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2008年12月30日(火) 21時52分

ビッグ効果で助成65億円超 スポーツ界は支援に期待中国新聞

 販売不振で廃止論も噴出したサッカーくじが、最高6億円の高額当せん金を目玉にした「ビッグ」のヒットで息を吹き返している。二十九日に販売が終了した今季のくじの売上総額は約950億円。二〇〇九年度のスポーツ界への助成財源については65億円を確保し、さらに増える見通しだ。スポーツ界にも深刻な不況の波が押し寄せ、影響が懸念される状況だけに、「ビッグ効果」による“支援金”をめぐる期待や思惑が膨らみ始めた。

 ▽販売元は安堵

 くじ販売が始まったのは〇一年。〇八年シーズンの売上額は七月下旬にこれまで最高だった〇一年の600億円余りを上回り、さらに約300億円以上を上乗せした。6年ぶりで本格的な助成金を出すことが可能となったサッカーくじの運営元、日本スポーツ振興センターの石野利和いしの・としかず理事は「やっとくじ本来の役割を果たせる」と安堵あんどの表情だ。

 同センターは今年に入り、190億円の借入金も前倒しで完済。〇九年度から新たに校庭芝生化を助成対象に盛り込むなど、追い風を機に目に見える形で実績を残そうとの意図がうかがえる。

 日本のくじで当せん金が最高額というビッグは、コンピューターが勝ち、分け、負けを選ぶ手軽さもあって、人気が急上昇した。サッカーくじは構想段階から「スポーツ振興資金をギャンブルで捻出ねんしゅつするのか」との批判にさらされ、射幸心をあおらない「知的な予想ゲーム」との看板を掲げたが、今や売り上げの85%以上はビッグなど「非予想系くじ」が占める。存続の瀬戸際で、お題目は引っ込んだ格好だ。

 ライバル「宝くじ」の販売額は、ビッグが登場した〇六年度の1兆938億円から翌年度の1兆442億円と低落傾向にある。みずほ銀行宝くじ部は「販売規模も違い、直接的な影響はない」というが、ビッグの登場で「(宝くじの)話題性が若干薄れているのでは」と認める。

 ▽期待と不安

 〇九年度の助成財源の見込み額は、日本オリンピック委員会(JOC)年間予算にも匹敵し、地域のスポーツ振興や、競技団体の選手発掘事業や国際大会の開催などに活用される。売り上げ低迷から、一時は予算を切り崩して若手の育成事業などを続けてきた競技団体は「ビッグさまさま」(日本ハンドボール協会)「もらえるだけもらいたい」(日本ソフトボール協会)と期待を膨らませている。

 ただ、広くスポーツ振興に助成するという基本方針が足かせとなり、助成金はトップ選手の強化には直接回せない。日本陸連幹部は「予算20億円のうち数%の話なのであまり関心ない」と話す。日本体協の岡崎助一おかざき・じょいち専務理事のように「また売り上げが落ちたら助成金がなくなる、という不安定要素を実感している」と先行きには不安も漏らす関係者もいる。

 ▽サッカー界も思惑

 くじの対象となっているJリーグからも「サッカー界が充実すれば、よりくじも拡大する。多くの配分を求めたい」(鬼武健二おにたけ・けんじチェアマン)との声が上がっている。Jリーグには約4億円の開催支援経費が入っているものの、各クラブは景気低迷で協賛金収入の確保に苦しんでいる。現在検討中の「秋開幕、翌春閉幕」のシーズン移行を実現するためには競技場や練習場の改修も必須だ。

 株式会社の各クラブは現行制度では助成を受けられないが、地域のスポーツ振興の核になっているとの自負もある。さらなる助成事業の拡大や条件緩和を求める声も出てきそうだ。

http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp200812300279.html