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その14

anata1.GIF 「ヘの字稲作」で知られる兵庫の篤農家、井原豊さんが、1月3日、亡くなられました。知らせておきたい友人に竃話をかけながら、悲しみが増しました。

 井辣さんのつくるスッキリしたイネが、私は大好きでした。目の前に田んぽが広がり、その後にはお椀を伏せたような小さな山が見える、そんな部屋で、何度も話をききました。
 井原さんのイネ作りは、回を里ねるにつれ、イネの持つ力を信じ手をかけなくなったように思います。「何もしないが人の100倍は観察している」と。
 自分の品種を世に残したい、それが井原さんの夢でした。
 井原さんの意志を払ぎ、品裡登録に向けて動き出した人たちがいます。たくさんのやさしさをいただいた私も、てきる限りのお手伝いをと思っているところです。



『品格なくして地域なし』関川夏央・日下公人・奥本大三郎・森まゆみ・津野海太郎
品文社(1996)281p(2163円)
 「町づくり」プームが起き、あちこちに「文化施設」なるものが建ちました。しかし、それらか文化を生み出すことは、ありませんでした。
 常識人の視線で「町おこし」を眺めてみようと集まった(集められた人も)5人が、「地域文化研究会」をつくり、「品格ある地域」を求めて旅をしました。
 候補地は、サントリー文化財団の担当者に選んでもらい、メンパーが最低ふたり以上で現地を訪ね、見学・取材を垂ねています。
 5人がそれぞれ違った祝点から地域文化を見つづけ発表したレポートは、これからの町づくり」への貴重なヒントを含んでいます。
 中央にたよらず、自然に無理を強制せず、オリジナリティを強く主張している地域、そこにはたくましく生きている「キーパーソン」がいる、そのことがよくわかります。
 メンバーのひとり、森さんは「キーパーソン」にインタビューで迫っていますが、その中で東北に生きる結城登美雄さんの話が心に残ります。
 「世間師」しょけんし、と読むそうですが、「地域をめぐりあるいて、こっちで冷害でダメだというと、次は冷害につよい種を持ってくる、人の役立つことを伝えてあるく人」のこととか。そんな人が、昔はあちこちにいたんですね。同じ地域を何度も何度も訪ねながら、そんなことができたらいいですね。私は、まだ「ある町に感動するもしないも、そこで出会った人しだい」の段階にとどまっていますが。


『アンジユール−ある犬の物語−』ガプリエルバンサン 57P(1340円)
ブックローン出版(1986)
 10年間で28刷にも逮しているペルギー生まれの女性画家の本に出会ったのは、昨年の暮れでした。
 「アンジュール」とは、ある日という意味のフラシス語とか。走る車の中から捨てられた犬の一日を描いた言葉のない本です。突然のら犬になってしまった犬の驚きと悲しみ、そして最後にほっとするこの絵本をぜひ手にとっていただきたいと思います。この1冊ですっかりバンサンファンになってしまった私は次々と彼女の本を買い求めています。

anata2.GIF 今回の絵は、皆さまよくご俘じの「梅」です。10年程前に、古い小さな家を買った時、庭に咲く梅を見て「この家に」と決断した思い出の花です。
 3本あった梅の木は、今は1本になってしまいましたが、たくさんの花を咲かせています。
 それでは、また。
高木俊江


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