夏祭りの喧噪から離れ、二人はゆっくりと帰り道を辿っていた。
アパートの近く、店じまいを終えようとしていた店で
飛葉はアイスキャンデーを買った。
部屋に戻り、早速アイスキャンデーを食べる飛葉を、
世界は呆れながら眺めていた。
その視線に気付いた飛葉が、世界に声をかける。
「あんたも食う?」
世界は飛葉の右手に手を添え、氷菓を一口かじりとった。
「甘いな……」
「まぁな」
飛葉がアイスキャンデーの最後の一口を世界に差し出す。
世界はそれを口に含むと、飛葉の頤に指をかけて唇を寄せ、
囓り取った甘く冷たい欠片を押しやった。
目を丸くして身体を離した飛葉をからかうように世界が言う。
「このほうが、もっと甘い」
頬を紅潮させた飛葉が世界の首に両手をまわし、
刹那の躊躇の後、そっと呟く。
「もっと甘いほうがいい」
世界が微笑を浮かべながら飛葉に顔を寄せ、唇を重ねた。
冷んやりとした感触を楽しむように、何度も唇をついばむと
唇が離れる瞬間を埋めるように、飛葉が甘く熱い吐息をこぼす。
吐息に含まれた熱が飛葉の身体をなぶり始める。
それに気付いた世界の掌が、
何かを確かめるように飛葉の肌の上を滑り出し、
やがて飛葉は、囁きのような微かな声と共に、畳の上に崩れ落ちた。 |