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2008年12月30日(火) 20時14分

神戸の被災マンション、再建後初の正月産経新聞

 阪神大震災で全壊して建て替えか補修かを巡る住民の対立が裁判にまで発展し、今秋、約14年ぶりに建て直された「旧六甲グランドパレス高羽」(神戸市灘区)がまもなく、再建後初めての正月を迎える。建て直されてできた「グレイスビュー六甲山手」には震災前の178世帯のうち、約2割の36世帯が再入居した。ようやく“古巣”に戻ったかつての住民らは、特別な思いで新たな年を迎えようとしている。

 「震災前のマンションに引越しました。長い年月がかかりましたが、やっと、終の棲家に戻ることができました」

 坂本憲治さん(66)、典子さん(63)夫婦は、年賀状にこんな一文を入れた。今年11月末に入居し、今は心穏やかな生活を楽しんでいる。

 震災で全壊した「旧六甲グランドパレス高羽」は平成9年、管理組合が建て替えを決議したが、補修を求める住民が裁判を起こし再建が難航。最高裁が15年に決議の有効を認め、18年にようやく再建にこぎ着けた。

 震災後は、娘の家や公団住宅を転々とした。3年後に近くの中古マンションを購入したが、「ここは間借り」との思いから家具も買わなかった。「娘が育ち、嫁いでいった家。強い愛着があった」と典子さん。「絶対に帰る」との夢はかなった。

 だが犠牲も大きかった。震災で倒壊したマンションにはローンが残っていた。購入した中古マンションは買い手がつかず、さらに新しいマンションのために再度35年ローンを組んだ。

 将来の不安はあるが、夫婦とも健康で働けるのが救い、という坂本さん夫妻。「今年は1つの区切りを迎えることができた。来年は新しいスタートを切りたい」と話していた。

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