々木恭輔

全身を縛られて絞殺された上に局所を切り取られた男性の全裸死体が次々に見つかる。私立探偵をしている元警官の主人公(吉本直人)は昔の同僚だった刑事から、この連続殺人事件に関する情報提供を求められた。折しも彼は、学生時代ラグビー部のチームメイトであり、現在はセラピストをしている元恋人(伊藤猛)が失踪した、と知らされていた。この男にはセックスの際に相手を縛り首を絞めるという性癖があり、彼との関係を心身共に引きずり続けてきた主人公は不穏なものを感じながら彼の行方を追ううちに、『読心術(たぶんこれが「狩人たちの触覚」)を使える』と自称する男(田中要次)が接近してくる。その男の謎めいた言動の影に元恋人の存在を感じ、翻弄されながら、主人公はますます昔の関係を心と体の中に蘇らせてゆく。

・・と、自分の中で整理するためにいつも最初にストーリーを書きだしているんだけども、この話は、書いていてもなんか違うような気がする。というかたぶん間違ってる。(笑)それだけわかりにくいのだ。見てる間はわかってるような気はするんだけども、時間がたつとよくわからなくなってしまう。この映画、とにかく全体的に説明不足なところが、自主制作映画にありがちな『見る者に不自然な想像力を強要する』域にまで達していて、なんかうっとおしい気分になった。例えばデヴィッド・リンチとかクローネンバーグとかの映画だと説明不足なところが心地よく、物語の余白を自分の想像力で埋めてゆくのが楽しいんだけど、この映画はあまりに余白が広すぎて、しかも余白の前後の展開が少々かけ離れすぎていて、「もういいです。」てな気分になってしまったのだった。せっかく伊藤猛氏が美味しい役どころだったのに。(笑)

「狂った舞踏会」に続いて佐藤寿保監督作品。そして「狂った〜」と同じく、縛りにSM、暴力と血(死)の匂いが濃厚な映画だった。佐藤監督ってこういう世界が好きな人なのかな。しかもラスト近くのクライマックスでは「狂った舞踏会」と同じく、しっかり情緒的に盛り上がり(笑)ロマンティックな純愛ムードに高まるんだけど、これはたまたまなのか、いつもそうなのか、どうなんだろう。ま、二本だけで判断しちゃいけませんな。
(これ黒沢清が撮れば面白かったかも。というか「CURE」に一瞬似てる部分があるんです。ほんの一瞬ですが。笑)(2003.1.14.)


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仮面の誘惑

1987年、製作:獅子プロダクション、配給:ENKプロモーション
監督:佐藤寿保、助監督:瀬々敬久、脚本:夢野史郎
出演:佐野和宏、碓田清司、萩尾なおみ、池島ゆたか


連続放火事件が起こる。火が付けられたのは壁の白い家ばかり。一人の少年(碓田清司)が逃走するところを目撃され、取り調べられる。彼は拳銃を所持していた。取調室で対峙する刑事(佐野和宏)に、少年は一つの提案をする。その拳銃に一つだけ弾丸を込め、お互いに自分のこめかみに銃口を押し当てて引き金をひくのだ。一回終わるごとに、一つずつ、話をしてあげる…。同意して信頼を勝ち取った刑事に対し、少年は少しずつ話を始める。結婚した姉(萩尾なおみ)の元に居候している話。その姉の下着を身につけているところを義理の兄(池島ゆたか)に見られ、犯された話。おそらく知っていながら見て見ぬ振りの姉。義理の兄との関係はサディスティックなものに変貌してゆき、だんだんと、姉夫婦に殺意を募らせてゆく自分…。命を賭けながらその告白を聞いている刑事は、最近恋人を失って気持ちが虚ろになっていた。だんだんと、目の前の少年に、妄想に似た執着を感じるようになってくる…。

DVDにて鑑賞。そうですか、今は「ボーイズラブコレクション」ってレーベルがあるのね。はー…これって女の子向けを狙ってるのよね、多分?でも、これは確かに、その範疇に入るかもしれない。主人公を演じた碓田清司は、時折(ほんのたまにだけど)雰囲気のある美少年に見える(←松田龍平を「御法度」で美少年と思った人には、少なくともそう見えるかも)。そして物語も、絡みは勿論、心理的葛藤の部分を多く描いているから、ボーイズラブ好きな女の子には受けるかもなー。美しい姉を愛し、彼女になりたいとさえ願う少年の狂気。そして彼にのめりこんでゆく刑事………とか書くとステキだし。

私はこれまでに佐藤寿保のゲイムービーを計3本(これと「狩人たちの触覚」「狂った舞踏会」)みたけど、その中では比較的わかりやすい映画だった。他の作品と同じく、観る者に想像力を無理強いする(笑)部分が相変わらずあるものの、まだその余白を読みとる作業が楽しめた気がする。そして強引な私の解釈かもしれないけど他の2本と同じく、やはりこの映画のクライマックスもまた、ロマンティック(という表現は適切でないかもしれないけど)。といっても、これは大変悲劇的で、無惨なクライマックスなのだけども……。少年の話に耳を傾け、全てを理解し受け入れたかに見えた男(刑事)が、最後の最後に発した一言で全てが瓦解する。私達は映画を観ていくうちに冒頭で描かれる雪の中のとあるシーンを思い起こし、ああ、もしかしてあれが少年の動機に関わっていたのか、と気づかされるのだけども、映画の中では誰も少年の思いを理解し得ないまま物語が終わる。なんとも悲劇的な余韻が残った。

池島ゆたか&佐野和宏が若い。当たり前だけど。(笑)(2004.4.2.)


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