リベンジ・北海道紀行―2―
午前4時。船は小樽に入港。夜明けまでには少し早いくらい。ミツグさんと待ち合わせてるターミナルビルの駐車場で一休み。
実は今回の旅程の初日には、ミツグさんとピーさんと温泉で遊ぶことになってまして、当日の宿泊地は留萌の新神岩温泉(しんかむいわおんせん)です。小樽からはおよそ150キロ。宿のチェックインは午後3時。そこここの町に立ち寄りながら走れば、丁度いいくらいの距離かと思って設定しました。単独走行の時には1日の総走行距離は200キロを上限にしてるし、3人で遊びながらやったら距離は短めにしたらええと考えたんですが、これが大きな誤算。
空きっ腹を抱えた3人で朝食のためにファミレを探すものの、朝早すぎてどっこも店が開いてないので、松屋で朝食。朝っぱらから食う食う。ちなみに司書は朝定食をぺろりといただきました。
小樽から留萌方面に向かう国道231号線(ニックネームは日本海オロロンライン)をひたすら北上する。コンビニでトイレ休憩とかタバコ休憩とかお茶休憩とかとりながら、かなりのんびり留萌を目指す。小樽から留萌まで150キロ。フラフラと観光しながら走れば、午後に留萌到着。中心街でお昼でも食べて、そっから宿に荷物を預けて改めて観光に出る予定で、チェックインは午後2時にしておりましたよ。なのに、どういうワケか午前9時に留萌着。あんまりにも出発が早すぎたらしい。とりあえず、荷物だけ宿に預けることにして宿へ向かう。
新神岩温泉という、ガイドブックで見つけた由緒があるらしい温泉の宿泊施設を使うわけですが、これがまたやる気がないっつーか(笑)。国道沿いに一応立て看板があるんやけど、曲がるべき交差点を越えたところにあるもんやから行きすぎるし、その後に見つけた看板も方向の指示がございません。一応、1キロ先に目的地があるらしくて、その先には交差点もあるんやけど、どっちに行くかを書いてない親切心のない看板てどうよとか思いつつ、住宅街とか迷いながらも消去法で道を選びながら(こっち間違いやから、次はこっちという感じね)、ようよう宿を発見。
第一駐車場より第二駐車場のほうが建物に近いとか、崖っぷち駐車スペースに柵がないとか、駐車場のアスファルトが所々妙に盛り上がってるとか、歩道の敷石が乱雑に盛り上がったりはずれたり落ち込んだりしてるとか、実にやる気の感じられない第一印象。でもフロントのオッチャンはやたらとフレンドリーで、こちらが大阪の人間と知ってか知らずか、絶妙なタイミングでボケたり突っ込んだりしてくれる。道北の道路地図をもらい、近場の(といっても車で移動できる程度)観光スポットを尋ねてみたが、
「ないですよ。何にも。黄金岬と……もっと北に行けばそれなりにありますけど、でも、基本的に何もないですねぇ」
と、フレンドリーな笑顔できっぱりと言われたりして、そんな商売不熱心なことでええんかとか思ったり、でも今まで見た看板らしいかと微笑ましくなったり。
とりあえず荷物を預けて、ミツグさんの車で出発。目指すはロウソク岩と旧花田家鰊番屋(道の駅も併設)。到着までに昼食を摂ることになって、やはりここはウニ丼だろう。実は2年前、数十年に一度の異常気象『蝦夷梅雨』に遭遇して、それがまた、とんでもない大雨で食事どころか観光もろくにできなかった苦い思い出を持つ身としては、本場の新鮮なウニ丼(できればウニクラ丼)を熱望。けど、10時じゃまだお店が開いてないので観光を先に済ませることに。
んでもって目指した旧花田家鰊番屋の売店横の食堂にはウニ丼がある。なのに!! しかし!! 旧花田家鰊番屋横の『道の駅おびら鰊番屋』の食堂でウニ丼を食べるつもりで土産物を冷やかして時間をつぶしてみたものの、いつまで経っても食堂は準備中で、昼時を狙ってやってくる団体さんのため、一般客はいつ食事ができるかわからんらしいと言われたので、仕方なく先に進むことに。
