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2008年12月28日(日) 07時26分

「フィブリン糊」感染の原告、国との和解難航…薬害肝炎訴訟読売新聞

 薬害C型肝炎訴訟で、心臓手術などで縫合用接着剤として使用された「フィブリン糊(のり)」で感染したとされる原告らの和解交渉が難航している。1月の被害者救済法施行後、血液製剤「フィブリノゲン」による感染で国と和解し、給付金を支給された原告は約600人に上るが、「糊」の原告は因果関係が不明との理由で交渉が進まず、薬害肝炎全国弁護団によると、和解できた原告は4人。約160人が和解できないままで、政府の掲げる「全員一律救済」から取り残されている。

 神奈川県内の男性(27)は、5歳の時に心臓手術を受けた直後に急性肝炎を発症し、現在、慢性肝炎の状態となっている。長い間、感染源は分からないままだったが、昨年末、薬害肝炎問題が報道で大きく取り上げられたことで手術を受けた病院に問い合わせ、「糊」の使用が分かった。

 今年4月に提訴したが、和解交渉は一向に進まない。医師からはインターフェロン治療を勧められているが、生活に余裕がなく、月数万円が必要となる治療に踏み切れないでいる。

 男性は、「糊のおかげで命が助かったかも知れず、病院に恨みはない。ただ、糊以外に感染原因が見当たらない以上、国には早く救済してもらいたい」と話す。

 フィブリン糊は、フィブリノゲンに他の薬剤を調合して作られ、手術時などに縫合用接着剤として使われた。1980年代に約7万9000人に使用されたとされるが、止血剤として静脈注射で使われたフィブリノゲンとは違い、「糊」は傷口に塗る方法で使われており、国は「直接血管に注射しているわけではないので、感染率が不明」として、因果関係が明白な人を除き和解を留保している。

 厚生労働省は「来年3月をめどに科学的なデータを集め、和解に対する一定の目安を設けたい。因果関係が解明されれば、速やかに和解手続きに入りたい」としている。弁護団は微量の「糊」を使ったケースでも感染を確認しており、今月26日、訴訟が続いている東京、大阪、名古屋、福岡、仙台の5地裁に、「糊の危険は明らかで、一刻も早く和解を進めるべきだ」との要望書を提出した。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20081227-OYT1T00795.htm