ビデオタイトル「愛欲温泉 美人仲居お尻でサービス」
1999年、製作:国映=新東宝映画、配給:新東宝映画
監督:サトウトシキ、脚本・原案:小林政広、音楽:山田勲生
出演:葉月螢、飯島大介、佐々木ユメカ、川瀬陽太、本多菊雄、沢田夏子、野上正義、風間今日子
夏の終わり近く、山間の小さな温泉宿に一人の女(葉月螢)が住み込みの仲居としてやってきた。旅館の主人(本多菊雄)から好印象を持たれ、先輩仲居(佐々木ユメカ)とも馬が合い、よく働くのですぐに皆に馴染む。ある日休暇中の刑事(飯島大介)が愛人と共に宿を訪れた時、たまたま接客した主人公の顔をどこかで見たと思い出す。その場では何事もなく終わったものの1ヶ月後に刑事は一人でまた旅館に現れ、彼女の過去をちらつかせて脅し始める。
基本的にコメディタッチだった「団地妻」シリーズと、「迷い猫」「青空」のような犯罪者告白モノとの、ちょうど中間にあるような作品だという印象。周囲の人間同士のやりとりは「団地妻」のようにユーモラスだけども、過去を引きずる主人公の行動は「迷い猫」「青空」より遙かにもの悲しくやりきれなく、しかし同時に大変共感しやすく、効果的に使われる風に揺れる山の木々の描写や虫の声、温泉の水音などと相まって、古風にメロドラマチックにすら感じられるサスペンス映画になっている。なんたってテーマ曲は葉月螢がヘタクソにカラオケで熱唱する演歌(山田勲生のオリジナルだ。しかも2曲もある)。この歌詞が実は彼女の人生を語っており、映画の最後に再び温泉街を去ってゆかねばならなくなった葉月螢の後ろ姿にこの演歌がかぶさる時、音程の少し外れたか細い彼女の声が何とも哀しげで切ない余韻を残す。風格のあるメロドラマ調サスペンスを見終わったような気分になったのだった。
ただ私は、この映画での主人公が絡むセックス描写が嫌いなので、あまり好きにはなれない。葉月螢の絡みは3つあるんだけども、そのうち2つは刑事に強要されたと言って良いセックスだし、もう1つは回想として描かれる、有る人物によるレイプ(だと思う)。これはピンクだし、映画の筋としてまあ描かれるべくして描かれた性行為のパターンだとは思うけど、こーゆー女からみて最低な「心からの合意なし」の性行為が男性諸氏の性的満足を得る目的で描かれるというのは、わかっちゃいるけど決して愉快なことではないのだった。しかもその相手が飯島大介だというところが私の心証を悪くした。というか飯島大介だからイヤだったのかもしれない(笑)。過去をネタに逮捕するわけでもなく性行為を強要しつつ、「なにやってんだオレ」とぼやき続ける、面白いキャラクターではあるんだけど。
本多菊雄氏は旅館の若い主人。ちょっといい感じの新人が来てウキウキして、カラオケに連れていってやったり不器用に夜這いをかけたりする気のいいニイさん(笑)。「団地妻」キャラの延長上みたいな感じ。「仲良くしながら結局主人公を何も知らないままで終わる」というこの人物が可哀想でもあるし、同時に救いであるようにも思えた。彼がカラオケスナックで熱唱する葉月螢の歌を聴いているシーンがとても良いです。
主人公を理解する自分もワケありっぽい仲居が佐々木ユメカ。この人さっぱりした雰囲気なのに絡みはすごく可愛くエッチでいいですね。同じく、主人公の苦境を知り同情する旅館の居候(風呂炊き担当・司法浪人中・佐々木ユメカといい仲)が川瀬陽太。
つくづく、飯島大介以外は本当にどのキャラクターもナイスな人柄だった。(笑)