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2009年02月01日(日) 10時19分

ソフトバンクなぜ多い? 不正携帯との戦い産経新聞

 ソフトバンクの携帯電話が犯罪者の標的になっている。ネットでの転売などを目的とした不正契約が後を絶たないうえ、警察当局の調査によると、振り込め詐欺に使用された携帯でもソフトバンクが断トツに多い。業界では「本人確認などで脇が甘い」との声も聞かれる。不正利用の“撲滅”に向け、犯罪者に立ち向かうソフトバンクの取り組みを追った。

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 ■振り込め詐欺の7割

 「振り込めに悪用された携帯電話の7割がソフトバンク製」

 携帯事業参入から2年半余りが経過し、契約者の純増数で初の年間首位がほぼ確定した昨年12月上旬。こんな見出しが全国紙の紙面に踊った。

 報道は、警察当局が昨年1〜6月に起きた振り込め詐欺で使用されたと把握した携帯約2300台を調べたところ、ソフトバンクが約7割を占め、ドコモは約2割、KDDIは1割未満だったとする内容だ。

 昨年6月末時点の同社の市場シェアは18・4%に過ぎない。3倍以上に上る使用率に、年間首位の浮かれ気分は吹っ飛んだ。

 「情報の真偽はともかく、言い訳をしても仕方がない。事実は事実として受け止める」

 営業を陣頭指揮するソフトバンクモバイルの佐久間好明執行役員は、対策に乗り出した。

 ひそかに準備を進めていた秘策が、悪用などが確認された端末の利用を強制的に制限することだ。昨年12月に約款を改定するとともに、全国の販売店でポスターなどによる注意喚起を始めている。

 通信事業者が事実上、端末を使えなくするという強硬手段だけに、契約者とのトラブルも予想されるが、佐久間氏は「慎重に対応するが、早ければ3月ごろから利用を制限する」と、怯まない。

 ■割賦販売、シムカードが原因

 携帯3社の中でも、ソフトバンクが犯罪者のターゲットになっている背景には、同社が平成18年に他社に先駆けて始めた携帯端末の割賦販売がある。

 「新スーパーボーナス」と名付けたこの制度は、携帯電話端末を頭金なしの分割払いで購入できる仕組みで、最長2年の契約が条件。月々の支払いと頭金の一部をソフトバンクが実質的に肩代わりするもので、端末購入時の負担を軽くし、割安感を訴えた。

 従来の携帯の料金制度は通信会社が販売代理店に多額の奨励金を支払い、「0円」や「1円」で端末を販売。割高な通信料金で奨励金を回収する仕組みだった。この制度だと、同じ端末を長く使い続ける利用者は不利になるため、是正が必要と判断、割賦販売に踏み切った。

 さらに月額基本料980円を払えば夜間通話を除いて同社の顧客同士が通話し放題になる「ホワイトプラン」を投入し、実質的な通信料金の大幅な引き下げにも踏み切り、躍進の原動力になった。ソフトバンクの導入以降、総務省も業界に従来制度の見直しを求めたことから、ドコモやKDDIも、その後追随し、同様の料金制度を導入した。

 ところが、誤算も潜んでいた。分割の代金を支払わずに端末とともに雲隠れする契約者が増え始めたのだ。支払いが止まり強制解約する件数が膨れ上がり、19年7〜9月期の平均解約率は1・42%と他社の1・5倍近い水準に達した。

 消えた端末は、ネットオークションなど闇で売買されている。

 それまで携帯端末は、タダ同然だったが、割賦販売方式になったことで、最新モデルなら3〜5万円超もするようになり、安く入手できる“闇売買”の需要が生まれたわけだ。

 ソフトバンクの携帯は、それまで使っていた携帯から電話番号やメールアドレスなどが記録された「SIM(シム)カード」を取り外し、入手した新しい携帯に差し込めば、すぐに使えるようになる。ドコモの携帯も同様だが、KDDIは代理店での手続きが必要だ。

 最初から転売を目的とした不正契約ばかりか、販売店を襲い強奪する事件まで起きている。振り込め詐欺に使われた携帯も、こうした闇ルートで入手されたとみられている。

 ■終わりなき不正との戦い

 「割賦代金の未払いが増えれば貸し倒れ損失が膨らみ、経営に大きな影響が出る。しかも、不正に詐取された携帯が振り込め詐欺などに悪用されれば、社会的責任も問われる」

 危機感を強めたソフトバンクは、19年年9月に佐久間氏を旗振り役とする「不正対策プロジェクト」が立ち上げ、“水際作戦”に乗り出した。

 まず実行したのが、それまで認めていた住民基本台帳による契約の中止だ。強制解約した契約内容を詳しく調べた結果、台帳による契約が多数を占めていたためだ。転居を繰り返すことで複数の台帳を入手し、これを不正に利用するという手口だった。

 不正契約はいったんは沈静に向かったが、犯罪者はすぐに偽造した精巧な運転免許証やパスポートを使うようになった。佐久間氏は「網の目をかいくぐる犯罪者とのいたちごっこ」と唇をかむ。

 昨年3月には、売買ルートを断ち切るため、ネットオークションの運営会社に出品制限を要請、ヤフー、楽天の協力を取り付けた。さらに他社に先駆け、個人信用情報機関のCICを活用し、契約時の与信管理を厳格化するなど、不正対策の仕組みは、徐々にではあるが整いつつある。

 「敵は日々進化している。一網打尽というわけにはいかない。これからは敵に応じて、一本釣りでいく。対策に終わりはない」。佐久間氏は自分に言い聞かせるようにつぶやいた。

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