はば学下馬評 Girl's Side


桜井兄弟の場合

「琉夏君、琥一君!」
「まりちゃん、どした?」
「おう。相変わらず、賑やかなヤツだな」
「あのね、お祝いを言いにきたの」
「お祝い?」
「女子でね、エプロンの似合う男子ナンバーワン投票があったの。
 で、琥一君が“おふくろさん”で一等賞だよ。おめでとう!」
「ああ? “お袋”だぁ? 何だ、そりゃ」
「だな。コウみたいにでかくて、こえー顔のお袋なんて、いねぇよな」
「見た目じゃなくて、琥一君、何だかんだ言っても面倒見、良いからじゃない?
 それに、結構心配性だし。見るからに度胸もありそうだから、肝っ玉母さんだね」
「ああ、度胸はあるよな、コウは」
「お前ら……勝手にまとめてんじゃねぇよ。おい、琉夏はどうだったよ?
 こいつにも、何かあんだろ?」
「え、俺?」
「うん、琉夏君はね、“裸エプロン”一等賞!」
「何だそりゃ? “裸エプロン”だぁ? ケッサクだな」
「何で? 俺、裸で歩ったりしてないじゃん」
「琉夏君、しょっちゅうオヘソ見せて、やんちゃしてるからじゃない?」
「なるほどな。そりゃぁ、しゃーねぇな。自業自得ってヤツだ、なぁ?」
「えーっと、あと、セクシーなんじゃない? 琉夏君」
「全然、嬉しくない」
「そんなこと言わないの。ほら、私から一等賞のお祝い、あげるから」
「マジ?」
「うん。琉夏君には新婚さん仕様のフリルたっぷりエプロン。
 それから、琥一君には真っ白な割烹着。お家で使ってね?
 あ、私、次は移動教室だから、もう行くね?」



「コウ……」
「何だよ」
「“ママ”って、呼んでいい?」
「ぶん殴るぞ」
「なぁ、これ、どうする?」
「知るかよ、ンなもん」
「だよな」
「ったく、つまんねーこと、しやがって」


先輩'sの場合

「紺野先輩、設楽先輩!!」
「やぁ、水田さん」
「何だ、騒々しい」
「設楽、そういう言い方は良くないって言ってるだろ?」
「コイツは気にしてないぞ?」
「はい、もう慣れました!」
「設楽……水田さんも、設楽を甘やかしちゃぁ、いけないな」
「で? 何か用か?」
「あ、そうだ。おめでとうございます。紺野先輩、設楽先輩」
「おめでとうって、何かな?」
「はい。女子の人気投票で、先輩達が一等賞です」
「一等賞……何だ、それ?」
「紺野先輩が二世帯住宅で暮らしたいお姑さんナンバーワンで、設楽先輩が同居したいお姑さんナンバーワン。私、嬉しくって」
「……待て。俺達は男だぞ? 何で姑なんだ。大体、姑って何だよ。勝手に人を女にするな。不愉快だ」
「おい、設楽……」
「だって、男子達だってやってるじゃないですか。お姉さんとかお母さんとか。おあいこですよ、これって」
「だからって、悪趣味な遊びに巻き込む必要はないだろう」
「まぁ、まぁ、設楽。ところで、水田さん。どうして僕らがお姑さんなんだい? 舅ならわかるけど」
「お舅さんよりお姑さんの方が、女の人には身近ですから。ほら、嫁姑問題って永遠のテーマだったりするし」
「まぁ……そうだけど。ちょっと、複雑な気分だよ」
「紺野先輩は良いお姑さんだけど、良い人すぎて近寄りがたい感じなのかな? でも、困った時には頼りになるっていうか」
「じゃぁ、設楽は?」
「設楽先輩は、さっきみたいに漫才ができるから? あと、遠慮しないで言いたいことが言えるとか……」
「漫才って……俺に好き勝手言うのは、おまえらくらいのものだと思うぞ?」
「ほら、こんな風に言われると、遠慮なく応戦できますよ?」
「ああ、なるほどね」
「何を納得してるんだ、紺野。水田、おまえも勝手に人を相手に漫才とか言うな。まったく、悪趣味にも程があるぞ。いや、くだらないの一言に尽きる」
「設楽……」
「ふふっ。やっぱり、設楽先輩は楽しいですよ」
「…………。全然わかってないな。……そうか、紺野と同居できないのは、さっきから細かいことをゴチャゴチャゴチャゴチャ言ってくるからだな。そういうのが面倒だから、紺野との同居は真っ平ごめんという訳だ」
「えー」
「えー、じゃない。そうなんだろ? 結局。どうでもいいことに細かくて、始終小言を言ってそうだから、同居ができないんだ。本当は別々に暮らしたいけど、妥協と譲歩が二世帯住宅を選ばせるんじゃないのか?」
「それ、どういう意味だよ」
「率直な意見だ。拝聴しろ」
「ゴチャゴチャ言ってるのは、設楽の方じゃないか。だいたい……」
「ああ、もう、うるさい! 水田、おまえがこんな話を持ち込んできたのが悪い」
「彼女のせいじゃないだろう」
「……おい、責任を取れ」
「責任……ですか? 私?」
「そうだ、責任だ。俺達にこんな話を聞かせたんだ。それくらいは、しろ」
「じゃぁ、これ。お祝いにと思って持ってきたんです。どうぞ」
「何だ、これ?」
「開けてからのお楽しみです。あ、予鈴ですね。私、失礼します」



