本当に大丈夫?遺伝子組み換え食品

 96年秋に遺伝子組み換えの国内での利用は、厚生省が食品として安全であるとということで4種7品目の市場への解放を認めた。なお現在申請中なのが4種12品目で、今春にも結論が出される見通しである。

 現在組み換え植物の実用化までには何段階かの安全確認がなされており、法的規制ではないが、科学技術庁や農水省の指針に沿って、実験室、温室、隔離圃場と順に実験を進めて特性や環境影響を調べないと一般の田や畑に植えられない。そのうえで厚生省と農水省が設けた食品、飼料として安全性評価指針を満たす様に指導されている。

 遺伝子組み換え作物は一般の農作物や食品添加物とは扱いを異にする。農作物は残留農薬が規定以下ならぱ安全とされ、食品添加物は、アレルギー性や発癌性などの厳しい(どれだけ厳しいかは疑問が残る)検査を経て、なおかつ消費者の選択の権利を守るために、表示も義務付けされている。しかし、遺伝子組み換え食品の産業利用に当っての安全性の確認は、経済協力開発機構(OECD)の議論を踏まえ、先進国がほぽ共通の体制を整備した。基本とされる概念が「ファミリアリティ」と「実質的同等性」で、前者は「評価するのに十分な知識と経験を持った上での生産」を求め、後者は導入遺伝子の特徴がはっきりして、組み換え植物に安全な食経験があり、主要な成分は同じとみなされる場合、組み換え前後の食品は実質的に同等である」と判断する。
 つまり、人類が遺伝子組み換えの技術を用いて、その植物を十分に理解できている状態である現在、遺伝子を組み換える前と後では食品として他の農作物とは何ら変わりがないということである。このOECDの論に従って日本では遺伝子組み換え食品は安全であるとしているが、この決定はかなりの波紋を呼んでいる。

 日本消費者連盟は、アンケ一卜に「組み換え作物を使う可能性がある」と答えたメーカーなどを対象に、96年11月から商品のポイコット運動を展開中である。主婦連合会なども会員に不安があり、組織的な情報収集や討議を検討している。

 先日、私も遺伝子組み換え食品についてのシンポジウムに参加することができたが、消費者連盟などの消費者団体と企業や行政の間にはかなりの温度差が見られるようだった.

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 遺伝子組み換え食品産業のトップをいくのはアメリカのモンサント社で、アメリカの農業だけでなく、世界の農業ビジネスを牛耳ろうとする勢いである。日本の政府や企葉はかなり遅れをとっており、急進の開発を目指している。
 しかし、この未知のリスクを背負うのは消費者であるとして、消費者団体は何としてでもこの食品の市場解放を阻止しようとしている。消費者や一部の研究者などには,遺伝子組み換え作物の参入を懸念している者もいる。
 まず築一に安全性が未知数であるとされる。先ほど説明したOECDの「実質的同等性」には疑問を抱いている研究者も多く、未知のアレルゲンや毒性を持つ可能性は無視されていて、生態系への配慮も少ないのが気になるところだ。
 そして第二に特定の企業が食料生産を握ることが挙げられる。遺伝子組み換え作物に取り組んでいる企業のほとんどが農薬メーカーなどの化学会社である。特定の除草剤に耐性を持つ作物を作ることによって、ひとつの除草剤で耕地全体を賄うことができ、大幅のコストダウンを実現できる。
 しかも、組み換え作物には知的所有権が認められているため、生産者は所有料を開発メーカーに払わなくてはならない。
 世界の食料戦略においてコストダウンは強い競争カを保ち、知的所有料と独断の除草剤によって開発メーカーはかなりのカをつける。

 この様に不安材料を挙げるといくつもあるが、私たち消費者としては最低限『表示は義務付け』すべきだと考える.これは消費者の「選択の権利」の主張だが、行政側は「実貿的同等性」やカントリーエレペーターによる他品種との混雑を理由に表示は困難であるとしている。そこで有機農法作物のように「遺伝子組み換えじやない食品」などという風な表示方法も考えられているという。
 しかしこのような論争になるのも、近年の日本の食料自給率の低さが問題になる.ここでもまた本当の豊かさとは何かを考えさせられる。
(いかわ ひろや)


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