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2008年12月28日(日) 11時01分

裁判員制度:Q&A 封筒が届いた!どうすれば? /北海道毎日新聞

 ◇スタートまで半年を切った
 市民が刑事裁判に参加する「裁判員制度」は、09年5月のスタートまで半年を切った。既に選挙人名簿を基にした「裁判員候補者名簿」が作られ、道内でも1万300人に書類が入った封筒が届いた。ところが、最高裁が設置したコールセンターや各地裁には「どうすればいいの」という質問が殺到。そのほかの市民にとっては、制度の実態すらつかめないのが現状のようだ。道内の実情を織り交ぜながら、市民の「疑問」についてQ&Aでまとめた。【芳賀竜也】
 ◇そもそも何?
 Q そもそも裁判員って何?
 A 市民の中からくじで選ばれた「1回限りの裁判官」です。法廷での席は裁判官を挟んだ両脇。検察官や弁護士、被告の話を聞くほか、被告に直接質問することができます。法廷と別室の「評議室」でどんな判決がいいのか話し合い、その時の意見は裁判官と同等に扱われます。裁判員制度が適用されるのは殺人などの重大事件に限られます。
 Q 今までの裁判とどう違うの?
 A 今までは裁判官が1人か3人でやってましたが、今後は裁判官3人と裁判員6人が基本となります。また、裁判員の負担にならないように日を空けずに連続審理し、多くは3日間で終わると想定されています。
 Q なぜ市民が裁判に参加するの?
 A 市民感覚も裁判に持ち込もうと議論され、導入が決まりました。市民参加の歴史が古いイギリスでは「陪審裁判は自由の生存を示すともしび」ということわざもあるそうで、市民の権利になっています。
 ◇もう決定なの?
 Q 最高裁から書類が入った封筒が来ました。もう決定?
 A まだ決まったわけではありません。封筒が届いたのは、各地裁が選挙人名簿からくじで選んだ「候補者名簿登載者」。道内では450人に1人の割合で届いています。実際に裁判員に選ばれるのは、道内では4747人に1人と試算されているので、封筒を受け取った人の約1割が裁判員になる計算です。
 Q 裁判所に行かなくちゃいけないの?
 A 現段階では行く必要はありません。「辞退したい理由」などを「調査票」に書き返送するだけ。70歳以上など、明らかに辞退できる理由があれば、その後、裁判所から呼び出されることはありません。裁判ごとに選ばれる「裁判員候補者」の通知を受け取って初めて、裁判所に行く必要があります。
 Q 誰にも話してはいけないって言われたけど。
 A 裁判員や裁判員候補者になったことを公にしてはいけないと法律で定められています。匿名で報道機関のインタビューに応じたり、上司や家族に話すのは問題ないとされています。裁判員になって、裁判の秘密などを他人に漏らすのも禁じられています。
 ◇困ってます!
 Q 仕事があるので無理。欠席したらどうなるの?
 A 裁判所から呼び出しを受けたのに、正当な理由なく指定日時に行かなかった場合には、10万円以下の過料に処せられる場合があります。裁判員を無断欠席した場合も同様。一方、裁判員を理由として休暇を取った労働者に解雇などの不利益な扱いをすることも禁じられます。
 Q 日当や交通費は出るの?
 A 日当は1日1万円以内で、交通費も支給されます。裁判員候補者として呼び出され、結果的に裁判員に選ばれなくても1日8000円以内の日当が支払われます。
 Q 裁判所まで行くのは遠いです。
 A 道内で裁判員裁判を実施するのは札幌、旭川、函館、釧路の4地裁のみ。面積が広い北海道では切実な問題です。例えば、帯広市民は釧路地裁帯広支部が近くても、釧路まで行かなくてはなりません。宗谷管内礼文町民は約200キロ離れた旭川へ行くことになり、必要なら宿泊費も出ます。
 ◇辞退できるのは?
 法律で裁判員の辞退が認められるのは▽70歳以上▽議会中の地方議員▽学生、生徒▽5年以内に裁判員だった人など。辞退可能な理由としては「自ら処理しなければ著しい損害が生じる恐れがある重要な用務がある」「介護や養育しなければ日常生活に支障がある同居の親族がいる」などを列挙しており、裁判官が審査のうえ判断する。
 札幌地裁は今年6月の模擬裁判で、このような「微妙なケース」を審査した。26人の裁判員候補者中、辞退を希望したのは10人。それぞれの理由を検討した結果、7人の辞退が認められた=表参照。仕事上の理由で辞退したいとの候補者が多かったが「社長として」「自分しかできない仕事の締め切り」「責任者」など、他人に代わってもらえない理由なら認められる余地がありそうだ。
 検察官や法学部教授、自衛官などは裁判員になることが禁じられている。
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 《裁判員辞退理由の例とその可否》
 辞退理由                             可否
 (1)社長として市の表彰を受ける。受賞者を代表し謝辞も述べる    ○
 (2)持病の発作があり自信がない。病気で話が聞き取りにくい     ○
 (3)仕事を休むと同僚に迷惑を掛ける。試用期間中なので有給もない  ○
 (4)大口取引先からの受注が重なり休むと締め切りに間に合わない   ○
 (5)商談の約束をずらせない。ノルマや係長としての立場もある    ○
 (6)同居の義父、義母の世話があり定時に食事を作る必要がある    ○
 (7)学校検診の責任者になっており代わりがいない          ○
 (8)職場で連休を取った前例がなく休むと人間関係が悪化する     ×
 (9)病気で長時間の緊張に耐えられない。こまめな給水も必要     ×
(10)履歴書に書く資格試験を受けるため               ×

12月28日朝刊

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081228-00000016-mailo-hok