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2008年12月30日(火) 23時58分

東シナ海ガス田 交渉が停滞 「反日」高まり中国消極化毎日新聞

 日中両政府が6月に合意した東シナ海ガス田の共同開発が、利益配分などを具体化する条約づくりに入れないまま越年する。「関係改善と戦略的互恵関係の象徴」と位置づけられた共同開発だが、交渉の停滞について日本政府は「中国が消極姿勢に転じているため」と指摘。打開の糸口を見いだせない中、外務省幹部は「交渉先送りは両国のためにならない」といら立ちを募らせている。

 麻生太郎首相「政治的合意を実施に移すための協議を早期に行いたい」

 温家宝・中国首相「実務レベルで引き続き意思疎通を続けていきたい」

 福岡県太宰府市で12月13日に開かれた日中首脳会談で、麻生首相はガス田合意の条約化に向けた交渉に入るよう迫ったが、温首相は素っ気なかった。事前の事務レベルの調整では進展がなく、首脳間のやり取りに期待をかけた日本側の思いは肩すかしを食らった。

 中国が03年、日本が境界と主張する「中間線」付近で開発計画に先行着手したことで、ガス田問題は顕在化した。中国は「中間線」より日本側に入る境界線を主張。資源をめぐる利益衝突より、境界線問題が最大の対立点となってきた。

 そうした中で6月合意が実現したのは、北海道洞爺湖サミットを控えた日本、北京五輪を控えた中国の「協調をアピールしたい」という思惑が一致したから。境界線問題は棚上げした合意だったが、日本政府は「事実上、日本が主張する中間線を引いての解決。悪くない内容」(外務省幹部)と受け止めた。

 これに対し、中国では「一方的譲歩」との批判が相次ぎ、反日活動家が北京の日本大使館前でデモ行進。中国政府にとって条約づくりの交渉に入ることは「反日ナショナリズムを喚起させかねない」との警戒があるとみられる。

 また、日中首脳会談に先立つ12月8日には、中国の海洋調査船2隻が尖閣諸島・魚釣島(中国名・釣魚島)付近の日本領海内を航行。日本政府内には「合意に抵抗感の強い中国軍部のけん制ではないか」(外務省幹部)との見方が出ていた。【大谷麻由美】

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