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2008年12月30日(火) 23時28分

【ガザ空爆】レバノン侵攻で低下した「抑止力」回復も狙いか産経新聞

 【カイロ=村上大介】イスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザ地区への大規模空爆作戦は、同軍が遂行した2006年のレバノン侵攻作戦と重ね合わせてとらえられ始めている。その中で、今回の作戦には、ガザ地区を支配するイスラム原理主義組織、ハマスの基盤を徹底的にたたく直接的な目的とは別に、前回の作戦が不首尾に終わって低下した中東地域でのイスラエルの「抑止力」を回復する大目標もあるとの見方が出ている。

 レバノン攻撃は06年夏に、同国イスラム教シーア派組織、ヒズボラ(神の党)がイスラエル軍兵士2人を拉致した事件が引き金となった。イスラエル軍は、ヒズボラの拠点を中心に猛空爆を加えたうえで、地上作戦も展開した。作戦は1カ月余りに及び、レバノン側に1000人を超す死者、イスラエル側にも110人を上回る死者を出した。

 だが、ヒズボラはレバノン最強の軍事組織として生き残り、指導者のナスララ師は「われわれは戦略的、歴史的勝利を成し遂げた」と宣言した。少なくとも政治的にはヒズボラ側の勝利に終わったとの見方が一般的だ。

 イスラエルは、中東地域で圧倒的な軍事力を維持して、他国の軍や武装組織の攻撃を「抑止」することを、安全保障戦略の根幹としている。

 そのイスラエルも、レバノン侵攻作戦が頓挫して以降は、以前ほど恐れられなくなっていたようで、このところ、ハマスからのロケット弾攻撃も相次ぐようになっていた。

 イスラエル軍は今回、レバノン侵攻作戦の失敗に学び、ハマスの陣地や訓練拠点、武器庫などの所在を正確に把握するという周到な準備をしたうえで、電撃的に攻撃を開始している。

 しかし、多数の民間人を巻き込んだ大規模爆撃と犠牲者の数はパレスチナだけでなくアラブ世論にも火をつけ、ハマスと敵対してきたアッバス自治政府議長率いるファタハは「イスラエルの協力者」と映るようになる。イスラエルが穏健派のファタハと和平合意を達成しようとしても、アッバス議長の政治的な威信はさらに低下し、議長が難しい政治的決断を下すことはいっそう困難となるだろう。

 また、イスラエル軍が地上作戦に踏み切ったとしても、ゲリラ戦術にてこずったレバノンの二の舞いになり、結局、「抑止力」の回復という大目標は達成できずに終わる可能性も否定できない。

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