「設楽。何、もらった?」
「ご長寿梅干し」
「長生きしろって、ことだな」
「おまえのは?」
「知恵の輪」
「惚けるなって、ことか。惚けまくってるのは、アイツの方じゃないか。何だよ、これ」
「まぁ、いいじゃないか。せっかくの気持ちなんだし、ありがたくもらっておけば」
「どんな気持ちだよ」


柔道部の場合

「お、来たな、マネージャー」
「まりさん、ちょりーっす」
「ちょりーっす。不二山くん、ニーナ君。あのね、聞いて、聞いて」
「ナニ? 何か、良い話?」
「すっごく」
「何だよ、聞かせろよ」
「あのね、女子の人気投票でね、不二山君が“お化粧乗りが好さそうな男子”ナンバーワンになったんだよ」
「あ? 何だよ、それ」
「だから、女子の人気投票で……」
「化粧って何だよ。そんなの、女がやるもんだろ」
「まぁ、まぁ、嵐さん。えーっと、ほら、ビジュアルバンドのメンバーも、メイクしてますよ」
「それは、仕事だろ?」
「不二山君、嬉しくない?」
「ない。つーか、興味ない」
「つまんないの」
「あーははは……。えーっと、まりさん。オレは? オレ、エントリーとかもなし?」
「ニーナ君は、“お化粧してほしい人”だって。センスが認められたって、感じ?」
「それ、マジ嬉しい」
「ホント?」
「ホント、ホント」
「おい、二人とも。練習、始めんぞ」
「押忍」



「まーりさん、一人?」
「不二山君、日直だからね。もう少しかかるかな」
「やっりぃ。じゃぁ、さ。今のうちに見て見て、オレの力作」
「力作? 何?」
「嵐さんの、メイクしたとこ。この間の練習試合で撮った写真を、画像ソフトでちょちょいっていじってみました」
「ホント? 見せて、見せて!! あ、美少女だ」
「でっしょー? オレもびっくり」
「不二山君って、目がパッチリしてるから、アイメイクで凄く変わるんだ。あー、こっちのギャル系、すっごく似合う」
「ところが、こっちの大人モード系。見て、びっくり」
「あ、何、コレ。色っぽい、というか、フェロモン系っていうか……目力が凄い」
「あと、ナチュラルガーリー系もイケてる。てゆーか、マジでヤバイ」
「うわ、ホントだ。不二山君、アイドルみたい」
「えー、凄いのは嵐さんだけ?」
「ニーナ君も凄いよ。さすが、“お化粧してほしい”一等賞!!」
「へへーん。もっと誉めて?」
「エライ、ニーナ君。柔道部、期待の新星!」
「ハハハッ!! アンタに誉めてもらえるのって、すっげー嬉しい」
「お前ら、何やってんだ? ん? 何だよ、これ」
「うわっ。嵐さん!」
「ニーナ君がね、作ってくれたんだよ。不二山君、どう?」
「どうって……別に、どうでもいいけど」
「もっと喜ぼうよ。せっかくニーナ君が作ってくれたんだから」
「男の化粧した顔なんか見て、何が嬉しいんだよ……けど、そうだな」
「何ですか、嵐さん」
「お前、来年の新入生勧誘ポスター作れ」
「え? オレ?」
「パソコンで、こんだけできるんだから、できるだろ? 頼んだ」
「うん、ニーナ君のセンスなら、きっと新入部員が増えるよ」
「そっかな……」
「ああ、増える。だから、頼むぞ」
「押忍。オレ、頑張ります!!」


“お姉さん”とか“お母さん”“嫁”の称号は男子の下馬評だと思う。
だったら、女生徒が男子の人気投票したっていいんじゃね?
というわけで、個人的なイメージを称号にしてみました。

あと、個人的には攻略キャラの最終スペックを見てみたいです。
「あんたら、そこまで人に要求するんやったら、それなりやねんろうな?」
などと、別に考えてないですよ、ええ、ええ。
でも、興味あるんですよねぇ。


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