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2008年12月28日(日) 22時53分

幻の高級魚クエを“真水”で速成養殖産経新聞

 岡山理科大学専門学校(岡山市)のアクアリウム学科研究チームが、真水に海水魚が生息できる環境機能を備えた「好適環境水」を使って“幻の高級魚”とされるクエの養殖実験を始めた。海面養殖だと出荷サイズの体長40センチになるまで3年かかるが、海水より成長が早く魚病が発生しにくい性質をもつ同水を利用して、1年半で出荷サイズに育てようという全国初の試みで、その結果に水産業界などが関心を寄せている。

 研究チームは、山村での海水魚養殖の普及を目的に、平成18年にカリウムやナトリウムなどの成分を河川水や地下水に加えるだけで、海水魚を飼育できる好適環境水を開発。これまでにヒラメやトラフグなどの高級魚を海水に比べ約2倍の早さで成魚にまで育てる淡水化養殖に成功した。

 クエ養殖は、水の浄化や水質調整ができる閉鎖循環式水槽(1トン)を活用。今年10月、香川県の魚の種苗生産業者からクエの稚魚を譲り受け、好適環境水が入った水槽(水温25度)に50匹を放った。現在体長は約15センチで、生存率は100%。また同じ稚魚を使って、高知県で海面養殖を実施しており、成長率や発病率などを比較。来年3月に双方の途中データなどを照らし合わせるという。

 さらに研究チームでは来年、これまで淡水化養殖に成功した高級魚を大量育成する実用化研究に移行。12月にはキャンパス近くの山中に複数の数百トンレベルの巨大水槽を設け、商業化に向けた「森育ちの魚」の安定供給を目指す。

 山本俊政学科長は「山村を漁村に変身させる試み。山での高級魚養殖の商業化が実現すれば山村の振興に役立ち、将来の食糧危機を防ぐことにもつながる」と話す。好適環境水を利用して、さまざまな魚の養殖に挑戦する研究チーム。夢は「宇宙ステーション内での魚養殖への応用」という。

 【好適環境水】 人工海水を多用していた岡山理科大学専門学校・アクアリウム学科研究チームが開発。海水中の約60種類の成分を分析した結果、魚の成長に不可欠な成分はカリウムやナトリウムなどの電解質で、海水でなくても必須成分さえあれば真水でも生息できることを突き止めた。また海水魚は、海水中の塩分をエラから出して体の脱水症状を防ぐために行う浸透圧(塩分濃度)調整に全体の約30%のエネルギーを消費しているとされるが、真水では調整が不要でエネルギー消費が少なくなる分、成長が早くなる。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081228-00000566-san-soci