2004年、制作・配給：国映＝新東宝映画
監督・脚本：いまおかしんじ、助監督：伊藤一平
出演：林由美香、吉岡睦雄、華沢レモン、栗原良、伊藤清美、伊藤猛、川瀬陽太

今岡信治監督作品、初体験。うーん微妙。釈然としない映画だった・・・。

主人公（林由美香）はボウリング場で（たぶんインストラクターとして）働く、おとなしいけどちょっとお茶目な女の子である。ボウリング場の支配人（栗原良）から誘われてあっさり関係を持ったりして少し落ち込んだりするのだが、家に一人帰れば大切にしているボウリング玉が「ストライク、一発！」と声をかけてくれるので気が晴れたりもする。そんな彼女には郵便局員の彼氏（吉岡睦雄）がいて、毎朝かいがいしく弁当をもたせてあげたりしている。ところが彼女の熱心さをうとましく感じ始めていた彼氏は職場のちょっと強気で高飛車な同僚（華沢レモン）と関係を持ち、こっちのほうがいいから、と主人公をあっさりと捨てる。同時に、可愛がってくれていた支配人との関係もその奥さん（伊藤清美）の知るところとなり、「別れて」と言われてしまう。ひとりぼっちになった主人公はそれでも二人分の弁当を作って出かけてその弁当を一人で食べるが、ある日、別れたはずの彼氏から電話がかかってくる。結婚することになったから、もう会えないから、最後に一度だけ会いたい・・・。

ヒロインの林由美香はラストシークェンス以外ではひとことも喋らない。多分本当は喋ってる設定なんだけど観客にはそれはわからないことになっている。彼女の感情は全てボディーランゲージで表現される。イライラしたら地面を踏みならしたり、照れ隠しに「ウキッ」とお猿さんなポーズをとってみたり（たぶんこれが可愛くて許されるのはーといってもかなりギリギリだとは思うけどー林由美香だからだろうなー。他の人にはできないだろうな）。そのうえ音楽もないし登場人物みんなぼそぼそ喋るし映画館の音もそんなに良くないし、で、とっても淡々とした雰囲気の映画だった。
不器用な女の子が精一杯尽くしたはずの男に捨てられて、（以下反転）その男を衝動的に殺してしまうという話。なのだと思う。でもなーどうなのかなー。彼女の感情や気分を左右する謎のボウリング玉（どこかのプロからもらったサイン入りのボール）の存在意味があまりピンとこなかった。これが物語の鍵なんだろうけど・・・。ありがちかもしれないけどこのボウリング玉に励まされて次の新しい一歩を・・とかしてくれたほうが、まだ気分はスッキリしたかもしれない（お子さまちっくだけど）。それとも彼女の中の鬱屈した感情を表現していたんだろうか。
ヒロインの男をとってしまう女（華沢レモン）の造形もよくわからない。ひたすら待って尽くす主人公と違って、命令口調の女王様として存在しているようだから、たぶん対照的なキャラクターとして描かれているのだろうとは思うけど、きちんと機能しているようには感じられなかった。

私はこの映画を観ている時、たぶん20代の女の子の設定だろうと思っていた。林由美香だからそれくらいの役だとしても不思議じゃないんだもん。でもP.G.さんの映画紹介のところでは35歳ってことになっていた。ゲッ、そしたら私の印象と全然違う。そういえばタイトルに「熟女」ってついてはいるけど・・・。
そんなわけで、「○○なんだけど・・・」とどこの部分についても口ごもってしまう、私にとってはちょっと困った映画だった。
2004年3月14日、新宿国際名画座で鑑賞。彼氏の同僚でロンゲの伊藤猛とサーファーな川瀬陽太がくだらない話をするシーンで、一人のオヤジさんが気持ちよさそうに笑ってた。