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2008年12月30日(火) 23時19分

伸び悩む「認定NPO」 高いハードル、審査に時間産経新聞

 NPO法人(特定非営利活動法人)の発展を目指した特定非営利活動促進法(NPO法)が平成10年12月に施行されて丸10年。こうしたNPO法人の活動を支援しようと設けられた認定NPO法人制度の利用が伸び悩んでいる。認定されると税制面で優遇されるなどのメリットがあるが、認定要件のハードルが高いことが背景にあるという。国は今春、5回目の認定要件緩和を実施したが、この緩和で新たに認定された法人はわずか1件と、今のところ効果は薄いようだ。

 「認定を得るまでに足かけ3年以上かかりました。活動内容を理解してもらうことから始まり、書類の作成、認定団体としての適正の証明など、とにかく大変な作業で…」

 こう話すのは、京都府内の幼稚園などで環境学習を実施している認定NPO法人「きょうとグリーンファンド」(京都市下京区)の大西啓子事務局長。同法人は今年5月に認定を受けたが、当時スタッフはわずか4人だけで、認定までの作業は困難を極めたという。

 認定NPO法人制度は13年10月にスタートした。内閣府のまとめによると、NPO法人は全国で3万6089法人あるが、そのうち認定NPO法人は0・25%にあたる92法人。また近畿は全国の割合より少なく、5691法人のうち0・14%の8法人しかない。

 伸び悩みの理由について、NPO法人の活動を支援している「シーズ・市民活動を支える会」(東京)の松原明事務局長は「認定要件のハードルが高く、提出書類が煩雑。審査にも時間がかかりすぎる」と指摘する。

 認定を受けるためには、収入に占める寄付金の割合▽同一者からの寄付額制限−などの条件があるほか、「書類作成には平均3カ月以上必要。認定まで平均8カ月、遅いところで2年以上もかかっている」(松原事務局長)など、職員数の少ないNPO法人には負担が大きい現状があるという。

 国はこうした課題を解消するため今年4月の税制改正で、5度目の要件緩和を実施。収入全体に占める寄付金の割合を5分の1とする特例を延長したほか、同一者からの寄付金上限が総寄付額の5%だったのを10%に引き上げるなどした。

 しかし、この緩和によって新たに認定NPO法人となったのは1団体で、松原事務局長は「平均的なNPO法人の寄付金割合は7〜10%で、とても賄いきれない。さらに、要件緩和の副産物として手続きが複雑化した」などと、さらなる緩和を求めている。

 ただ、国税庁は「NPO法人の活動内容を把握するには時間を要するし、初めて認定を受ける法人は書類の不備も散見される」と説明。さらに、NPO法を所管する内閣府市民活動促進課では「今後も緩和は検討するが、緩和しすぎて不正な団体が増加してはいけない」としており、今後、認定NPO法人が順調に増えるかどうかは未知数だ。

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