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2008年12月29日(月) 10時13分

老舗「甘党たむら」が閉店へ中国新聞

 名物「クリームぜんざい」などで60年にわたり、庶民に親しまれたJR広島駅前の「甘党たむら」(広島市南区猿猴橋町)が大みそかの31日、閉店する。戦後の闇市時代から広島の復興を見守ってきた老舗が、また一つ看板を下ろす。

 開店初期からある「クリームぜんざい」は、冷やしたぜんざいをアイスクリーム状にした看板メニュー。冬の定番の二重焼きは、創業時と同じ真ちゅう製の型でぱりっと仕上げた生地と、さっぱりした自家製あんが人気を集めてきた。

 「たむら」は1948年、食糧不足から少しずつ解放され始めた市民の熱気に押されるように生まれた。店主の田村紀根(としね)さん(73)の父義根さんがビルマ(現ミャンマー)から復員し、家族とともに開いた。

 中学生時代から店を手伝い、大学を中退して継いだ紀根さんは今年初め、廃業を決意した。「年をとって味に自信がなくなる前に店をたたもう」

 店舗がある駅前南口Bブロック再開発事業のビル着工が当時は2009年度に予定されていたことも念頭にあった。着工は10年度に延びたが、保健所の5年ごとの営業許可更新も年明けに控え、決意は揺るがなかった。

【写真説明】開店当時と変わらぬ型で二重焼きを作りながら、なじみの客と会話する田村さん(左)

http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn200812290031.html