Deep Clear Eyes



倒産間近が誰の目にも明らかな小売店舗の壁に貼られた、「商売の夢」という散文詩。
筑■大を受けた友人との明暗が明かされた後、僕に向けられた物凄く乾いた眼光。
小学生の時から、既に満足と金とのトレードオフをしていたと判った同窓会。
新興宗教の道場の空気と実は大して差のなかった帰りの電車内の空気。
「環境の公平な配分」など、誰も望んでいやしなかったという事実。
玩具的なチャチさを持っていた圧制中心の宮殿(ベルサイユ)。
「望むに値する希望」を探し奔走し消えていった彼の消息。
不幸が長過ぎた所為で自らに不幸の呪いをかけた彼女。
眼の綺麗な青年が差し出した、骨肉腫対策の魔方陣。
リストラ隊長だった親父の、最後の自身の切断。
非論理的文章と沢山の願で包まれた健康食品。
カリスマが目前で吐いた、許せない暴言。
ミャンマーの子供達の罪のない笑顔。
イタリア大聖堂の静かな賛美歌。
ホスピスの捨てられた折鶴。
呪われ続くメール爆弾。
睡眠相後退症候群。


人であること。生きていること。
足掻き続ける事を強要されているということ。
ほんとうは、誰しも一刹那にしか勝てないということ。

長い時間の中では、誰もが否が応でも負け続けているということ。


自分の為に。

だいすきな人の為に。

本当なら闘って殺さなければならない外界の他者達の為に。

せめてもの祈りぐらいは?

それすらも傲慢だというなら、せめて「把握」だけは?






back to INDEX
Back