安曇野


実は長野県には縁が薄いみたいで、高校の修学旅行の栂池(確か信州方面)に行ったきりでした。同居人は東京で暮らしてた頃、秋になるとバイクで出かけてたらしく、夏頃から秋になったら安曇野だー、乗鞍スカイラインだーとか言ってました。

んで、9月22日、23日に行ってまいりました。

近畿道から東名高速、中央道、長野道を経て松本市内に入るわけですが、この間、時間にして7時間。およそ450kmを走りましたよ、ええ。松本インターを降りた時、同居人のバイクがパンクしてたりして、てんやわんやでこの日は結局どこにも行けず、大人しくペンションに向かいました。

ペンションといえば思い出ノート。丸文字で綴られた乙女チックな記録を読んでみようと思いましたが、今時は子供くらいしか利用してないようでした。んでもって、脱サラしたのだろうと思われるオーナーには、お約束のように口髭があったり。夕食時、私の後ろのテーブルの3名の女性のグループの生々しい話につい聞き耳をたてて苦笑い。

「○○課の◇◇さんてば、男と見れば色目つかってニャンニャンしてるのよ」とか

「○○美術館も質が落ちたわね。それにどこに行ってもアベックばっかり」とか。

ニャンニャンとかアベックって言葉は、実に久しぶりに聞きました(笑)。もう、完全に死語やんなぁ。ふとお顔を見ると、なるほど、そうやな。使うよな、ニャンニャン。というようなお年頃のグループでございました。

翌朝からは安曇野の小さな美術館巡りです。ロイヤルコペンハーゲンを展示してある大熊美術館では、古今の名作を見られるんです。んで、そこで記念プレートなんかあったりして、母の日の記念プレートに笑いました。動物の親子をモチーフにしたデザインで統一されているのですが、聖母子像を思わせる熊の親子や犬や猫の親子のイラストは微笑ましいのですが、何故かアザラシの親子のプレートもありました。なまじリアルタイプの画風だっただけに、このへんのセンスがどうにもわかりませんでした。あと、クラシックシリーズのコーナーでは、オランダの古い古い植物図鑑の原画を見ることができ、ちょっと得した気分に。丁寧に描き込まれた細密画ってのは大好きです。昔は草花の名前をたくさん知ってたのですが、知ってたはずの名前を思い出せずに残念でした。

その後、有明美術館に。プロレタリアアーティストの作品が展示されていますが、階上の書架に朝日ジャーナルのバックナンバーがあったり、左翼系の文献が揃えられていたりするのが、いかにもという感じです。あ、サドの著作(悪徳の栄え)がありましたが、渋沢龍彦の翻訳ではないものだったので、パラパラとページを繰るだけでもけっこう新鮮でした。やっぱ、訳者によって文章とか雰囲気とか変わるなぁ。どっちも、それなりに味があると思いますが。

昼食を兼ねて大王わさび農園に。山葵羊羹、山葵マヨネーズ、山葵茶漬け、山葵アイス、山葵ワインと、何から何まで山葵。清流が爽やかで、なかなかに楽しめました。農園内の蕎麦屋の蕎麦は、あんまり蕎麦の風味がしなくて残念。

次に行ったガラス工房。工房自体はそれほど印象に残らなかったのですが、敷地から行ける水源探索路が実に良かったです。以前は山葵田だった場所での山葵の栽培を取りやめ、その後、放置していたら素晴らしい湿原になったという場所です。こういうおおらかさというか、大雑把さは大好きです。板橋を辿っているとトンボやカエルに遭遇。雨蛙をさわったのは久しぶりで、ふと板橋の下を見ると蛇もいて、タガメとかアメンボとか、子供の頃にはお友達だった生き物たちと再会して、懐かしい気持ちになれました。

それから飯沼飛行士記念館へ。飯沼飛行士は昭和12年に東京〜ロンドン間の飛行時間で世界記録を出した、航空界の偉人でもあります。その時まで知りませんでしたが。で、その人の功績を伝える記念館は、彼の生家に隣接した土蔵を改装して作られており、生家の見学もできます。色々と書きたいこともありますが、結局の所、この人は飛行機で飛ぶのが好きなだけの人やってんなぁと。名誉欲とかそんなんでなくて、飛行機が好きで、たまたまパイロットの資質に恵まれ、チャンスに恵まれたのだと本人も自覚している、かなり謙虚な方でありました。当時出版された随筆集の復刻版を購入したので、これから読むんですよね。あ、この方、若き日のジュリー(沢田研二)に似た男前でした。あと、記録を出した純国産飛行機『神風』のプラモデルを購入。『神風』というと特攻隊をイメージしますが、これはそれよりずっと前、元寇の際に吹いた風をイメージしてつけられたものだそうです。

そして、往路と逆のコースを辿り、一路大阪を目指したのですが、帰り着く頃には両手がむくんでました。やっぱ、7時間もぶっ続けで高速道路を走るのは重労働なんでしょう。つーか、同居人の単車(1200cc)と私の愛車(250cc)で一緒に高速を走るのは無理があるというか、巡行速度の上限が違いすぎ(笑)。やっぱ、適当なとこで大型免許取ったほうがいいかなぁ。

あと、安曇野の風景はどこか奈良の飛鳥時の風景に似ているような気がしました。あと、ちょっと離れてるけど春日野のあたりとか。


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