ホテルのオッチャンお勧めのロウソク岩は波による浸食のせいか折れて水没。今では普通の岩になってた。
走行中もウニクラ丼の店を探してみるが見つからず、そうこうしてるうちに羽幌町に到着。羽幌港からは焼尻島と天売島へ渡るフェリーが出ておりまして、そこは天然記念物のオロロン鳥の生息地だか繁殖地です。風がびゅーびゅー吹いてます。波もけっこう高い。そして船はけっこう小さくて、フェリーがかなり揺れるだろうと予想されたので島に渡るのは諦めて、無駄なほどに巨大なオロロン鳥と記念写真なんか撮ったり、売店を冷やかしたり、シュールなアザラシの頭部剥製を眺めたり。売店の売り子さんの話だと、最近は近畿や名古屋方面からの観光客が多いとのこと。
港で海鳥(多分かもめ)を眺めて和んだりしてるうちに昼を過ぎたので、再びウニ丼を求めて車を走らせてみる。羽幌の道の駅の向かいにある、お世辞にも立派とは言えない店でウニクラ丼を食べる。
美味い。まじ、美味い。ウニが甘い。普通に流通している生ウニの場合、保存性を高めるためにミョウバンを使うらしいんだが、さすがに地元で取れてた未加工のウニを使ってるので、妙なクセがないしで感動。イクラ特有の生臭さもないし、美味い!! 小鉢と煮魚がついて1500円。安い。嬉しいとか思ってたら、実はご飯の上のイクラは邪道の塩漬けであり、本来は醤油漬けであり、それ以外は邪道なのだとピーさんとミツグさんに諭される。さすが、地元のお方は舌が肥えてるってーか、でも大阪出身の私には美味しかった。特にウニ。
帰りには旧花田家鰊番屋を見学して、ソフトクリームを食す。生乳がたっぷり使われたソフトクリームは乳臭くて、べらぼーに美味しい。こんな道っぱたのくせに、この味は……!!
旧花田家鰊番屋は見所が一杯でした。特に便所ね。白地に青い顔料で模様が描かれた金隠しはハイセンスで贅沢な逸品だと思う。今時の大量生産品にはない味がある。思わず見入る。鰊漁に雇われていた人達は中二階の、今で言うならロフト部分で寝てたらしいですが、そのへんに古い古い落書きがあったりして、なんか親しみを覚えた。
夕日の名所・黄金岬に行くには早い時間だったので、留萌市街地でカラオケボックスを求めてさまよう。探しても探してもないっつーか、見つけられません。日が沈むまでに暇つぶしもできないので黄金岬は明日見物することにして宿へ戻る。
部屋でちょいと休憩してから温泉三昧。三十路を越えると肌もお湯をはじきません。自慢にもならない胸骨とあばらを見せて笑いをとったり。温泉から出てダラダラして、7時から夜ご飯。料金から考えれば妥当な食事でしたが、ウニ汁だけは許せないと三人の意見が一致。新鮮なウニは生が一番やろうとか、こんな料理の仕方じゃ妙に生臭いとか言いつつも、全員残さず平らげる辺りがなぁ……(笑)。因みにミツグさんとかピーさんと食事をするのは、大食らいの己を恥じなくてすむので好き。特に旅行中は何故かやたらと空腹感を覚えるもんですから。
9時から国営放送で『お登勢』を鑑賞。目当ては仮面ライダークウガで一条刑事を演じた葛山さん。20年くらい前の少女漫画風の色男で、そのせいか丁髷がお似合い。絵に描いたようなロマンスに眩暈を感じながら、3周目の年女の沢口靖子が十代の少女を演じるのはどうよとか、どうでもいい話に花を咲かしたり。んでもって、寝る。
翌朝、ミツグさんと朝風呂。ピーさんとはタイミングが合わなくて、一緒にお風呂できなくて残念。朝食のために食堂に行く。朝から大食らいの三十路淑女。やっぱり日本人は白い米やんなとか言いつつ、たらふくいただく。
黄金岬ではチラホラとフナムシがいた。なのにミツグさんとピーさんは大群と呼ぶ。岩肌が見えなくなるくらいでないと大群とは言えないというと、嫌な顔をされる。
午前10時頃、ミツグさん達とお別れして北を目指すことに。
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