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2008年12月29日(月) 21時51分

緑のオーナー制度めぐり来春提訴へ 「国はリスク説明が不十分」産経新聞

 国有林育成のために林野庁が国民から出資を募り、契約者の9割以上が元本割れしている「緑のオーナー」制度をめぐり、契約者の一部が「リスクの説明が不十分だった」として、国に損害賠償を求める訴えを来春にも大阪地裁に起こす。現段階で数十人が提訴の意向を決めている。弁護団は「あまりにずさんな欠陥制度。不作為による詐欺ともいえる」と主張している。

 同制度は、国有林にある育成途上のスギやヒノキなどに1口50万円(一部は25万円)を出資してもらい、約15〜40年後に伐採、競売入札で得られた販売収益を契約者と分配する仕組み。昭和59年度に公募を開始、平成10年度までの15年間に延べ約8万6000の個人や団体から計約500億円を集めた。

 対象国有林は全国約4700カ所(計約2万5000ヘクタール)。11年度から順次満期が始まり、19年度までに満期となった615カ所のうち、入札で元本を上回ったのは29カ所だけ。この間の1口あたりの平均受取額は32万5000円だった。

 林野庁によると、国産木材が低価格の輸入材の影響などで価格が低迷。公募開始時に比べスギは5分の1、ヒノキは3分の1程度に落ち込んでいる。区画の契約者全員の賛同があれば、伐採や販売時期の契約延長もできるが、今後価格が大幅に上がる見込みはない。

 価格低迷で契約者からの問い合わせが増えたため、同庁は平成5年から「元本を保証するものではない」と契約書に明示した。しかし、それまでの約9年間はパンフレットなどでリスクの説明はなかったという。

 同庁は19年10月に契約者の損失を補填(ほてん)しない方針を決定。ここまでの木材価格の下落は想定できなかった▽金融商品でないため、契約書にリスク記載の義務はなかった▽「絶対にもうかる」といった不適切な勧誘はなかった−などを理由に挙げている。

 原告側の弁護団長を務める福原哲晃弁護士は、制度創設当時から輸入自由化で国産木材の価格が下落傾向にあったと指摘。「ずさんな制度設計で国は責任を免れない」と主張している。

 現在も原告を募集。問い合わせは弁護団専用((電)06・6365・9099、年末年始以外の平日のみ)。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081229-00000573-san-soci