ときめきBeach Side


 輝く白い砂浜では、パラソルが大輪の花を咲かせている。肌も露わな水着姿の女子が行き交うビーチは、まさに楽園。しかし、一番の目の保養と言えるのは、幼馴染みの水田まりである。買ったばかりだというフリルが愛らしいビキニのピンクがよく似合う。水着に合わせたのか、ピンクのシュシュで軽くまとめられた髪は、普段は隠れている項を露わにしていて、それだけで心拍数が上がる。

「この水着、似合わない?」

「似合うよ、凄く。神様にカンシャしたいくらい」

「大袈裟だなぁ、琉夏君は」

 幼い頃、ほんの僅かな間だったけれど一緒に遊んだ水田まりは、桜井琉夏の幼馴染みであり、今にして思えば淡い初恋のようなものを抱いた相手だったかも知れない。その後、水田は遠い町に引っ越してしまったが、高校一年生の春に再開を果たした。成長期の数年という季節と少々荒れた生活を送り、琉夏と琥一は随分と変わってしまっているのだが、水田は子供の頃とは変わらない。入学式の前日、思い出の教会で再開した時も、琉夏にはすぐに水田がわかったほどだ。それでも私服――特に水着姿だと水田の成長は著しく、目の毒になる一歩手前の眩しさである。

「琥一君も一緒だったら良かったのに」

不意に水田が呟く。

「俺だけじゃ、寂しい?」

本来なら三人で来るはずだったのだが、琥一はバイト仲間から急にシフトの交代を頼み込まれ、人の良さかと逼迫する家計の絡みもあって、致し方なく今頃は汗と油にまみれているのだろう。

「琉夏君がいるから寂しくないけど、いつも三人だからかな? 変な感じ。ちょっとだけだけど」

「そっか……そうかも。でも、今日は俺とデートだから」

「うん、泳ごう!! 琥一君の分も」

「よし、行こう!!」

◇◇◇

 二人して共にひとしきり遊んだ後、海の家で買った昼食代わりの焼きそばを頬張っている時、ふと、水田の視線を感じた。

「何?」

「琉夏君、髪も眉毛も金色に染めてるのに、臑毛は黒いままだね? どうして?」

 思いがけない言葉に、琉夏の箸が止まる。

「どうしてって……変?」

「そうじゃなくて、素朴な疑問。というか、琉夏君もおしゃれさんだから、全身キメてるのかなって」

 そう言われてみれば、そうかも知れないと思いながらも、ツッコミどころはそこかよと呆れる琉夏である。まぁ、いいか、などと思い直し、琉夏は水田に問うてみた。

「臑毛、気持ち悪い?」

「ううん、全然。お父さんの臑毛、もっと凄いから平気。というか、琉夏君は臑毛、薄い方だよね」

「薄くも濃くもないと思う……けど」

「そっかぁ」

「エステで脱毛した方がいい?」

「それはダメ!」

冗談めかして言った言葉に、思いがけない水田から発せられるダメ出しに、不覚にも琉夏が怯む。

「脱毛するくらいなら、臑毛とか胸毛とかが似合うくらい身体を鍛える方がいいよ、絶対」

「絶対?」

「そう、絶対。男子の体毛にはムダ毛はありません」

 妙に自信満々に言い切った後、体毛に関する持論を立て板に水といった具合に続ける水田に、思わず侠気を感じてしまった琉夏であった。そして、水田に対して抱いていた“いたいけな少女”というイメージが意外な方向に修正された瞬間でもあるのだけれど、それは不可思議な胸のときめきを伴うものでもあった。


髪を金色に染めてる琉夏は、眉毛も金色にしていますが、
でも、きっと臑毛はノーチェックだ(笑)。

そして、プレイヤーの性質を反映してるうちのバンビはタイモースキー(笑)。
「男の体毛にむだ毛はない。但し、鼻毛は覗く」は、旧友の名言です。
というか、その通りだと思います。


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