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2008年12月28日(日) 08時42分

「先物主導で日経平均が動く」ってどういうこと?(1)サーチナ

 前回までで、「日経平均」の「先物」である「日経225先物」と「日経225mini」のしくみについて説明しました。今回からは、日経平均の先物を切り口に、マーケットの様々な話題に触れていきたいと思います。

 最初は、「先物主導で日経平均が動く」という決まり文句に焦点を当ててみました。日経平均が大きく動いた日のマーケット・コメントに頻繁に登場する文句ですが、株の投資家にとってみれば、先物に振り回されるのは迷惑な話です。しかし、これは本当の話なのでしょうか。また、何を意味するのでしょうか。

 この「先物主導」の話に入る前に、まずは「日経平均」と「先物」の関係を知っておく必要があります。

 「日経平均」は、「日経225」とも呼ばれる、東証一部上場企業から選ばれた「225社」の株価を平均した株価指数です。

 日経平均の「先物」とは、「満期日に、市場で現在取引されている値段で、日経平均を売買する約束」です。先物は市場で自由に買ったり売ったりできますが、満期日まで持ち越した場合は、「SQ値」を使って損益を計算します。大証で取引されている「日経225先物(ラージ)」と「日経225mini(ミニ)」が代表的な日経平均の先物です(概要は前回・前々回の記事で復習して下さい)。

 さて、ラージとミニは、いずれも独立した市場であり、それぞれの市場での売買によって値段が決まります。ところが、値段をよく見てみると、いずれも「日経平均」と同じような水準で、動きも連動しているのです。

 先物が日経平均と連動する理由を解明するにあたっては、満期日に使う「SQ値」の算出方法が鍵となります。早速、「SQ値」がどのように決まるのかを見ていきましょう。

 「SQ値」は、通常の日経平均とは算出方法が異なる「特殊な」日経平均の値です。

 通常の日経平均の値は、その時々の現物株225銘柄の値段(特別気配の時は特別気配値)を使って算出され、1分ごとに変化していくのに対し、SQ値は、満期日当日に、たった「一つ」の値しか決まりません。SQ値は、日経平均を構成する225銘柄の「始値」から算出されるのです。朝から特別気配の銘柄があれば、その銘柄が寄り付いて始値が決まるのを待つのです。

 SQ値は、日経平均と同じ「現物株」の値段(始値)から決まるということを覚えておいて下さい。

 ここで、今月の満期日(12月12日)を振り返ってみましょう。満期日の前日である12月11日の後場、日経平均の値は8700円前後になっていました。もし、11日に「先物だけ」が暴騰し、その頃10000円になったとしたら、「確実に」儲ける方法があるのですが、気が付きましたか?

 翌日の満期日に何が起こるかを考えてみると、答えがわかります。
翌日、満期日を迎えた先物はSQ値で決済されますが、SQ値は「現物株」の始値によって決まるので、「先物」が「日経平均」と合致するのです。

 ということは、10000円という高い値段がついている「先物を売り」、8700円という安い値段の「日経平均を買い」、翌日に「SQ値という同じ値段で手仕舞ってしまえば」利益になるのです。

 「日経平均」は実際には買うことはできませんが、225銘柄を全て買えば、日経平均を買ったのと同じことになります。買った225銘柄は、満期日の寄付き前に成行売り注文を出しておけば、それぞれ始値で売れるので、SQ値で売ったことと同じです。

 こうすれば、SQ値がいくらになったとしても、利益になります。10000円と8700円の差額が、利益になるのです。

 なぜこのような結果になったかというと、割高なものを売り、割安なものを買ったからです。このような取引を、「裁定取引」と呼びます。

 先物が割高か割安かは、先物の「理論価格」によって判断されます。参考までに、先物の理論価格は下記の式で示されます。

 先物の理論価格=日経平均+金利分−配当分

 理論価格の詳しい説明は別の機会に譲りますので、興味がある人はインターネットなどで調べてみて下さい。

 先ほどの例では、先物が10000円になってしまうという極端な例を出しましたが、そんなおいしいチャンスがあれば、皆が競って裁定取引をしようとするはずです。

 現実では、先物価格が理論価格から少しでも乖離すると、すかさず裁定業者が入ってきます。裁定業者は、高価なシステムを使って取引しているので、人間のスピードでは到底かないっこありません(個人投資家が裁定取引で利益を出すのは難しそうです)。

 というわけで、日経平均が動けば、先物も追いかけてきます。先物が動けば、日経平均も追いかけてきます。このように、日経平均と先物には裁定取引が働くので、両社の値動きが連動するのです。

 次回はいよいよ、本題の「先物主導」の説明に入っていきます。(執筆者:塙麻紀子・シンプレクス・インスティテュート)

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